EX1-3【検体番号1525番】
「今日からしばらく、彼女と部屋を共にしてもらう」
「……はあ?」
間の抜けた声が口から漏れる。
そこには先日《教本》により、
俺自身のパーソナルデータを調べた少女…検体番号1525番の姿があった。
研究者曰く、俺の側に居て、俺の事を深く知ることによって能力の精度を上げようという考えらしい。
そういったことを包み隠さず教えてくれる彼女とは短いにも関わらず気が合い、色々と話をした。
その能力の特性柄、よく外に連れ出されたらしく、そこで知識や情報を得ていたらしい。
彼女の見てきた様々な景色や光景、自然や人々の生活を聞くのが夜の日課になっていた。
その過程で彼女の能力、他の能力についても詳しく、今まで会い見てきた能力などを事細かに教えてくれたのだが、
その中で一番気になったのは、とある勇者の話…
偵察兼情報収集の為に向かった際、他の能力者とのコンバインスキルにより超々遠距離からの視認に気付かれたとのことなのだが、
それに気づいたのは勇者本人ではなく、そこに訪れていたもう一人の青年だった。
その時は、生きた心地がしなかったと身振り手振りを加えた上で彼女は言う
一直線に迫ってくる【刀月】に目視される直前でフードを被った瞬間移動の仲間と共にその場から離脱に成功する。
そんなドキドキの…生死がかかった体験を熱く語る彼女が羨ましかった。
ちゃんと”生きている”気がしてならなかった…
いつの間にか俺は、彼女の話をまじまじと聞いていた
そんな話を聞いていると…聞いている時だけは…現実から解放されていた。
元々よく本を読んでいたこともあり、彼女の話す登場人物達や彼女自身に感情移入して、その場に一緒にいるような…
そんな気になれていた。
これが後に、冒険譚や小説…漫画といった視覚娯楽にハマるキッカケになったのだが、それは別の話である。
そんな彼女と一緒の部屋で過ごし、二週間が経とうとした頃、
彼女が血だらけの状態で車椅子に乗せられ、俺の部屋に運ばれてくる。
「っ!!!どうしたんだ?何があった?」
「さあ、最後の仕事だっ!
進化したその本には何が記されている?」
白衣を着た男が無理矢理少女を立たせると、彼女のか細い声が聞こえた。
「……《教本》…アップグレード…
……《予知》……」
肉体はひび割れ、顔にはいくつもの亀裂が入り、
身体中から血を流す中、能力が発動される。
その負荷は大きいらしく、苦悶な表情を浮かべながら、
一度は閉じた瞳を開く。
そして俺と目が合うとニコリと微笑む
研究員の手を払い、こちらへとフラフラと近付いてくる
その踏みしめる一歩一歩の度に、肉は引き裂かれ、血は噴き出し、辺り一面を赤く染める。
「君は……すごいね……
これから先……死ぬより…
辛い程の苦難が待っているけど……
……絶対に負けちゃ…ダメだよ…」
「なんだ?
何が見える?
答えろっ…1525番っ!!!」
「何も…見えないですよ……
ただ真っ白なキャンパスが見える…だけです……」
倒れゆく少女を抱きとめると、耳元で少女が囁く
「アタシの能力も…うまく使って…ね……」
そのまま彼女は息を引き取った
後から知った話だが、日が経てど事態の進展がないことに痺れを切らし、
強制的に能力進化を決行したらしい。
いつも通りの出来事、いつも通りの光景である。
「役立たず」と罵る研究員に”彼女だったモノ”は運ばれてゆく。
食堂で夕飯を食べ、部屋に戻ると部屋に合ったはずの彼女の道具や寝具は全て無くなっていた。
それはまるで、最初から彼女はここに存在しかったかのように…
痕跡の全ては消え去ってしまっていた。
寂しくなった部屋で一人、布団を敷き床に就く。
毎日行われる光景…
いつも見ている光景…
その一端に過ぎない…
そのはずなのに、なぜだろうか…
布団の中でなぜか、涙が止まらなかった
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