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決勝前夜

アルフィスは寮の自室にいた。

ベッドの上で、うずくまり胸を押さえる。

胸の凄まじい痛みに耐えていた。


明日は対抗戦の決勝。

この状況が続けば明日は戦えない。

アルフィスはこの痛みが無くなってほしいと願った。


そして、痛みが無くなったと同時にアルフィスは眠りに落ちる。


この日、昔の猫アルとの会話を夢に見た。



______________________



二年前

港町べルート


アルフィスはハートル家の屋敷の裏の海岸沿いにいた。

アルフィスの嫌なことを忘れられるベストスポットだ。


「だいたいできるようになってきたな!」


「そうだね。複合魔法は完璧だと思うよ」


暑い日差しの中、襟付き半袖と短パンのアルフィスと黒猫アルが二人で歩きながら話をしている。

周りから見たら異様な光景だったが、近くには釣りをしているおっちゃんくらいなので二人は気にしては無い。


「けど、複合魔法と下級魔法強化のダブルはヤバいな。見えるものがゆっくりに見えて、なかなか楽しいが苦しすぎる。すぐ解除しないと心臓が破裂しそうだぜ」


「ファイアボディ重ね掛けの複合魔法だけでもワープ魔法に匹敵する程のスピードだからね。それをさらに倍のスピードにするから、もしかしたら使いすぎると死ぬかもね」


サラッと猫アルは怖いこと言うが、アルフィスは驚かなかった。

それは使った自分自身がよくわかる。

恐らく"テンペスト"の状態でいれるのは三秒から五秒が限界だろうとアルフィスは考えていた。

そして確実に自分の命の時間を削っている。


「しかしお前、さらにこの上も考えてあるなんて俺を殺す気か」


「最後の組み合わせは人間相手に使ったら相手消し飛んじゃうかもね。でもいつかそれを使う時がくるかもしれないよ」


猫アルが考えた魔法とスキルの組み合わせにアルフィスは名前をつけていた。

だが唯一、最後の組み合わせには名前が無かった。

それはその組み合わせを二人はまだ経験していなかったからだった。


「まぁ大丈夫だろ。あとは気合と根性でなんとかなるさ」


「そんな目に見えないものに頼るなんて、僕からしたらどうかしてると思うよ」


アルフィスの発言に猫アルが呆れる。

だが、複合魔法と前世で培った体術の組み合わせは思いの外ベストマッチしており、もしかしたら火の王まで辿り着けるのではないかと猫アルは思っていた。


「でも、もし万が一、最後の組み合わせを使うとするなら、その体だと生涯で二回か三回が限界だろうと思う。それ以上だと命の保障はできない。考えて使ってくれ」


「へーい」


アルフィスのやる気の無い返事に猫アルはさらに呆れる。

この時アルフィス自身、この"最後の組み合わせ"は生涯で一度も使うことは無いだろうと思っていた。

 


_____________________



中庭



アインは中庭の端にあるベンチに座って星空を眺めていた。

雲一つない満天の星が輝いている。


「なんか全部ここから始まった気がするな」


最初、勇気を出してアゲハ・クローバルにバディを申し込んだあの日。

そしてマーシャと出会って決闘してバディを組んでここまできた。


まさか決勝の相手がそのアゲハと、マーシャとの決闘を決意させた魔法使いアルフィス・ハートルだなんて。


「なにかの運命なのか?」


この出会いは必然なのではないかと、なにかにこじつけたくなる。

そうでもしないと辻褄が合わなくなるような不思議な感覚だった。


そしてアインはとある噂を思い出していた。

それはアルフィスの母親のことだ。

アルフィスは自分の母親を救うために優勝を望んでいると。

水の国の最北端にある医療施設を目指していることも噂で聞いていた。


「医療都市ダイナ・ロアか……」


そう言って目を閉じた。

アインはもし自分と同じ境遇なら手助けしたいとも思っていた。

だがあそこに行くほどの病気となれば一つしかない。


「もしかしたら俺の勝利には何の意味もない。でもここまできたら意地なんだ」


それだけ言ってアインは立ち上がる。

そして静かに寮の自室へ戻った。

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