EX1-6【第4次種族間大戦】
あの日を境に俺の世界は黒く沈んだ。
全てを失った
友も
仲間も
大事な親友も…
俺を責める声さえも今は聞こえることがない。
残されたのは俺という不完全な存在だけだった
全ての色を消え、黒一色に染められた世界では何の感情も芽生えることなく、塗り潰されていく。
研究が凍結して半年と少しが経った。
この半年、ただ漠然と、そんな想いのままで部屋に匿われていた。
未だ上層部は俺の扱いに困っているようだった。
そのほとんどが能力者としては不出来、表沙汰にできない経歴から処分の意見が多い中、
研究責任者と父である魔王がそれに真っ向から反対したのだ。
血を分けた子供が自分だけだからなのかは分からない。
だが、仙族と龍族のハーフである母が他界したことが要因になっているように思えた。
ボ~っとしながら24時間流れ続けるテレビを見る。
そこには目と鼻の先で大きな戦い始まっているとのことで、
直々に魔王自身もそちらに向かったとのことだった。
そのこともあったが、実際どれほどの重鎮達による、どれほどの規模の大戦なのか…
少なからず興味があった。
窓を開け、外を見てみると人々は慌ただしく走り回っている。
さすがに目と鼻の先といえど山一つ二つ超えた先、
この付近での戦闘はないかと窓を閉めようとした瞬間、凄まじい轟音が周囲に響き渡る。
バタンッと思い切り窓を開け外を見ると、目の前にそびえ立つ山の先で巨大な火柱が昇り、
紅蓮の炎が火災旋風と化し、全てを燃え上がらせていた。
先程まで見ていたテレビは砂嵐のみが流れ、
外を走り回っていた人々は腰を抜かし、唖然とした表情でその光景を見ていた。
まさに八大地獄の一つ、焦熱地獄を絵にしたように広がる光景に居ても立ってもいられなくなる。
大戦中により、人は出払い警備は手薄。
その上、今の衝撃で皆の視線は全てそちらに向き、困惑と混乱が入り混じった状況になっている。
半年間に渡る鬱憤もあった。
気付くと窓から飛び出していた。
風の能力で出来る限り上空へ浮遊し、雲に隠れる辺りで方向を山の方へ向け、勢いよく飛び出した。
辿り着いたそこは、自身が知る地獄とはまた違った、最悪の景色が広がっていた。
逃げ惑う人々を紅蓮の業火が舞い襲い、
何千もの人々が一瞬で燃え上がり、灰になり…
それすらも搔き消す灼熱の業火の渦の柱。
その中を悠然と進む3体の影が姿を現す。
《天候王》の<恩恵>を持つ、天候を操り、嵐や雷雨を呼ぶ天空の支配者:天龍アテナ
《九相図》の<恩恵>を持つ、暗黒を操り、漆黒を纏う闇の支配者:闇龍アルデウス
《金鱗憤》の<恩恵>を持つ、鱗粉を操る世界で最も美しく世界で一番硬い龍:金鋼龍フィジカルタ
猛火から三方位へ飛び立つ3つの影
そして、皆が驚愕する
刻々と広がる巨大な炎の渦の柱を一踏みでかき消したのは、
数秒前よりせり上がった、まごうことなき巨大な山そのもの……
活火山そのものを、甲羅のように背負い闊歩する、亀のような姿をした四足歩行の龍。
体長は1000メートルを超え、
その巨大過ぎる一歩は数キロ単位で地響きを立て、地割れを起こし、地殻変動をも引き起こす。
ただの咆哮ですら凄まじい衝撃となり、周囲一帯を吹き飛ばす規格外の存在。
大地を司る《大変殻》のギフトホルダー
超絶大型古代龍:山巓龍ライアグロス
震える身体を抑えることができない。
単体での確認は幾度かされていたが、死四龍の集結は未知の出来事……
龍族はこの戦いで、全てを終わらせる腹積もりであることを肌で感じる
それぞれに散った死四龍は、各々にその脅威を周囲へ知らしめる。
場は阿鼻叫喚の嵐が渦巻く、凄惨な光景へと変わっていった。
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周囲の自然系能力者は困惑する。
広範囲に及び、周囲一帯は大嵐に吞み込まれ、
降りしきる凄まじい豪雨は炎を掻き消し、電撃を乱し霧散させ無効化させる。
何より不可思議は、その豪雨により発生する水を、水の能力者が…
嵐を風の能力者が支配できないでいること。
いくら干渉しようとも、暴雨も烈風も止むことなく狼狽える両能力者…
一体何が起こっているのかと騒然とする。
空を舞い、天穹を駈ける存在
天空全域のみならず、その下に広がる大地すらも支配権内、
