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告白


アイン・スペルシアは今までにない緊張感に晒されていた。

正直、ここまで緊張したのは幼少の頃、大規模な社交パーティーで、水の魔法を披露した時以来だった。


トッドは約束通り、明日のアゲハ・クローバルとの面談を取り次いできてしまったのだ。


アインは夜、寮の自室のベッドで頭を抱えて横たわっていた。


「どどどど、どうしようー。なんでこうなってしまったんだ……」


もはや混乱して何がなんだかわかっていないアイン。

今まで一度たりとも自分から女性に声を掛けた事はない。


「と、とにかく、しっかりセリフ考えていかないと……」


アインはあれこれ考えて、シミュレーションを繰り返した。

そのシミュレートは数百回を超えて、納得がいく答えが出ないまま日が昇ってしまった。



次の日の中庭



アインは約束の時間の三十分前に着いていた。

隣にはトッドとそのバディのメル・カルデアもいた。

中庭の人がまばらなところを待ち合わせ場所にしていたため、あまり人の通行はなかった。

それにバディ申し込みは、大体中庭でおこなわれるため、日常のことで、生徒達の関心は薄かった。


「トッド、めっちゃ緊張してきたんだけど、どうしたらいい?」


アインの足はカタカタと小刻みに震えていた。

それを見たトッドとメルは笑顔で励ます。


「アイン君なら大丈夫よー。なにせ魔法学校で一番の成績って聖騎士学校の生徒も知ってるし」


「そうだぞ!お前は優等生なんだから大丈夫さ!」


その励ましがアインにとってはとても嬉しかった。

持つべきものは友達だと実感していた。


「そ、そうだね、当たって砕けろってことで!」


「砕けちゃダメだけどね」


メルがニコニコしながらアインの背中を叩く。

眼鏡がズレるが、アインはさっと眼鏡を上げる。

アインはもう肚が決まっていた。


「お、アゲハ嬢が来たようだ、こっちは戻るから、しっかりな!」


そう言うと、トッドとメルはアインに手を振りそそくさとその場からいなくなった。

二人がいなくなって急にまた緊張してきたアインの手汗は凄かった。


「何か御用でしょうか?」


アゲハ・クローバルがアインの前に立つ。

その姿はとても美しく可憐だった。

表情はツンとしていて、少し呆れた表情ではあった。

しかし、いつも人の顔色を見るアインも、この時ばかりはそんな余裕はなかった。


「わ、私の名前はアイン・スペルシアと申します。急なお呼び出し申し訳ありません」


「アゲハ・クローバルです。で、御用件は?」


アインは緊張感からアゲハをまともに見れず、声もところどころ裏返っていた。

しかし、やる時はやらねばと勇気を出して自分の気持ちを伝えた。


「アゲハさん、まだバディを組まれていないとお聞きしました。是非私とバディを組んでいただけないでしょうか?」


堂々と貴族っぽく言えた!声も裏返ってない!と思った瞬間だった。


「申し訳ないですが、お断りします」


即答。

そう言うとアゲハはそのままアインの横を通り過ぎて歩いて行ってしまった。


アインはショックのあまり何がなんだかわからず、ふらふらと中庭の端にある二人掛けのベンチまで行って力なく座り込む。


文字通り当たって心が砕けてしまったのだ。

アインはこの後の授業も全く集中できず、次の日から学校も三日ほど休んだ。



______________________



魔法学校校内



アインが三日ぶりに学校に登校すると、魔法学校内に驚くべき噂が広がっていた。

それはあのアゲハ・クローバルが底辺魔力の下級貴族とバディを組んだというものだった。


朝、教室へ赴いたアインは席に着くと同時に、トッドにことの真相を聞こうと席に着くなり話しかける。


「な、なにかの間違いじゃないのかな?」


「それが、その下級貴族とアゲハ嬢が決闘してな。下級貴族が勝っちまったんだよ」


「え?嘘だろ……?」


にわかには信じ難い話だ。

まだ下級貴族がアゲハ・クローバルとバディを組むって方が可能性があるほどだ。

魔法使いが聖騎士に勝つなんて有り得ない話だった。


「嘘じゃないさ、しかも下級の補助魔法だけで勝っちまったんだよ。観戦したやつらは"補助魔法の悪魔"とか呼んでるよ」


「ど、どうやって補助魔法だけで聖騎士に勝てるんだ?上級魔法でも聖騎士には効かないのに……」


「なんか自分に補助魔法掛けて肉弾戦で勝ったみたいだな」


アインはその話を聞いて絶句する。

そもそも補助魔法はバディである聖騎士に使うもの。

しかしエンブレムがあるので、ほとんどの場合は使われず、傷ついて休んでいる聖騎士に対して回復魔法は使ったりはする。

また聖騎士がやられてその場から魔法使いが一旦撤退する際に、自分に掛けて逃げるという使い方はある。


だが、魔法使いが補助魔法を自分にかけて、さらに前衛に出て肉弾戦をするなんてあり得ないことだ。


「そいつはどこの国の、なんて名前のやつなんだ?」


アインはその魔法使いの常識を覆そうとしている生徒に興味があった。

聖騎士に勝てる魔法使いなんて今まで見たことも聞いた事もない。


「確か、火の国出身の……アルフィス・ハートルだっけかな?」


「アルフィス・ハートル……ちょと待て、確か入学当初の実力テストで最下位だったやつじゃないか?」


「ああ、そうだ。かなり素行が悪くて教師か

らも目をつけられてる問題児って聞いてる」


その事実を知って、さらにアインは言葉を失う。

そんな奴がアゲハ・クローバルのバディだなんて。

考えただけでゾッとした。


「まぁ気を取り直して、バディ探しするしかないな」


「そうだね……」


アインはトッドの優しさに報いることが出来なくて残念だという気持ちと、アゲハに即答でバディ申込みを断られたらということ。

なによりアゲハのバディが魔法学校で一番の成績の悪い問題児だということにショックを受けていた。


「やっぱりバディ探しが一番厄介だな……」


アインは落ち込みながらも、また一からバディ探しを始めるのだった。

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