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最後通告 天女の調べ  作者: 皐月
7章 東国の災禍

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60話 君はなぜ?

 連なる山で作られた国境を超えて野宿や近くの集落を転々と休みを挟みながら一日かけて飛騨国の守り人に都まで案内された。

 そして夕方頃宮殿に到着すると私たちは離れの建物で待つように言われた。

 ナビィさんとツムグさんがパンパンに疲れた足を休めるためその場に座ったけど私はその気になれない。


 ここまで来る間禍の神は私たちを遠すぎず近すぎずの距離で追いかけていた。

 もし攻撃を仕掛けてきたらなんとか逃げようとはしていたけど奴はこちらを見るだけで何もしてこなかった。


 ——かなり不気味で危険だ。


 飛騨の王を討つにしても民は気づいていない。だからどうしても気づかせないと。


 私がそうこう考えているとナビィさんは顔だけを私に向けた。


 「やはり。ここは逃げませんか? 少し状況が悪いです」


 「——え、どういうこと?」


 ナビィさんの言葉にツムグさんは困惑するのも無理もない。

 だけどこの状況は不味すぎる。


 私はツムグさんを見る。


 「ツムグさん。簡単にいうと禍の神の手先のアハバと禍の神がここにいる。きっとよからぬことを引き起こすつもりかもしれないんです」


 「——なるほど。禍を起こせば禍の力になるんだ。あ、もしや一国を生贄にしようと?」


 ツムグさんの推察にナビィさんはちょっと違った答えだったのか首を傾げる。


 「えーと、禍は分かりやすく言うと死を呼び起こすものです——」


 ナビィさんがこれから少しだけ禍の神のことを教えてくれた。

 禍の神は夫婦の神のうち妻が現世に死の神がいないと死霊で溢れてしまうと思い夫に黄泉の穢れで生み出した神を送った。

 その神は母の教えを守り、禍を完全に司り世に平穏をもたらした。

 しかし、禍が無くなった途端各地の神々と人々は何もしなくな理、楽しそうに過ごした。


 禍の神は現世に禍が漏れ出ないように自らを天高くにある宮殿に封じたのに——。


 ナビィさんは話し終えると呼吸を整えた。


 「禍の神は死の神そのもの。なので死者の魂を得れば得るほど力を取り戻していきます。太平の剣はそうならないように自らの剣の力としていくのです。それが無理ならいずれ復活してしまうのかもしれませんか封じるかです」


 「——では、手先を先に倒しに回ったのはこの剣で封じるためですか?」


 「そうです。封印は良いですがアハバは伊達にも元は巫女。解くなんて容易いので倒してしまった方が楽です」


 ナビィさんは拳をふるわす。

 確かにアハバは力が未知数だ。まともに戦ったことがないから分からない。


 「とりあえず、この機会に討ちましょう。けど、何か手は……」


 「——それは」


 ナビィさんがそう口にした時、外から不気味な見た目の案内人の男が入って来た。

 案内人はまるで死人のように肌が青白く、目が虚。

 そして私たちを見るとその場に平伏する。


 「お待たせしました。大広間にて両王がお待ちです」


 「——とりあえず私だけが行きます。もし何かあれば」


 「——」


 二人は私の言葉に頷く。もし三人とも同時に消されたらどうしようもない——。


 ————。

 

 それから小屋から出て案内人の後ろを一人歩く。

 案内はかなり不気味でまるで生きているという感じが一切しない。

 言葉にするならまるで死人が歩いているようなフラフラとした感じ。

 それから私は大広間に案内され中に進むも王はその場にいない。

 次の瞬間後ろで何かがつぶれる音が聞こえた。


 「——嘘、でしょ?」


 振り返ると案内人だったかもしれない肉かいがドス黒い水溜まりを作って無惨に落ちている。

 私は鼻に入ってくる腐敗臭を袖で塞ぎ奥に進むと急に動けなくなった。


 頭に中に聞き覚えのある女性の笑い声が聞こえた。


 「——こ、今度は!? いや……アハバ、いるんでしょ? もういるのは分かっている」


 しかし、私の呼びかけに答えたのは男の声だった。


 「——なるほど。ゼロの妹と噂を聞いたがその程度か」


 低い男の声が聞こえた瞬間、上座に暗い靄が外から集まって来たかと思えばそれはやがて一つの塊になった後、人の形に変わってゆく。

 そしてガタイの良い男の姿になった瞬間靄が消え私の目の前に現れたのは床に毛先が広がるほどの長い神を持ち、怨念がこもった引き攣った顔と高貴な出自なのだろうか綺麗な模様が描かれた着物を着ていた。


 彼が禍の神……確信持って言える。


 大男はゆっくりと立ち上がるっと腰に携えていた鞘から剣を引き抜き私に近づく。


 「我が名は禍呼命マガヒコノミコト。この世に禍をもたらす神だ」


 この声は心の奥底から悍ましくなる感じがする。

 関わってはいけない。そう体が私に伝えている感触が全身を走る。


 マガヒコノミコトは私の首に剣先を突きつけるが笑みを浮かべず、ただ私を見下ろす。


 「目は似ているな。だが、彼奴のように怒りの眼差しではない。怯えた子鹿と同じ顔をしておる」


 「こ、子鹿……誰が小鹿だ!」


 私は声を荒げ暴れようとするけど体が動かない。

 

 「子供だな。本当に子供だ。殺す価値もない」


 「——!?」


 『殺すべきです。彼女はこれでも源氏の勇者です』


 その時、あたりにアハバの冷徹な声が鳴り響いた。

 しかし、マガヒコノミコトはアハバの言葉に対して鼻で笑う。


 「お前は我が力の源になる死の霊魂を集めてくれた。だが、その霊魂を我は好かん。死の神とは無闇に人を殺した魂を源にしない。世の理にそってこの世を全うしたものの魂を好む」