吹き荒ぶ雨も風も支配下におく空の王者。
天龍アテナが、その一帯全てを支配していた。
暗雲たちこめる雷雲の中よりその様子を視る。
あとは無力と化した雑兵を蹂躙するのみ……
しかし、突如周囲の雷雲が払われ風が乱れる。
暴風が巻き上がり、突然の突風で吹き飛ばされた先で、激しい降雷がアテナを襲う。
”疑念”
自身が引き起こす操作された天候が、自身を襲うわけがない……
だとすると…答えは一つ
”自身を超える天候使い”
幾度となく襲い来る風雷を、自力で掻き消したアテナが目にしたその存在に瞳の色が変わる
龍を含めた生物全ての肉骨を抉れるであろう鋭い嘴…
雄々しくも美しく、白銀に輝く優雅な尾…
旋風を巻き起こし飛翔する銀翼の鳥
雷雲の先、視界に映らない目標を的確に捉えるは”絶対の眼”
指定した空間座標域の現状を偽りなく、
真実のみを映し出す空間視野能力《皇帝眼》を瞳に宿す大空の番人
世界を視る鷲……幻獣”銀鷲”
雷臨するは天災の権化
それはまるで、蟻を潰すのに周りの草花を巻き込むように…
その力を支配下に置きながら、絶大すぎる破壊力で周囲に甚大な被害を与えることから、ついたあだ名は”歩く天災害”
出現が確認された周辺地域の天候は、その瞬間に一変し、天空は雷鳴轟く巨大な雷雲が発生し豪雨が降りしきる。
雷から嵐、豪雨から吹雪、果ては地震や噴火まで様々な自然現象を引き起こし司る
同じ系統のマルチを持ちながら、加減が難しい代わりに全ての力の上をゆく存在
災厄を呼ぶ虎……幻獣”青虎”
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不可思議な現象が目の前に広がる
放出された金粉がその動きを止めたかと思えば、徐々に一箇所へと集められていく。
幾度となく爆破を試みるも、反応は一切ない。
まるでその一帯に、酸素がないかのような……
途端、凄まじい衝撃がその身を襲う。
数メートル吹き飛ばされた先、立て直すも、自身に受けた衝撃箇所を確認し驚愕する。
金剛に守られた強固な身体にも関わらず、その部位はひび割れ粉砕されていた。
対象を【脅威】と認識し、その者達を睨みつける
空に立つその姿たるや、雄々しくも美しく…
そしてまるで、空にできた見えない階段を降りるように、優雅な佇まいで大地へ降り立つは白き獣
強靭な筋肉からなる瞬発力と、七日七晩走り続ける持久力。
強固で鋭い牙から繰り出される一撃と高速の脚力で、一夜にして一国を蹂躙するに十分な程だが、真に恐るべきはその<恩恵>。
周囲一帯の大気を操り、空中に層を創り出すだけでなく、
その構成配分量さえも調整する、生物に対し無類の強さを発揮する気高き狼の王
世界の秩序を守る狼……幻獣”白狼”
対照的に荒々しくも雄々しく、咆哮を轟かせ降り立つは赤き暴君。
《破壊》の上位に位置する、世界の全てを粉砕する<恩恵>を持ち、
拳から放たれる一撃は万物全てどころか空間さえも砕く破壊神
その強さにおいて、仲間から絶対の信頼をおかれると共に、
高すぎる戦闘力と凶悪なほどの凶暴性から、
最大クラスに危険視される幻獣の異端児にして超危険生物。
全てを破壊する鬼……幻獣”赤鬼”
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周囲は不思議に思う
進むべき侵攻方向が少しづつズレていっている。
しかし、そんな思考すらも徐々に薄らぎ、山巓と共に歩を進める
その先に広がるは広大な海
いや、そもそもにそこに海など存在しなかったはず…
そんなことを疑問にも思わず、山巓龍はその先へと進んでゆく
両手足が海に浸かる頃、その動きは止まる。
浮力により浮かび上がる有り得ない事態でようやく気付くも、その身の自由は完全に失われていた。
大地のギフトホルダー唯一の弱点、その尋常ならざる巨漢ゆえに予想していなかった『大地から離れる』という想定!
規格外の物量に対し、規格外の水量で対抗するは大海の主
海を呑み込み、海を呼び出し、海を引き連れる者、《地平線》の恩恵者
山巓龍を浮かび上がらせる程の水量をも操る能力は、
その余りにも高い周囲への影響力から、生態系を崩しかねないとし、
普段は海溝の底で眠るが、一度目覚めればその圧倒的な力で他を蹂躙する紅い悪魔
幻獣は星を守る守護者…
しかしこの者にとってはもう一つ…自身の食料を守るため!
