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最後通告 天女の調べ  作者: 皐月
7章 東国の災禍

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53話 カグヤの綻び(後編)

カグヤの予言の言葉に従い、チホオオロは村人たちを連れて狛村から避難することにしたが、村の外ではすでに天人たちが待ち伏せをしていた。

そんな危機一髪の中、サガノオが現れマカと共に旅をしていたはずのチトセが現れて村に逃げるように声を出した。

 私が振り向いた先には古びた甲冑を身に包んだ人の姿をした亡霊が見えた。

 その亡霊はどこか懐かしい感じを思わせる。

 それはまるでマカさんのようでマカさんじゃない。そんな感じがひしひしと感じる。


 しかし、私は彼をほんの少しだけ見た後、カグヤさんの手を握ってイナメさんや村の人たちと共に狛村へと逃げた。


 ————。


 逃げている道中、何人かはその場で倒れ、後ろから逃げてきた人に踏まれたりし、そのまま動かなくなった者もいた。

 そんな凄惨な状況でようやく村に戻ってこれたと思えば時間はすでに夕刻。村人たちを見れば村を出た時よりも人数が減っている。

 門を潜ればみんなは額から汗を流し、肩で息をして、大人たちは我が子や老人たちの心配をし、子供のなかで一番年長の青年は子供たちがが触れていないかを数えてイナメさんに報告している。


 私は汗を拭うとカグヤささんの元に行く。


 カグヤさんはその場で俯きながら自身の両腕を爪を立てて掴んでいた。

 そして何も言わずにガタガタガタガタ体を震わせている。


 「わ、私の……私のせいで」


 「……あ」


 あたりを見渡すとみんなカグヤさんを見ていた。それもなんとも言えない顔で、ただ黙りながら。

 どうしよう、今ここでみんなさんを納得させるような一言を言わないと。だけど、なんて声をかければ。


 そんな時、子供達の中でも一番大きい青年がカグヤの元にくると優しく肩に手を乗せる。


 「カグヤ? 大丈夫か? みんな! 子供達は大丈夫!」


 カグヤさんが青年の声に動揺している間に大人たちは安堵の息を漏らす。そして近くの人の安否などを確認し始めた。


 「何人やられた?」


 「天人め、見境なく襲いやがって。夜にしか現れないんじゃないのか!」


 「なんか最近不吉なんだ。よからぬことがあるかも知れん」


 何人かが愚痴をこぼす声が聞こえたけど誰もカグヤさんのことを話していない。

 すると一人のガタイの良い男がカグヤさんに近づくとまるで父親かのように笑みを浮かべると肩を叩いた。


 「大丈夫だ。お前は悪くないよ。むしろ待ち伏せしていた天人が卑怯なんだ! か弱い女の子を集団で取り囲んでよ。そうだろ!」


 男の声を聞いた人々はただ頷き「そうだ、カグヤは悪くない」と言う反応を見せてくれた。

 そんな時、席ほどの青年が私に向かってお辞儀をした。


 「えっと、初めましてですよね。俺、ヤトノスケって言うんです。以後よろしくお願いします。その、カグヤのそばにいてくれてありがとうございます。こいつ、寂しがり屋なんで」


 ヤトノスケと名乗った青年がぎこちなく早口でそう言い残すと早歩きでこの場から去っていった。いや、去っていったと言うより子供たちを家に避難させにいったの方が正しいか。


 カグヤさんはヤトノスケが離れたのを見て顔を上げると私に近づく。


 「なんで、みんな怒らないの? 私が……私が悪いのに」


 誰にも聞こえない声で小さく呟いた。


 それから一旦各自家に戻り、私とカグヤさん。それからイナメさんたちは徳田神社に集まって再度話し合った。

 とっくに夕刻に入り、夜になろうとしている。

 このまま外に逃げようとしても埒が空かないだろう。


 私たちは囲炉裏の周りに座り、俯いているカグヤさんを置いてカタベさんが口を開いた。


 「イナメよ。あれは確実にサガノオだ。見覚えあるよ」


 「……あの亡霊がか。私は初めて見たが誠に剣技を使いこなしていると見える。なぁ、タキモトよ」


 イナメさんの言葉にタキモトさんは頷く。


 「えぇ、あれは某の剣技より上です。それに、少なくとも今この村にいる兵士全員で挑んでも敗れるでしょうな」


 タキモトさんの言葉にここにいる全員は押し黙る。あのサガノオの感じから宗介やオトシロもいとも容易く負けてしまうのが分かるのが悔しい。だけど……あれを見ると少しだけ思ってしまう。


