プロローグ(2)
僕は強くなりたかった。
それがアルフィス・ハートルの唯一の望み。
男として生まれたからには大魔法使いを夢見るものだが、それはここの下級貴族の底辺魔力じゃ叶わない。
姉様は天才騎士、妹は天才薬学師。
じゃあ僕は?
この世界は力こそ全て。
知恵はあっても魔力がなければ何も意味はない。
体も弱い。
もう12歳にもなるのに肉付きも悪かった。
「どうやったら強くなれる?」
僕の口癖だった。
僕はその答えをずっと求めていた。
火の国 ロゼ
大陸の南東に位置するこの国は漁協が盛んだ。
フルーツもよく育ち、隣国との貿易にも力を入れていた。
そのロゼの最南端の小さな町べルート。
そこの小さな貴族、ハートル家は下級貴族だ。
父は薬学を学び、根が厳しい。
母親は元聖騎士だったが、病気で引退し家で療養中。
僕はこの家の跡取りとして育てられる予定であったが、いかんせん魔力が低かった。
低い分、妹のように学で補おうとしたが、魔法使いには魔力が必須。
魔力がその人の強さを決める。
僕は悩んだ。
父上や姉様と違って、僕を蔑まない母を救いたかった。
力があればそれができる。
なにせこの世界は力があればなんでもできてしまうからだ。
僕は幼少からずっと本を読んでいた。
そして12歳になった初めの月に見つけてしまった。
強くなる方法を。
"転生術"
ありとあらゆる本を読んでたどり着いた結果。
もうこれしかないと思った。
通常の転生術は別の世界から強い力を持った者をそのまま転生させる。
しかし、それには莫大な魔力が必要となり、人間には不可能に近い領域だった。
転生させた強者に魔力以上のなにかを教わろうと思っていたがそれはできない。
しかし僕はこの転生術の穴を見つけた。
転生させるのは肉体と魂を持ってくるのだが、肉体がどうしても重いらしい。
そこで魂だけをこちらに転生させて、別の体を用意する。
これなら魔力もそこまで必要としない。
だがここで問題がある。
「体はどうする?」
そこで僕は自分の体に魂を入れることにした。
僕自身の魂はどっか違うところに定着させて、別の世界にいる強者の魂を僕の中に入れる。
自分はいなくなってしまうかもしれないけど、そんなことはどうでもよかった。
ただ優しくしてくれた母上に幸せになってもらいたい。
僕はとある魔法で自分の体から魂を抜き取り、別世界を旅をした。
色んな世界を見て回って、僕は一人の人間に目をつけた。
その人の名前はホウジョウシンゴというらしい。
彼はなにやら大きいな音が鳴り響く店で命を落とした。
僕は"そんな彼をこの世界に転生させた"