EX1-2【検体番号328番[フウ]】
俺の能力を少しわかりやすく説明するなら、目を瞑ると暗黒に支配された世界に1冊の本が浮かび上がる。
いわゆるパーソナルリアリティーと呼ばれるものなのだろう…
そこには、自身が知った能力の借入条件である相手の顔・真名・能力名・そして借入られる時間もしくわ回数の表記がされている。
能力を使う際に、目を瞑る必要や脳内で本を見ることなどする必要はないが、
事前に確認をしておかない場合、既に能力使用限度数に達しているか、
対象が死んでいて、本からまるで消しゴムで消したように、そのページは空白となる。
…そんなイメージだ
ガラスに囲まれた一室…
5人の白衣で身を纏った初老と椅子に座る一人の青年…そしてその青年の目の前に立つ一人の少女。
少女は右手で肩に触れると、左手をまるで本を開くような姿勢をとる
「はじめます………
スキル《教本》!
名前、ミライ・クロイツ
男性、年齢5歳、
身長125.4CМ、体重26.8CМ
血液型B-
族性は黒……人…なのですが、何か混ざり合ったような…分かりづらい曖昧な感じです。
能力名は…………わかりません
名がないのか、本人が認識していないのか…
能力者ではあるようですが、詳細記載が全くありません…」
「役立たずが……所詮実験で生まれた能力では、たかが知れていたかっ…」
「いえ、純正能力者による《異眼 (スキルアイズ)》でも同様の回答です…一体どうなっているのか…」
「彼女曰く、見えるのは無色透明……
そこに能力があるのは分かるのに、それがなんなのかわからないとのこと。
まあ、結局この魔力量では能力発動もできないので実質アンチホルダーではありますが……」
白衣の者達が各々好きなように言葉を交わしながら部屋を出ていく。
連れられて行く少女の視線がこちらに合う…
ペコリと頭を下げ、少女の姿は見えなくなった
「すごいねっ♪みんながみんな、アナタの能力を全く把握できないなんてっ!」
部屋に戻るなり、部屋で待っていた少女は興奮気味に話しかけてくる
あの時の………
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「足っ!」
初めての能力発動、そしてその姿を見られたことに少なからず戸惑っていると、その者は指摘する。
近付いてきて足を触られると鈍い痛みで、その状況を把握する。
「大丈夫、軽い火傷…あと少し裂かれてるだけ。
多分耐性がない状態で能力を使った代償だと思う」
少女は部屋にあったタオルを出血箇所に巻き付けた止血する。
「随分と手慣れているな…328号っ」
「フウっ!
私の名前はフウ!!
次からそう呼ぶことっ!!!」
「元々の名前か?
いやっ、確か施設で生まれたと聞くから名前はないはずだが……」
「そうっ!
でも名前が328号じゃ可愛くないでしょ?
だから勝手に自分で付けて名乗ってるいるのだっ!」
「そうか…しかしその名前は可愛いのか?
フウ………あー、検体番号を言語文字列と合わせたのか…」
「うえっ?すごっ……
えっ?よくわかったねっ!
人族の言語ナンバー32番目と8番目をとって【フウ】…!
気づいたのはアナタが初めてだよっ♪」
「ここじゃあ本を読む以外にできることがないからなっ…
ありがとう、もう平気だよっ!
…ところで328…いや、フウ…
さっきの光景を、君は…」
「…なんのことか分からないですね。
私が部屋に入ったら、アナタが怪我をしていたから応急処置をしただけ…
なのだっ!」
ニヒッと笑顔でフウは俺の顔を見た…
▽ ▽ ▽
「あの後すぐに、元々の能力者の少年に能力が戻ったことから、
俺の能力は’奪う’というより一時的に’借りる’能力なんだろう…
元々魔力が少なく分かり辛い上、誰かから能力を借りてなければ実際能力自体はないのと同じだ。
多分まともなやり方で能力を見ても、借りた能力をそのまま俺の能力と勘違いするだろう。
実際にいくつかの能力を使っているところでも見ない限り、
誰も俺の本当の能力は、わからないんじゃないか?
部屋のカメラも上からの撮影だから、少し浮いた程度じゃ気付かなかったみたいだし、
自然にある魔力を少し消費した程度だから、魔力探知もできなかったみたいだ。
運がいいのかどうなのか……」
「誰からも認知されないのに、能力自体は誰かの力がないと発動できない…
……めちゃくちゃカッコいいっ!!」
俺の長ったらしい見解を完全に無視して、
興奮気味にフウは言う。
「うわ、厨二心くすぐられてんじゃねえか…
すごい嫌な予感が……」
「世界に認知されない、世界に存在しない、世界とかけ離れた力。
世界と独立した能力…インディペンデンス(Independence)
逆に、世界にいる人々から借りないと能力が成立しない、世界との繋がりを最も必要とする矛盾した能力。
借りる(David)ことで世界と繋がる…間にできた架け橋のようなっ…!
それを掛け合わせた名前、能力名《借入Indabidens》ッ!!!」
「予想通りになったか…お前あれなっ…
自分の名前もそうだけど、何かしらの意味持たせたり文字ったり複雑にしたりするの好きすぎるだろ…」
「だって意味があった方がいいじゃない!
意味もなく存在して、誰の記憶にも残らず消えるなんて…なんか悲しいじゃない!!」
「それだと無駄に頭につけてるその花も、オシャレ以外になんか意味があったりするのか?」
「ふっふっふ、私の一番好きな花っ!
花言葉は調和、そして真心っ!!
私にピッタリの花だと思わない?」
「調和?真心?あれかっ、自分に足りないモノを補ってもらう的なそういう意味合いか?」
「足りない?補ってもらう?溢れかえってるでしょ!!!
こんな調和と真心に溢れた女の子いないでしょ!?」
そんな会話が少し楽しかった
他の検体達が見る、俺に対する視線に込められた想いの多くは”憎しみ”だった。
俺のせいで生まれ、俺のせいで実験を受けさせられ、俺のせいで死ぬ…
どうも覚醒の為の一つの材料として、その者に告げられるらしく、その憎悪は計り知れないものがあった。
まあ実際、嘘ではないし間違ってもいないから否定すらできなかった。
だからこそ、彼女の存在は新鮮で、貴重で、大切なモノへと変わっていっていた。
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