 ——彼ほどの剣技を身に付けたとしても禍の神に負けてしまう可能性がある。


 ——マカは彼ほどの剣技を身に付けていない。


 この二つだけでももしかしたらこの世界は禍の神の手によって滅ぼされるのではと。


 そんなことを考えていると。頭の中にチトセの声が響き渡った。


 『暗く落ち込むことは考えてはダメ。とにかく今やるべきことをして』


 「チトセ……っ!」


 少なくともここにいる全員にチトセが声をかけたのかみんながあたりを見渡す。


 『カグヤは古の姫君、カグヤヒメ。そして天宮輝比売アマミヤノテルヒメとも呼ばれていた。彼女を天人に攫われたら本当に全てが終わる。だから今すぐに狛の祠に避難させて。あそこには彼らは絶対に入れない』


 この中でカグヤさんについて知らなかったカタベさんとタキモトさんはイナメさんを見る。

 「古の姫君?」と口にした。

 イナメさんは「後で全て話す」と口にするとその場から立ち上がり。カグヤに駆け寄った。


 「ほら、カグヤちゃん。逃げるよ」


 「——嫌だ。天人の元に私が行けばみんなはもう殺されない」


 「——けどな」


 「もう私はここには居られない。普通のカグヤとして暮らしたかった。だけどもう……」


 カグヤはまるで最初のマカさんのようにウジウジし始めた。イナメさんが手を掴もうとしても何度も振り解く。

 そして涙を流すと大きな声で叫んだ。


 「タキモトさんは私が居なければ片腕を失わずに済んだ! そしてみんなの大切な人も、失わずに済んだ……私は早く死ぬべきな——」


 「この大うつけ!」


 今まで聞いていたカタベさんはイナメさんを押しのけるとカグヤさんに勢いよく平手打ちした。 

 イナメさんはあまりの出来事に棒線としていたがハッと我に返るとカタベさんの手を掴む。


 「カタベ! 流石にやりすぎだ」


 「やりすぎなものか。サガノオは武人気質だったそうだ。クヨクヨしてばっかの人は尻を引っ叩いていたと聞く!」


 「なら尻を叩け! 年頃の女子の頬を叩く奴があるか!」


 「あ、あの二人とも落ち着いてください! タキモトさんもじっとしていないで!」


 イナメさんの言葉に気づけば私の体は動き、タキモトさんが二人を諌めている間に私はカグヤさんの赤く腫れた頬を触る。

 カグヤさんは若干涙を浮かべつつも、どこか嬉しそうな顔をしていた。


 「カグヤさん?」


 私の呼びかけにカグヤさんは顔を上げると私を見る。


 「サガノオは……彼はここまではしなかったけど怒りはしたと思う。だけど……」


 カグヤさんは再び俯いて何も言わなくなった。

 後ろでは良い大人が子供みたいなやり取りでワイワイ揉めているけど、少なくとも六百年は生きている彼女の方がもっと子供だ。

 

 ——マカさんのこと、子供みたいだなと思ってましたけどあの人の方がもっと大人ですね。


 「マカさんはきっと許さないでしょうね。そしてそんなマカさんを悲しませたサガノオももっと許さないと思いますけど」


 「——っ」


 カグヤさんは私の言葉に何か思ったのかしばらく口をパクパクしと動かし、私の胸に顔を埋めると「うん、そうだった」とだけ口にした。


 ————。


 それから私はタキモトさんと共にカグヤさんを森の奥深くにあるという狛の祠という場所に連れていった。

 タキモトさんが話すにはマカさんの旅の全ての始まりの場所だという。

 

