16話 新たな仲間
「な、何を言っているんだスズ、自分の立場を分かっているのか!?」
スズランの僕たちの騎士団に入るというまさかの発言に戸惑うシノノメ。
しかし、スズランはそんな兄の動揺など気にも止めていなかった。
「十分分かっておるつもりじゃぁ。じゃから、もう父上の許可も得た。父上はフウライの2人を連れていくなら良いと言ってくれたのじゃ」
「何っ!? 父上の許可済み!?」
「くぅ~! 将軍様ナイス過ぎる!」
と、ガッツポーズをするフウガ。
「じゃからフィル。妾たちも連れてっておくれ、良いじゃろ?」
そう言うスズランにライカも「お願い……」と続く。
「わぁ、もちろんだよ! 一緒に頑張ろうね!」
僕としては願ったり叶ったりな状況で、騎士団結成には十分すぎる人数が一気に参加をしてくれるんだ。
「おぉ、フィル、恩に着るぞ! うむ、レベッカもグレンも一緒に頑張るのじゃぁ!」
「はい! 皆さんよろしくお願いします~!」
「よろしくね……」
「よろしく!」
「よろしくね、すずちゃ、ふうちゃ、らいちゃ!」
「マジかよ……まさかスズランがついてくる事になるなんて……」
そう言って凹むグレン。そんな事言って、本当は嬉しいくせに。
「ぐれちゃ、ちゃんと約束は守らなくちゃダメだよ」
グレンの腰辺りをポンポンと叩く。すると、スズランがまたしても爆弾発言をする。
「その件じゃが……もう妾はグレンと結婚出来んでも良い」
「えっ!?」
と、みんなが一斉に驚く。当事者のグレンが一番驚いていた。
「妾はグレンにもらってもらえんでも、20年後にフィルと結婚するから良いのじゃぁ!」
「えぇぇ~っ!?」
と、一同。今日は驚いてばっかりだ。って言うかその話初耳なんですけど!?
「な、なんか解放されたはずなのに……振られた気持ちになるの、ムカつくぜ……」
グレンはどよーんとしょげていた。
大丈夫だよグレン。スズランはグレンにもらってもらえなくてもって言ってるから、もらってあげれば済む話なんだよ。
「それでのう、フィルよ」
「なぁに?」
「父上とサクラがそなたに挨拶と礼がしたいとの事じゃ。このまま本丸御殿の大広間まで来てたもれ」
「あっ、サクラ姫様起きたんだ?」
「うむ。一緒に温泉にも入った故に、レベッカとはもう顔合わせも済んでおる」
「サクラ……良かった……」
と、シノノメ。
「うん、本当に良かったよ。じゃぁ早速将軍様とサクラ姫様に会いに行こう」
⸺⸺本丸御殿、大広間⸺⸺
畳の敷き詰められた大広間の奥には、銀の髭を生やした見るからに荘厳な雰囲気の威厳がダダ漏れしている殿様があぐらをかいて待っていた。その隣にはサクラがちょこんと正座をしている。
「父上~、サクラ~! フィルたちを連れてきたぞ~!」
スズランは全く態度を変えることなくいつもの元気な調子でそう言って大広間へと入っていく。そんな高いテンションで話しかけていい相手とはとても思えないけど……。
「まぁっ、フィル様とは本当にそんなにも幼いお方でしたのね」
サクラが口元に手を当ててそう言う。その隣で将軍様がものすごいオーラを放っていて、ゴゴゴゴゴ……と音が聞こえてきそうな勢いだ。
しかしお決まりと言うか、将軍様が口を開いた途端、辺りの雰囲気は和やかなムードに一変するのである。
「いやぁ、フィル殿が愛い過ぎてしばらく声が出せんくなってしもうたわい! ほれフィル殿よ、苦しゅうない、近うよれ」
自分のおでこをペチンと叩く将軍様。っていうか“愛い過ぎて”なんて言葉初めて聞いたよ……。
一瞬で僕の脳内の“威厳ある殿様”のイメージがボロボロと崩れ去り、脳内には“(スズラン+フウガ)÷2×おじさん=将軍様”という方程式が浮かび上がった。
チラッとシノノメを見ると「父上は昔からああいう御方なのだ。何も気にする必要はない。いつも通りのフィル殿で接してくれ」と言ってくれたので、僕はうんと頷くと、将軍様の前までととと、と歩いていき、慣れない正座をちょこんとしてみた。




