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第4章 【午前10:30 他部署との交流】

世界設定の話、もう少し続きます。

ーーゲーム多世界管理機構の本部


俺が勤めているこの"次元"は、ダイソン球の形をしている。真ん中に圧縮したメインAIの本体があり、銀河のように無数にあるゲームの世界に囲まれる。それらを卵の殻のように包み込んでいるのが、俺たちの本部だ。


今の俺は、その本部の一つの要でもある《ログ分析課》へ向かっている。今回のバグ発生を調べるために”アイツ”に聞くのが一番早い。


…正直なところ、俺はアイツがちょっと苦手だよな。仕事は申し分ないけど、彼の”悪い癖”にどう接したらいいか実に困る。


「あらまぁ〜珍しいじゃない!ツナギくんがうちに来るなんて!あたし嬉しいわよぉ〜」


来た。漏れそうなため息をグッと堪えた。


「… ノリティ。今度はなんのキャラなんだ?」


「やだ〜〜 あたし、いつだってこんな感じなのよぉ〜」


と言いながら体をくねくねさせる。呆れながらもその器用さにちょっとだけ感心してしまう


ノリティとは、長い付き合いだ。俺と同じく、現実化前の彼も”プログラム”だった。俺たちプログラムはゲームのキャラクターと違って、そもそもストーリーやシナリオがついていない。


俺たちは本質的に、感情も性格の形成も、何もかも薄い。


ノリティの仕事は、ログとデータを分析して未来を予測することだ。物語の「構造」と「感情の意味」を一番理解している。


それゆえに、彼は毎回”キャラ”を変えて試している。彼曰くいろんな感情を模倣して“学んでいる”そうだ。例えば、先週は”古武士キャラ”、その前は"熱血教師"だった。


今回はたぶん、オネエ系キャラだと思う。どうでもいいけど。俺には、合わせる気力などない。いつも通り無表情を貫く。


「で、堅物のツ・ナ・ギ・くん〜 今日はどんな用事?」


…やっぱりコイツ、単なる遊びで演じてるのではないか?


「...救助中に発生したバグについて聞きたいことがあるんだ。」


「え〜? メールにあったやつ? メールで聞けばいいのに、わざわざここまで来たの? そんなせっかちなキャラじゃないでしょ?」


「...いいから。ログを確認してくれ。」


「もぉ〜わかったわかった」


ノリティが手を差すと、彼の前に半透明な操作パネルが出てきた。いきなり仕事モードになった彼の表情が消えて、ものすごいスピードで流れているデータの冷たい光が彼の顔をチカチカと照らす。データに向かっているノリティは、どこか人間離れしている。


「...バグ報告#15628

提出者:ゲームオーバー救助員 ツナギ

救助対象の記憶処理が何らかの原因で失敗した。


救助ログ 確認開始


救助経緯 確認

救助場所 確認

異常なし


マスター・キーの使用が検出されました 確認


使用権限 異常なし

使用許容 2/100 許容範囲以内

影響度合 0.000000012 ごく少量

異常なし



記憶処理 確認

異常なし


救助関連のログ 確認終了


バグ報告#15628 にてログデータを添付 完了」


すらすらと読み上げた彼がようやく止まった。やっぱり俺の予想通り、救助は完璧だった。でもそうなると、不具合の原因が益々わからなくなった。


ノリティもそう思っているのか、彼の仕事モードを保ったまま続いた。


「ツナギ、データは異常なしといっているけど、現場にいた君は思い当たるとこないか?」


「いや、俺もさっぱりだ。救助対象も普通だった。」


ノリティは考えているように黙った。


考えても何も出ない気がする…ここで俺が気になること聞こう。


「...ね、ノリティ。彼女の、勇者マヨーナの世界の崩壊確率ってどのぐらいになってる?」


「? そこが気になるの? ちょっと待って……

……

……

??!!!」


パネルを見て驚愕した彼に緊張が走った。


「なんだ?!まさか崩壊寸前とか?」


「あ、違うの違うの」

息を整えつつ、手をひらひらさせて否定した。

「その真逆だ!バグ発生直後に、世界の崩壊率が下がった!世界独立の進捗が異常なほど進んだ!」


彼の演技抜きの興奮した笑顔を久々に見た俺は、呆然となった。


「ツナギ!よく聞いて!こんな数字!僕でも!みたことない!文字通りの”奇跡”なんだよ!!」

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