 「——ここが」


 私の視界の先に広がった光景はどこか寂しさを感じさせる、とうの昔に朽ち果て、苔がむした石造りの社。

 その奥を覗くようにしてみると何も刺さっていない台座がある。


 「チホオオロ様。こっちじゃない」


 「あ」


 つい見惚れてしまった。

 私はカグヤさんに引っ張られるようにして祠の場所まで連れて行かれた。


 どうやら祠はこの社の少し外れにあったようで、地面にぽっかりと穴が空いており近くに石碑が引きずられた跡がある。

 カグヤさんは穴の底を見下ろすとタキモトさんがカグヤさんを制止させた。


 「——何で?」


 「ダメだ。妖怪が住み着いてしまっている」


 「そんな……」


 私空を見上げて月を見る。

 とっくに空高く登っている月はどこか不気味に笑みを浮かべているようにも見える。

 その時、私たちの目の前に赤いタコのような妖怪——。

 

 するとカグヤがその妖怪を見て「チトセ……」と口にした。

 なるほど、あれがチトセ。初対面だから顔と名前が一致できなかった。

  

 タキモトさんは一瞬身構えつつもチトセと分かった瞬間に肩の力を抜いた。


 「——確かチトセと言ったか」


 「うん。ちょっと久しぶり。タキモトさん。それとカグヤちゃんと……狼ちゃん」


 「——チホオオロ様だ」


 「あ、うん。知った上で口にしたんだよ。一度とは言え我が子同然の子に少しおイタをしたからね!」


 ——ちょっと性格が悪い神様みたいだ。けど、チトセが我が子同然と思っている子に酷いことをした記憶はない。

 もしかしたらどこかで私怨を買ってしまったのかも知れない。


 チトセは私を気に止めず続けて話し始める。


 「最悪……ここでも天人にはバレないはずだよ。ここは逆に清らかすぎて禍の神に毒されたやつなんてこないさ」


 「——そうか、すなわち普通の天人は来るのだな」


 タキモトさんの言葉と同時に辺りの林が一斉に踊る音を鳴らす。

 私があたりを見渡すと至る所から光が放たれ、その中から仮面を身につけた白い着物を見に包む男女が私たちを囲うようにして現れるとこちらに近づいてきた。


 「——斬った方がいいのか?」


 タキモトさんが剣を引き抜くとあたりを警戒する。しかし、それに反してチトセは首を横に振るとタキモトさんの剣に触手を触れた。


 「斬らないでいいよ。今のカグヤなら対話ができる」


 「——」


 確かにチトセが話すように天人達には殺意がない。私の村、天河村を襲撃した天人とはどこか違う。


 やがて天人たちは足を止めると、その中で一際背が高い男のような見た目をした天人が私たちに近づくとゆっくりお辞儀をした。


 「チトセ。久方ぶりなり。世を経ての再会。喜ばしい」


 「……あぁ、君か。兄の方はマカたちを尾行しているのは知っていたけど弟まで地上に来ているなんて」


 チトセの知人だったのか、チトセの声色からは敵意がない。けど、少なくともタキモトさんは不満げな感じだ。


 「チトセよ。この者らは信用に値するのか?」


 「うん。彼らは味方。天人には天人を持って制したほうが楽なんだ」


 チトセがまるで太鼓判を押したかのように口にすると天人が再び頭を下げた。


 「我が名はイザナシシ。月神様の神命を受けてカグヤ様とそのお月の方々を死守するように言われました。これまでの非礼、お詫び申し上げます」


 イザナシシはアタベとは違い、落ち着いた物腰で話す。

 私としては彼を許すべきなのだろうか?


