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私のマイゲレンデ  作者: ぐでこ
1/1

大学入学前の私


目を閉じるとあそこにいなくても心地良い音がしてくる気がする。

シュッーーシュッーーー

真っ白でふわふわの雪を板が滑る音。

コトン、コトン。

上へ上がるために私を連れて行ってくれるリフトが車輪を通過した時の振動。

風が冷たくなり始めると毎年あの場所へ行きたくてソワソワする。本当は毎日でもいたいあそこは私にとっては遠い場所。早く休みが欲しい…社会人の私はいつもそんなことばかり考えてしまう。これを書いている間に行ったらいいという人もいるだろうが、生憎私は諸事情で家から出られない身。これを書いて気を紛らわすようにしようかな…




コトン、コトン……………

「あの人のウエア…少し前のデザインだから絶対に上手い人だよ…ほらやっぱりうまかった。あのちっちゃい子直滑降で滑ってるけど無事止まれるかなぁ…」


リフトの上でブツブツ呟いてるのは次の春から大学生になる雪。毎年、年末年始に家族で来ている斑尾スキー場にてスキーのウォッチング中…


「わかる!古そうなウエア着てる人ってスキーの黄金期と言われてる時から続けてる人が多いから上手い人が多いんだよね」


賛同してくれるのは雪の3つ上の美樹。美樹も毎年家族でこの時期に雪と同じペンションに泊まりに来ている。雪とは小学生ごろからの付き合いで一緒に遊んでもらったお姉ちゃんだ。だが、スキーという趣味のもと気兼ねなく話せる相手である。もっとも美樹はスノボーも滑れるのだが…また別の話で。



夜。雪たちが溜まってるペンションにて家族みんなでワイワイと騒いでいる。お酒も合間って親たちは賑やかだ。


「そういえば雪ちゃん来年から大学生か…早いね。何学部?」


「教育です。幼児教育専攻で…」


「幼稚園の先生なるだよね」


という感じで偶に話しかけてくれる。

子ども組というと、2つ下の私の弟の冬馬、冬馬と同い年の美樹ちゃんの弟の樹くんと沙羅ちゃん、沙羅ちゃんの弟の昴くんがいる。

私たちはというと持ってきたトランプやウノを黙々としている。スキー以外で私たちの共通の話題なんて少ないからだ。それでも、20年近い幼馴染だ。



次の日。夜遅くても7時には起きて朝食を食べに行く。9時からリフトが運行するのでその時間に合わせて起きるのだ。食堂へ行くと、私たち以外の家族はまだ降りてきていなかった。


お腹いっぱい食べると準備をしてお腹の中のものを消費しにゲレンデへ向かう。これから楽しい時間の始まりだ!


シーズン初めはやはり緊張する。いよいよ滑れる期待感と緊張で足と体が強張るのだ。でも、それも基本のボーゲン(板をハの字にして滑る)から段々体を慣らしていき、シュテムターン(板をハの字に広げ、徐々に閉じていく滑り方。)からのパラレル(足を閉じて滑る)をしていく。その一連の動作が私にとってはルーティーンになってる。


今のルーティーンが完成されたのは高校2年の時に行ったスキー実習の出来事。スキーにはバッジ検定があり、スキー実習ではその検定を受けに行った。検定前に色々と基本的な動作を教えてもらい、シュテムターンを知ったのもこの時からだ。


雪は4歳からスキーに毎年行っており、スクールにも入ってシュテムターンも教えてもらっていたのだが、本人が覚えてるかどうかはまた別の話…


何はともかく雪は、滑る時の雪の感触や冷たい空気、山の上から見る景色、日常とはかけ離れた世界にどっぷりハマってしまっていた。雪の住んでいる大阪とは決して味わえない空気感もあり、この時間を思う存分味わっていた…



だが、父や冬馬が気づくともう半分くらい滑っており声をかける。

「おーいまだかー?」

私と母は慎重派でゆっくり滑る。だが、そこで待つ2人ではなく追いつくと休憩もなく滑っていってしまう。私と母は顔を見合わせてため息をつくのであった。


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