EX1-12【エピローグ】
「あの二人の出会いにそんな背景があったとはなっ!」
広く広がる空間にはたくさんの手術台とその上には血の付いた刃物、大量の骨、注射器、大量のメモ書きなどの資料が綺麗に置かれていた。
そして、所狭しと並べられるガラス瓶には様々な動物や魔物、モンスター…果ては人間らしきものまで詰められていた。
そんな人が人でいられないであろう、この世の地獄のような場所に立つ"三人"は会話を続けた。
「しかし、随分と詳細に支王や魔族の事情を知っていたな…」
「聞き出しましたからねえ、出生に関わった者に……」
指を指した先の瓶。
その中には液体に浮かぶ大人の脳が入っていた。
「…えげつないことをするねぇ~」
「……」
「そういった全ての事象の偶然こそが、まさに必然……
などと一般的には言われるのでしょうが、それとはまるで次元が違います。
言うなれば”存在するはずのない未来へ辿り着いた奇跡”
そう言っても過言ではありません。
そしてその要因の最たる立役者・中心にいた人物は間違いなく、
検体No328、本人自称名『フウ』の存在でしょうね。
実験ファイルには無能力者と記載されていた彼女ですが、
最後に覚醒発動させた能力は他の追随を許さないほどに異常の”ソレ”でしょうからね…」
「ん?今までの話の中でそんな内容の場所があったか?」
その一言に深い溜息を吐き軽く睨みつける。
「なぜ余が支王ミライの幼少期を語ったと思っているんですか?」
「……生まれ変わり…ですか?」
二人の会話に割り込む形で、三人目が口を開く
「さすがは察しが良いですね。
しかし、正確には少し違います…
彼女が発動した能力、その名を《巡愛》。
その力は’運命の転生’、そして’因果の改変’!」
「運命の……転生?」
「因果改変……」
「死んで尚その先、生まれ変わったとしても想い人と”必ず巡り会う”ことのできる、
能力の中でも特に特異で不可思議な能力です。
運命…因果…それは王も悪魔も、神でさえも抗うことの許されない絶対のさだめ……
その”絶対”を破綻させる能力。
更に驚くべきは、自分のみならず対象相手の運命や未来といった、さだめられた因果律を捻じ曲げ、生涯のみならず、
未来永劫まで影響を及ぼす世界でも類な…脅威的な能力なのですが、致命的な欠点として、
本人の記憶を引き継ぐことがない為、全く意味の無い能力といって差し支えない、あまりに残念な能力なのです。
…が、今回に限ってはその限りではありません。
通常出会うことのない二人が巡り会い、互いを想うことで全く違う未来へと世界は動いている。
絶対の死を乗り越えた彼女に与えられた力は宇宙を支配できる本物の神の力。
”星の終星者”
今尚この星にいるこの奇跡を逃す手はありません。
余が今尚この時代にいるのも、それが理由!
必ず我が物としてあげましょう。
『支王・・・ミクッ!』」