 彼らのせいで私の村は焼かれ人々は死んだ。


 私は震える右手を非出し手でしっかり握りながら彼に近づく。


 「私の村はあなた方に焼かれ、多くの人々が死にました。私は族長としてあなた方は許せません」


 「——まぁ、そうなるよね」とチトセは口に漏らす。けど、彼なりに天人の助力が必要と判断しているのは分かる。だけど、族長としては彼らを簡単に許すわけには行かない。

 もし、私が彼らを許す時があればそれは天河の民たちが彼らに背中を向けて寝れるぐらい信用し始めた時だ。


 イザナシシもそのことを理解していたのか、再びお辞儀をする。


 「アタベの愚行は、天人の分断を生み出しました。私たちはこのまま黙っていてもいいのかと。そしてアタベに反発する者たちで動くこととなり今に至ります」


 「——アタベの愚行ですか。でも、私たちには敵の天人と味方の天人の違いが分かりません」


 「——問題ありません。違いは今分かります」


 イザナシシはそう言うと月に向けて手を伸ばした。

 その先には雲に乗った大勢の天人の軍勢がこちらに向かって降りてきているのが見える。

 カグヤさんはそれを見ると私の着物の袖を掴むとイザナシシを睨む。


 「命令です。彼らを討ちなさい。彼らは敵でしょう?」


 カグヤさんがそう言うとイザナシシはゆっくり頷くと、腰にかけていた剣を引き抜くと私たちに背を向ける。

 そしてイザナシシの動きに応えるように周りにいた天人たちは祠を守るように囲うと背中にかけていた弓を手に持つと空に向けて構え始める。


 チトセは彼らの動きを見ると私たちに視線を移す。


 「僕たちは祠の中に避難した方がいい。タキモトさん。あの中にいる妖怪たちは片腕だけでいけそう? 無理なら手伝うけど」


 「——いけん事はないが、大型のやつの気配もある」


 「おし、なら任せてよ。僕が先に入るから続いて!」


 私たちはチトセの言葉に続いて祠の奥へと進んでいった。


 ————。

 

 祠の中は真っ暗なものかと思っていたけどそれほどでも暗くない。

 祠の岩壁や地面がぼんやりと青白い光を出しているおかげでまるで月明かりに照らされた平原のようになんとなく地形が分かる。

 そのまま奥に進む道のりで蜘蛛やイモリビト、トカゲの妖怪が跋扈していたが蜘蛛やトカゲはタキモトさんが斬り、イモリビトはチトセが何やらコソコソ話して見逃して貰ったりした。


 そしてようやく最深部に到達するとそこはかなり広い場所で、中央には女の剣士の石像が鎮座していた。


 チトセは「ここまで来ればもう安心だよ」と声に出した。

 カグヤさんはチトセの言葉に半信半疑だったのか首を横にふる。


 「だめ、何人かの天人がどさくさに紛れて入ってきている」


 「——え?」


 カグヤさんの言葉に振り返ると大広間の入り口には数人の天人が剣を片手に携えてこちらに殺気を向けていた。

 風貌は絹の綺麗な着物に身を包んだ美しい感じなのに、その無機質な殺気のせいで一層悍ましさを感じさせる。


 「皆の者、下がれ……!」


 タキモトさんは剣を天人に向けると私たちの前に立つ。

 私は少し体を震わせているカグヤさんを抱きしめる。

 そしてついに天人とタキモトさんとの戦いが始まった。


 天人は数人でタキモトさんを囲い、同時に刺しにいったものの瀧本さんは咄嗟に飛び上がって斬撃をかわすと手に持っていた剣を一人の天神の脳天に突き刺し、そのまま頭を踏み潰して殺す。


 二人の天人は一瞬だけあまりの出来事に困惑したのか動かないでいると再び剣を握ったタキモトさんによってあっけなく切り殺された。

 片腕だけで天人を殺す辺り両腕がある状態で宗介と戦った際、あの宗介でも勝てないだろうと思った。


 瀧本さんは剣を鞘に戻すとカグヤさんを見る。


 「もう天人はいないか?」


 「——っ! う、うん。いない」


 「そうか。なら良かった」


 タキモトさんは安堵の息を漏らす。

 そしてチトセは地上を見上げると「あぁ、天人はイザナシシに全員やられたみたいだね」と口にした。

 カグヤは自身の着物の裾をギュッと掴むと大きく息を吸った。


 「あ、あの。私はこれからどうすればいいの? 私がいる限り、この村は狙われる。ずっとこの祠の中にいないといけないの?」


 「チ、チトセ……さん。流石に何か対策は——」


 チトセの答えは残酷で首を横に振った。


 「祠は僕がいた場所を使えばいい。そうだね、禍の神を封じるまで君はじっとしていた方がいいよ。禍の神は君の力を一番恐れているから一足先に君を殺しにいくだろう。けど同時に、禍の神を止める力を持っているのは君。だからこそ相手にバレない場所にマカが来るまで待っていて欲しい」