その捕食対象は幻獣以外のありとあらゆる生物全て。
地域一帯の生物を喰らい尽くし、
いくつもの生物を絶滅へ追いやった前歴を持つため付けられたもう一つの名……
大海を喰らう鮫……幻獣”紅鮫”
幻獣の中でも、白狼に次ぐ小柄な体躯でありながらも、
白狼以上に神々しく美しい、一瞬にして心を奪われる幻想的な容姿。
神出鬼没で滅多に表舞台に立つことが無く、目撃報告も少ない幻獣という名を体現したような存在。
その大きな要因は所有する<恩恵>
6つの尾を持ち一つ一つに幻惑・催眠・暗示・蜃気楼・幻覚・錯覚といった
思考侵食系を使い分ける、全てに通ずる幻術を兼ねた、物理近距離系において最悪の幻術使い。
その優雅な立ち居振る舞いで、幻術への入口へと導く神秘を纏いし狡猾なる妖魔
幻を魅せる幻……幻獣”赭狐”
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そして闇龍アルデウスの前に立つ存在が一匹……
数千もの被害を及ぼし尚、行進を続けていた闇龍が止まる。
支配する闇の空間を何かが侵食する
その広がりは徐々に拡大し、闇龍の創り出した暗黒空間を喰らい尽くした。
黒と白の球体状の不可思議な物体あるいは空間そのもの…
その中心にいるは、双頭の蛇
星を導く者、幻獣をまとめる長……幻獣”王蛇”
「ふんっ!
星の守護者が、こんな種族間の戦にしゃしゃり出てくるとは……
しかも、トップ三体のうち二体がお出ましとは、いよいよもって我らと決着を付けに来たかっ!」
邂逅する生ける幻と陣営最強の四体の姿を遠くより見ていた龍の王が動く。
ズドン!!!とその巨体が降り立つは戦況に於いて相手の最大戦力…幻獣”王蛇”の眼前。
王の到着と共に闇龍は自ら創り出した暗黒へと姿を消す。
その姿を確認した魔と仙、両国の王も集結する。
「久しいな…”王”を語る者共。
こうしてまた出会うのは数十年ぶりか…
どこまでも我を楽しませてくれるっ!」
全てを見下したような視線を向けた後、再び天空へと飛翔する
「だがいい機会だ…そろそろこの因縁も終わりにしてくれる。
さあ、全てを消失させてくれよう……
塵も残らず死ねっ!
ゴットブレスーーー!!!」
その咆哮と共に放たれた一撃は、延長上にあるもの全てを消し飛ばす一閃。
最初に反応したのは幻獣”王蛇”
目の前に無数に拡散した黒き漆黒の空間が一閃を阻もうとする。
しかし、王蛇の展開する空間に呑まれ、削られながらも、放たれた一閃は尚、勢いを衰えさせることなく王達の元へ向かう。
《空流》による暴風障壁、《想生》による複数に及ぶ防御壁を突き抜け、
相当の威力を維持した一撃が王達に直撃する寸前、対立する両者の間に割って入る影が一つ。
ズドォォォンッ!!!と凄まじい音が周囲一帯に鳴り響く。
その者が大気を殴りつけると、突如空間がヒビ割れ、龍王の放つ一閃は二分する形で王達を避けていった。
猛りと叫びを木霊させ、赤き鬼がそこにいた。
「射線上の空間を叩き割ったことで、我が一撃を逸らしたか赤鬼…
褒めてやろう!
我のこの技を使わせて生きていたのは貴様等が初めてだ…」
舞う砂煙が収まっていく。
周囲の異常な熱量に見渡すとその被害は凄まじく、防衛を張った周囲以外の一体ほぼ全てが焦土と化し、
何百・何千もの衛兵や人々が跡も残さず、姿を消していた。
その情景を見ていた龍王の背後から、パーーン!!!と何かが破裂する音がする。
龍王が視線を自軍に向けると、1人の大男が赤い特大旗を左右に大きく振るっていた。
「ふむ、合図が来たか…一応予定通りに事は進んだようだなっ!
皆の者、一旦退くぞ!」
散開していた死四龍が山巓の元へと集う。
遠方からの強力な攻撃で紅鮫と赭狐を山巓から引き離すと、
龍王の放つブレスが火炎旋風を巻き起こし、死四龍達を包み込む。
「この姿は人型に比べ、体力と魔力の消費が著しいのだ。
逆鱗状態を維持せず、今より千を越える能力者を相手取るのはさすがに愚策。
貴様達との決着は、次までの持ち越しとしてやろう!」
そう言い放つと、自身も燃え滾る火炎旋風へと身を潜めると、更なる火炎暴風が周囲を襲い、
その勢いが止んだ頃には、龍王と死四龍の姿はなかった。
取り逃がしたと思いつつも安堵の表情を浮かべる仙王の元へ一人の青年が駆け寄る。
「仙王様、今すぐお戻りをっ…!!!
仙界に龍族の軍勢が攻め込んできておりますっ!!!」
「…っ!!!あの合図はそうゆうことか!
龍王め、自身と死四龍という最大クラスの獲物を見せ、戦力をこちらへ向けさせたのか!
今すぐ戻るぞっ!!!」
仙族の軍勢が慌ただしく、仙界へと移動を始める。
第四次種族間大戦も終盤…戦況は未だ刻々と動き続けていた。
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