EX2-9【エピローグ】
作業も終わり、道具を片付けながら帰り支度をしているその時だった
ふと背後にかすかな殺気…
振り返るより先にシュンーーと風を裂く音
振られる刀を咄嗟に柄ではじき、冷たい刃が相手の首筋に触れた瞬間、自分の首にもまた、ひやりとした感触が走る
「……久しぶりだなっ、おっちゃん…」
「…ふんっ!
お前もまあまあに成長したみたいだな…」
互いの刃をそっと下げる。
警戒と安堵が交差する一瞬の沈黙のあと、男は小さく笑った
「おかしいと思ったんだよ。
できたばかりのギルドに指定クエストがくるなんて…」
視線を真っ直ぐに向けたまま、男は呟く。
「……アンタの依頼だったんだな」
「久しぶりにお前等の顔を拝みたくなってなっ!」
老剣士は片眉を上げ、懐かしむような視線を向ける。
「あの活発な嬢ちゃんがあの時の赤ん坊か?
面影はあるが……あれはなんだ?化物じゃねえか!」
口調は軽いが、目は冗談ではなかった…
「現役から退いたとはいえ…ワシから見ても異常だ…
相手しちゃいけない雰囲気がガンガンしてるぜ…
お前と出会った時の衝撃もすごかったが……比べ物にならねえだろ、次元が違う…アレはっ!」
「…そういえば聞いたよ…」
背から一本の刀を外し、静かに差し出した。
「これ、えらい名刀みたいじゃないか!
元々、真から預かったものだし、まだ未熟な俺には荷が重すぎる。
改めて生みの親であるアンタに返すのが筋だよ…真もそれを望んでる気がするし、お返しするよ…」
「ふむ、半分正解で半分勘違いをいておるなっ…
名刀とは刀だけに非ずっ!
振るう使い手が名手で、初めて名刀足りうる…
使い手がボンクラなら、その刀もナマクラよ。
今現在、それが名刀と呼ばれているのなら、それはそうゆうことなのだろう…
持っておれ…
そして名刀のままにしておいてやってくれ。
真から預かった、大切なものなのだろう?
俺の手を離れたガキを、わざわざ返せなんてケチなことは言わんさ!」
「……持ち上げても依頼料は変わらねえからなっ…
最安値で受けているんだからっ!」
「固いことを言うなっ!」
善一は豪快に笑い、肩をがっしりと抱いた
「今、村は少しでも金が必要なんだよっ!」
そのまま、ぐっと顔を近づけ、耳元で低く囁いた
「刀の国は消滅したよ。
俺はあの後、見切りをつけてあの国を出たが、
その後、突然の季節変動で一年を通して激しい寒波に襲われるようになったのが原因だ。
人も作物も持たなかった…
まあ一人の女の子に罪を擦りつけて、討伐隊まで向かわせるような国だったわけだから滅んでも仕方ない…」
「……因果応報、とまでは言わないがね…」
かすかに目を伏せる。
「今から思えばあの国は剣豪の真似事をしていた国…といった印象か…
”本物”は女子供にあんな仕打ちはしないっ!」
「フハハハハハッ、本での知識に影響され過ぎだっ!」
笑いながらも善一は、その言葉を否定しない
「いくら剣豪とて、未知なる存在はいつの時代も恐ろしいものさ!」
そう言って、男の背をバンバンと豪快に叩く。
咳き込むほどの力に、苦笑しながら距離を取った男が、目を細めて言う。
「そういうアナタは、結局未だにその未知を恐れないよなっ…」
「そりゃあな…胸躍らずにはいられるかっ!
未知なる存在に、ワシがどれだけ通じるのか…試すいい機会ではないか…」
背筋が、ゾクリと粟立つ
不敵な笑みと、異様な眼光
「……結局あの国で、一番”本物”だったのはアンタだったみたいだな…」