 「——」


 カグヤさんは何も言わない。だけど、先ほどまでの悲しんでいる顔ではなく、どこか決意を込めた表情だった。

 カグヤさんは首にかけていた勾玉を外すと私に渡す。


 「チホオオロ様。マカをお願い。私、マカが来るまで待ってる」


 そして次にタキモトさんを見て、最後にチトセを見た。


 「また、私は待つけど。今回はそんなに長くはないでしょ?」


 「——うん。もう何百年も待つ必要はないさ」


 今日、一人の少女が大切な人が五体満足で戻って来るまで待つ。そんな彼女からマカさんの助けをお願いされた。

 なら、私が出来ることをやるしかない。

 私はカグヤさんに近づくと力一杯抱きしめた。


 ——————。

 ——。


 私、源マカは桑名クナの町を出発してしばらく不死山に向かって歩き続け、ようやく夜遅くに麓の村に到着すると宿に泊まった。

 共に旅をしていたチトセは突如狛村に向かい飛んでいってしまった。


 そのため、その代わりとしてツムグさんが先導してくれた。彼女は寝床に入った瞬間ばてたのかすぐに眠ってしまった。

 私とナビィさんはそれに呆れてつい笑う。


 「——ナビィさんは寝ないんですか?」


 「えぇ、この麓の集落は懐かしいのでしばらく風景をまた見たいんです」


 ナビィさんは懐かしそうに縁側からあたりを見渡す。


 「ゼロと私が、なんで旅をしていたのか教えましたっけ?」


 「——禍の神を倒すためとしか」


 私の言葉にナビィさんはゆっくり体ごと振り返ると私の隣に座り、肩に頭を乗せてきた。


 「……そうですね、簡単に話すと長い年月待ち続けた少女を助けるための旅です。天宮輝比売アマミヤノテルヒメと言うお姫様を」


 「——テルヒメ」


 「あの人はゼロが死んだ後、ものすごく泣いていたのを今でも覚えています。その後は知りませんが、きっと孤独に苦しんだと思います。彼女はゼロに心の拠り所になって欲しかったので尚更でしょう」


 「——そうだったんですね。もしかすれば、兄さんが消える前に兄さんに声をか気ていたのはその人かもしれませんね」


 「えぇ……きっと」


 ナビィさんは私の頬を撫でるように触ると唇に指先を当てる。


 「私、一つ懸念していることがあるのです。もしカグヤさんが——カグヤヒメがテルヒメの生まれ変わりだった場合のことを。彼女は自分本位でゼロを失わせたマカさんへの償いで自己犠牲に走るんじゃないかと言う仮説」


 「——」


 私はナビィさんの手を払うと床に押し倒した。

 ナビィさんは何故か頬を赤く染めて私から目を逸らす。

 私はゆっくり息を吐くようにナビィさんの言葉を否定した。


 「なら、自己犠牲しなくてもいいぐらい強くなります。大切な兄さんを奪った分、私の妹になってもらわないと割が合わないので」


 私の言葉にナビィさんは笑みを浮かべると「ふふっ、本当にあの人みたいですね」と嬉しそうに口にした。

 もしナビィさんの懸念通りもしカグヤが自己犠牲に走ろうと言うものなら平手打ちを一発お見舞いしないと。

 兄さんも私が悪いことしたらそれぐらいしていたから。


裏話:ナビィとマカ

ナビィはマカと出会った当初からずっとゼロに似ていることを気にしており、吉備でマカが男装した際はゼロと瓜二つのあまり涙を流しそうになったが必死に堪えていたらしい。

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