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13話 火の神と巫女

「サクラって!?」

 と、僕。

(わらわ)の妹で、あの“火の神カグツチ”と心を通じ合わせる事の出来る“巫女”なのじゃ! 今はカグツチのおる神殿へ毎月の祈りに行っていたはずなんじゃが……カグツチがあんなに暴れておると言う事は、心を通わせておるサクラに何かあったと言う事じゃ!」

 そう言って走り出そうとするスズランの腕を、グレンがガシッと掴んだ。

「カグツチに物理は効かねぇだろ! 冷静になりやがれ!」

「しかし、サクラが……!」


 スズランがそう言いかけると、彼女の両サイドへ忍者の様な若い男女がサッと現れた。顔がそっくりでお兄さんの方は前髪長めの緑のサラサラ短髪。お姉さんの方はオレンジ色の短めの髪を後ろで束ねている。

「姫様、我らが行って参ります」

 と、お兄さん。

「フウガ、ライカ……! そうか、そなたらなら属性技が使える。そなたらだけでは行かせぬ。共に参ろうぞ」

「「はっ!」」

「フィル、れべちゃ、俺らも行くぞ!」

「うん!」

「は、はい!」


 スズランたちを追いかけて、再びアマツ山道へと向かった。


⸺⸺アマツ山道⸺⸺


「神殿はこっちじゃ!」

 途中で道を外れて山頂の方へ向かうとしばらくしてまた別の道が現れ、道なりに登っていく。この神殿への道を知っている人じゃないと簡単には辿り着けないようになっているんだ。


「スズ!」

 後ろからまた別の鬼のお兄さんが僕たちに追いつく。この人銀髪だし、顔もスズランに似てる!

「兄者! 兄者も来てくれたのじゃな!」

 やっぱりスズランのお兄さんなんだ。ってことは……王子様……若様って感じかな。

「シノノメかよ……」

 と、グレンは嫌そうに言う。シノノメって言うんだ、若様。

「貴様っ、グレン! 一体どの面下げて戻って来た!?」

 シノノメはブチ切れだ。そりゃ、自分の妹を振って逃げ出した相手だしね……。

「今は、んなこたぁどーでもいいだろ! サクラが危ないんだろ!?」

「くっ、そうだ。後から水の妖術部隊が駆け付ける。それまでカグツチを神殿付近に留めるため、私が先行して来たのだ」


 留めて……その後はどうするんだろう? もうあちこちの木に火が移り始めている。その部隊の到着を待って間に合うのだろうか。そのカグツチを止めて、同時に山の火事も消火出来るのだろうか。

 一先ず僕はみんなの最後尾まで下がり、こっそり水の初級魔法を発動して目に見える火を消火していった。


⸺⸺火の神の神殿⸺⸺


 やがて目的地に辿り着くが、神殿を含め辺り一面が火の海だった。

 あの都から見た化物は真っ黒なモヤをまとっており、まるで魔物の様な気配を感じた。そのすぐ横には銀のショートヘアの女の子がこれまた黒いモヤに包まれており、目は赤黒く光り、苦しそうに肩で息をしている。

「サクラ、サクラ! 一体どうしてしまったのじゃ!」

 と、スズラン。この人がサクラ姫様だね。 


「火の神様、失礼致す!」

 フウガは腰に着けていた2本の短刀を抜き、素早く振って真空刃をカグツチへと食らわせる。なるほど、あの刃からは風属性の力を感じる。

「火の神様、お覚悟を」

 ライカも静かにそう言うと弓を構えてバチバチと電気をまとった矢を射抜く。こっちは雷属性だ。

『グアアアアッ!』

 どちらの攻撃も暴走しているカグツチには通用しなかったようで、太い腕で薙ぎ払われてしまった。2人の攻撃は決して弱くはない。カグツチの魔力が異常なのだ。流石神様と呼ばれるだけの事はある。


「っていうか、すずちゃ教えて! カグツチに攻撃してもサクラ姫様は大丈夫なの!?」

「大丈夫じゃ。ダメージの共有はなく、カグツチも神(ゆえ)に死ぬことはない。なんとか動きを止めようとフウガとライカが頑張ってくれておるが……。そのすきにサクラへと近付き、サクラを正気に戻せばカグツチも静まるかもしれぬ」


 いや、この気配はサクラがおかしいんじゃない。

「すずちゃ、逆だ。おかしいのはカグツチの方だ。カグツチを殴って正気に戻せば、サクラ姫様も解放されると僕は思うんだ。僕が聞きたかったのは、全力でカグツチを叩いても良いのかって事」

「そうだ! フィルにかかれば……つっても、相手は土地神様だぞ……! いくらお前でも……!」

 と、グレン。


 いや、この化身は、土地神様と呼ばれているだけで、実際はこの土地を護る精霊だ。神じゃない。

「大丈夫、僕に任せて。急がないと火事も広がる一方だ。カグツチを叩いてもサクラ姫様に影響がないのであれば……少し本気を出そうかな」

「君は、一体……」

 と、シノノメ。自己紹介は後で、だね。

「フィル……! グレン、この子に任せて良いのじゃな!?」

「あぁ。フィルを信じよう」

「フウガ、ライカ、下がるのじゃ!」

「「はっ!」」

 フウガとライカが下がったのを確認すると、僕は木の杖を構えた。


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