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《3章過去編》完全無欠のサイキョウ勇者の攻略法  作者: MeguriJun
4章【氷雪の記憶 Crystal Of Snow Memory】
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EX2-2【鴨河善一】


刀の国(明らか村)から離れた山岳地帯の山上に”ソレ”はあった。

ウワサも聞いたとおりの趣のある…というより古びた鍛冶場…というべきか…

錆びた扉をキキキと開けると、そこには焼けた鉄の臭いと金属を打ち付ける音が響き渡っていた。




「ん?なんだお前は…?ガキかっ?

 出てけ出てけっ!

 今わしゃー忙しいんだっ!!!」



そんな一昔前の職人堅気な対応で、手の甲を向けシッシッと手を払い見向きもしない相手に少し腹を立て、その男の元へズカズカと近付く。

その距離が1mを切った辺りで、叩く刀の横に置く、手入れの行き届いた見事な長刀が自身に目掛けて振るわれる。

殺気の一切が無い、ただの警告なのだろうことは容易に想像がついた…しかしその速度はまさに神速の域にあった。

その一撃を腰に差す刀を引き抜き、左手を左足で受け止める。

寸前で止めるつもりだった鍛冶師はその予想外の対応に目を見開いて驚愕の表情を浮かべるが、その視線が俺の持つ刀へ向くと表情は一変する



「…その刀……支王のガキか?」




▽  ▽  ▽




「龍族と仙族に次いで魔族との条約を結び、地上でその刀を託した後に忽然と姿を消した…ねぇ~…

 まあ、アイツらしいわなっ!」



居間に案内をされ、一通りの出来事を話す。

もちろん、全ての真実は伝えられない故、事前に想定し答えを用意していた設定や背景を真実を織り交ぜた上で説明する。



「……信じるのか?」


「その刀を持っているのが何よりの証拠よ…疑ってても真実なんてわかりゃしねぇ!

 それに以前、ワシにガキができた報告に来た際に、生まれるガキの名を酒の席で口を滑らせたことがある。

 その名前を知る者自体少ないはずだ…

 奴が信用している奴の言葉なら…まあ”ある程度”は信用たるに値する者だろうよ!

 ……しかし、随分と似ても似つかずだなっ!

 アイツは失礼な上に自由奔放人だったからなぁ…

 だから誰かに教えを乞うこともなかったらしく、剣技に関しては空っきしだった!

 3年かけてようやく見れるレベルに成長してたが…

 そん時出て行くときに、餞別としてその刀をくれてやったんだが…」



まじまじと握りしめた刀を見る



「歴戦を重ねた割には大事に使っていたらしいなっ!

 ”コイツ自身”アイツもお前も気に入っているらしい…」


「…見てわかるものなのか?」


「そりゃそうさ、ワシはコイツの生みの親だからなっ!」



先程までとは打って変わり、満面の笑顔で口にする。

それはまるで、親が子供の帰りを喜んでいるかのように…

「ほらよっ!」と握る刀を放り渡す。



「……いいのか?俺がもってて…」


「もう親元離れた子供だ。

 それに主である真がお前に託したんだ…

 ワシがグダグダ横やり入れるもんじゃねえだろうっ!」



ダーハッハッと豪快に笑うその男を見て、過去に視た男の面影が重なり合う。

『そっくりじゃないか…真と…』

そんなことが脳裏に浮かび、口の口角が少し上がる。

少しだけ気が緩んだ次の瞬間、突如の凄まじいプレッシャ―と悪寒と共に自身の魔力感知が働く。

最初に動いたのはミクだった…

ダッダッダッダッと物凄い速さで移動し扉の外へと這いずり進む。

「なんだ?」という置いてけぼりを喰らう善一を置き去りに、外へと飛び出す。

アンチ能力者思考の強いこの国(村)でこれほどの魔力放出を感じるという事は、

外からの来訪者で問題が起きた証…

しかもこの放出量は明らかに異常…

魔界においても稀に見ぬハイ能力者!

そんな存在がこんな辺境の地へ、このタイミングで現れたということは、狙いは…

不穏な予感を胸に、放出地点へと向かう…

…ってかミクは早すぎるだろ!

もはやハイハイのレベルじゃない…

なんで全速の俺と同じくらいの速さなんだよ…


なんとかミクに追いつく形で放出地へと辿り着くと、今までの風景とは全く違う異質な光景が広がっていた。

ある位置を境界にしんしんと雪が降り、見渡す限り白銀の雪原…

先程までの寂しい印象の枯れ木並木も、風情ある雪景色に変わっていた。

ここは国(村)から善一の家への通り道…

つまり、先程通ったであろう道が見る影もなく変わり果てたことになる。

ハア~~~と深く息を吐くと、その瞳は色を変える。


能力《推測シャレード

自分の持つ知識を総動員させ、答えを導き出す能力。

あくまで自分の知識に依存する為、真実とは限らないが、忘れている知識すらもその範囲に入る為、

通常思考を遥かに上回る思考解答を導き出すことができる能力である。


周囲を見渡すと、奥に向かうほどに雪の厚みが増しているのが分かる。

更に少しづつではあるが雪の降る範囲が移動している。

これは一度発動して止まる単発型ではなく、継続型…

しかも能力の移動幅が人型の歩幅に類似していることから、雨を降らしたらそのまま降りっぱなし…のような通常継続とは違う、

超高レアリティの常時発動型で、今も能力放出を意識的もしくわ無意識に発動している可能性が高い。


能力を止め、下を見るとまたもやミクの姿はなく、雪に残された足跡(ハイハイなので手跡もかな?)が残されていた。

今日何度目かの溜息をつき俺はその跡を追った。



『どうゆうこと?能力が…制御できるほどに…弱まっている?』


ミクを追い、魔力が放出された中心部へ行くと、両手を眺めるように見つめる10代半ば程の少女がそこにはいた。




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