EX2-3【真白氷華】
『どうゆうこと?能力が…制御できるほどに弱まっている?』
魔力が放出された中心部へ行くと、両手を眺めるように見つめる10代半ば程の少女がそこにはいた。
様子を伺う様に物陰から覗き込む
重心を左足にかけた瞬間、ポキリと氷の割れる音がする
つい先ほどまで凍っていなかったのに、なんて浸食力…
「っ!!?そこにいるのは誰っ?」
冷たい視線が遮蔽物を突き抜けて、自身へと突き刺さる。
少女が手を上げるその周囲に収束した氷が刃となり、振るう隠れていた木へと刺さりなぎ倒す
「…え?子供っ?なんで…っていうかどうやってここまで辿り着いて…?」
ガラガラガラッと、音と土煙を巻き上げながら崩れ落ちる木の影から見えた俺達を見て驚きの表情を見せる
困惑気味な少女と裏腹に、冷静に場の状況確認をする。
俺達を見た反応を見る限り、俺達の存在を知る者ではなく、故に俺達を狙う刺客の恐れも低く感じる。
また仮にもしも、自分が大人だったり敵意を剝き出しにしていたら戦闘は避けられなかったかもしれないが、
少女の予想とは裏腹に、目の前に立つのは自身より更に歳下の俺と、年端もいかない赤子…
その為の今の反応なら、色々と話を聞くことが可能だろう。
初めて住んでいた城以外の人々が住む国(村)に辿り着いたにも関わらず、能力者のいない、もしくわほぼ存在しない閉鎖的な国(村)。
魔族と人族との文化的の違いを知る為には打ってつけだが、現状すぐにでもミクを守る為の強い力を得る為には心許ない場所…
かと言って冬の寒空の下、赤子を抱えながらの長距離長時間移動は論外…冬が明けるまでこの土地にいるしか選択肢がないと考えていた。
そこに現れた打ってつけの存在。
強い能力を遺憾なく発揮できるポテンシャルを持ちながら、年齢は自分とそこまで大差ない…
交渉次第では修行や情報収集…上手くいけば味方に引き入れることも可能かもしれない…
彼女の困惑する表情を見て2秒にも満たない時間で思考を働かせた俺は、そっと両手を天に向け上げた。
「…驚かせてすまない、驚かせる気はなかったんだ。
ただ、幻想的な風景に見惚れていたらいつの間にかここに…」
「えっ?幻想…?見惚れ…?
子供の使う言葉選びじゃないんだけど…」
警戒心を解くつもりが、かえって警戒レベルを上げてしまった…
▽ ▽ ▽
敵対の意思がない事を理解して貰うのに、無駄に10分近くかかってしまった。
最終的にはそんな戦闘になる可能性のある場に赤子は連れていかないやろ?ということで納得してもらえた。
「こうやって人とまともに話せるのはいつぶりかな…
私の名前は真白氷華っ!
迷惑をかけて悪かったわね、人通りのない山岳のこの地帯に村があるなんて知らなかったもので…」
「曰く国みたいだがな…
気にしなくてもいいよ、俺達も旅の途中で少し立ち寄らせてもらうだけのとこだし…」
「……言動がもう子供らしくないのよね
しかし困ったわね…
人がいると分かった以上、長居はしたくないのだけれど、少しここで調べたいことができたのだけど…」
「調べたいこと?」
「ここに来るまでの間、止まらなかった能力の暴走が制御できているの…
もしかしたらこの土地の特別な地脈が原因なのか…あるいわ…」
「なら、ワシが保持する小屋を一つ貸してやるっ!」
振り向くと善一が木に寄りかかるように立っていた。
いつから居たのか…俺達に気付かれることない程の希薄な気配で背後を取られていたことに驚愕する。
絶対的能力差など歯牙にもかけない経験からのアビリティー…
二人が二人ともに自身の更に上にいる存在なのだと実感させられる…
「急に出てきてなんなんですか?アナタは…」
「その二人の保護者…でもないなっ!今日会ったばかりだし…
強いて言えば、親戚のおじみたいなものだ!
それよりも、お前さんの現状の方が問題だぞ…」
その手からヒラヒラと舞い落ちた紙には懸賞金額と、そこに映る少女の姿があった。
「なっ…!?」
「政府から危険分子として見られているらしいなっ!
まあ、これ程強力な能力じゃあ仕方ないだろう…
今はまだそれ程の額じゃないが、早急に対処しないと面倒くさいことになりかねないぜ!」
両手でその紙を広げ見る彼女の顔から血の気が引いていく。
蒼白となる彼女に対し、善一が続ける。
「ここからまっすぐ進んだ先に焚火のついた家がある。
そこを右に道沿いに進めば小屋がある。
制御するための手掛かりがあったんなら、そこを拠点にしばらく探ればいい。
掃除だけはしといてくれよ…ここしばらく全くの手付かずだったものでな…」
「…なぜ、見ず知らずの私なんかにこんな親切を…?」
「昔にもいたからさ…
内に持つ巨大な力のせいで、自分の人生を世界に振り回された小生意気なガキがな…」