 『——禍を引き起こして数多の人を殺す神が何をいうのですか』


 アハバの怒りがこもった声にマガヒコノミコトは何も言わず。ただ剣を私から話して鞘に戻した。


 「禍は世の理。人は死がなければ天人のように今のままでいることに固執する。そうなれば国は栄えず外からの嵐で滅びるのみ。そう思わないか、ゼロの妹よ。お前もこうして何かを失う恐怖で己の心を前に進めることができたのではないか?」


 マガヒコノミコトの言葉に私は足が恐怖で震える。

 彼の言っていることが何も間違っていないというのがわかってしまう。

 だけど彼は兄を殺した。許すことなんてできない。


 「——世の理。そうでしょうね。神も人も理の一つ。お前が月の民を死で汚さなければ私は兄を失った悲しみでいずれ心を壊して自ら首を掻き切っただろう! けど、お前のせいで悲しまなくて良い多くの人が悲しんだ!」


 「——」


 マガヒコノミコトが片手を上げた瞬間私は前に倒れ床に顔を思いっきりぶつけ顔に生暖かい熱の味がする水の感触が顔中に広がる。

 私は顔を抑えてゆっくり立ち上がり顔を拭うと袖が真っ赤に染まる。


 その時、再びアハバの声があたりに鳴り響く。


 『禍の神よ。お早く。今私がこの近くの神官たちにバレないようしておりますが、時期にバレるのも時間の問題です』


 「——我とて人は無闇に殺したくはない。しかし、生きないといけない。その理由を見つけさせる定めもまた我にあるのだ。だからゼロの妹よ。飛騨より立ち去るといい」



 『禍の神よ!』


 辺りにアハバの怒声が響き渡る。

 私は鞘から剣を引き抜く。


 「今、お前を討たねばならない。兄を殺されたものの気持ち、わかるはずないだろう!」


 「——そうか。そうだな。今ならお前でも我を討ち取れるかもしれん。しかしな」


 マガヒコノミコトは右手を広げるとあたりから突如として黒いモヤが現れるとすぐに集まり、矛の形となって現れた。

 マガヒコノミコトは矛を掴むと先端を私に向ける。


 「お前たちが死に物狂いに作った天地を分ける結界。それはこの矛を一振りするだけで切り裂ける。それをしない理由を分からないのであればお前は我に勝てないだろうな」


 「——御託を並べて!」


 私は咄嗟に構え切りかかるが受け流される。

 そして私の一瞬の隙を見てマガヒコノミコトが矛を振るったのを見て飛んで避ける——が、マガヒコノミコトは私の着物の帯を掴んだ次の瞬間一瞬だけ視界が歪むと意識を失った。


 ——。


 「がはぅ!」


 すぐに目を開けるとあたりはボヤけている。全身が痛い。

 息が苦しい。


 ゆっくり顔を上げるとマガヒコノミコトは矛の先を私の額にくっつけた。

 顔はぼんやりとして見えない。だけど、見下している感じがするのだけは分かる。


 「な、あ?」


 「やはり弱い。その動きは神でなければ通用したかも知れぬが、我には効かぬぞ」


 「おえぇ……」


 腹の中のものをが全て吐き出る。

 口が血の味で充満している。

 私はグラグラする頭痛を我慢して再び剣を取って立ち上がる。


 「ま、負けられない。ここで倒さないと!」


 「なぜ、戦うんだ。お前では勝てぬのだぞ?」


 マガヒコノミコトは哀れみの目を向けてくる。


 「私が戦わないとみんなが死ぬんだ!」


 「なぜ、分からぬのだ!」


 私の攻撃にマガヒコノミコト一瞬怯むもすぐに立て直して攻撃を受け流す。

 激しい金属音だけが大広間に鳴り響く中、アハバは再び怒声を上げる。


 『もしや禍の神よ……貴様今ここで勇者を鍛え上げているのではないか?』


 アハバの言葉に一瞬だけ禍の神を止まるが、次の瞬間私の盾を殴り打ち砕く。


 私は目を閉じて木の破片から目を守ろうとするとマガヒコノミコトは私の右腕を掴むと顔を耳に近づけると私にしか聞こえない小さい声を出す。


 「ゼロの妹よ。今から我のいうことを聞け。禍そもものは荒魂、神自身は和魂。どれも祓えるが消すことはできない。できることは封じることのみ」


 「な、何を言って!」


 私は暴れる殴る蹴るを繰り返すが。マガヒコノミコトの体はびくともしない。それどころか続けて話した。


 「我の望みは我が禍を取り込み荒ぶる神となった時に封じられること。しかし、荒ぶる神となった我のうちにある和魂の力を溢れさせれるのは月の姫しかおらぬ」


 「——禍の神が、なぜ禍に取り込まれるんだ……!」


 「本来の禍の神はお前たちでいう禍そのもの。神自身である和魂は依代だ。お前たちが生まれる遥か昔のまつろわぬ者がその依代の正体」


 「……は?」


 「だからお前はここから逃げろ。そして我の和魂を目覚めさせる手段を探してくれ。その手段は一つ、日向の土笛だ。この笛があれば再び我が目覚め、禍そもものである荒魂は穏やかになる。その隙に封印するのだ」


 「な、は?」


 『禍の神よ! あの時私に言ったことは嘘だったのか!?』


 「時間だ。とりあえず逃げる事のみを考えろ」


 その時、私は激しい頭の揺れと共に意識を失った。


  

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