6-8【決着】
綺麗な花々とアスフォードでは考えられないような広大な自然に囲まれた”そこ”にアタシ達はいた。
「アハハッ!
こっちだよぉ~お兄さぁ~まっ♪」
「おいっ!前見て走らないと転ぶぞっ!」
「大丈夫大丈…キャッ!!!」
注意されたその直後、足元の窪みに足を取られ転ぶ。
その衝撃が私を襲…ってこなかった。
「ほらっ、言わんこっちゃない」
後ろを振り向くとアタシの服の背中部分をつまむような形で彼は立っていて、
アタシは空中をブランブランと右へ左へ浮遊していた。
「キャハハハハッ!!!もっともっとっ♪」
「……しょうがないなっ!」
ここはそう…
夢のような…
「だが直にそれもおしまいだ。
ティアラ…君の目覚めが近づいている。
そして多分、俺の終わりも…」
「…え?」
「そろそろ時間のようだな…」
気付くと周囲の光景は徐々に崩れ、その先には暗黒の空間が広がっていた。
「こ…これは…」?」
「…激痛と悪夢にうなされる君を見ていられなかった。
偶然とはいえ、自分の力を過信した俺のミスで傷ついた君を見て見ぬフリはできなかった。
夢に干渉する能力《夢想》」の力で君が願う夢の形を創り出していた。
本当は俺自身、接触するつもりはなかったんだが、
君が願う兄の理想像に、なぜか支王ミライの姿があった為、本体のコピー…疑似体として俺が生まれた」
「…え?……えっ?」
「要はティアラ…俺は君の夢の中だけの存在ってことだ。
俺は君の夢の管理を任された。
現実世界の君も、俺の本体が回復を手伝ったから、あとは君が目覚めるだけだ」
広がる暗黒空間は、更にその範囲を増し歪み始めた。
空間に亀裂が走り、世界が崩壊する予兆…
崩れる世界の中、自分以外の例外はなく、
兄と慕う支王ミライの姿もまた光の粒と化してゆく。
「俺は現魔王、支王ミライの能力で生まれた存在…
多分これは、《夢想》の維持ができない状況に陥った証拠…終わりが近いんだ。
能力の解除により、俺は支王ミライの元へ帰る。
本当は君が目覚めるその時まで、一緒にいてあげたかったけど…多分直に俺は彼女に倒される…」
「魔…おう…?」
そっと表情が見えないように顔を隠した後、
いつもの温かい手がアタシの頭をポンポンっと優しく置かれる。
「こんなこと言えた義理じゃない。
それでもティアラ…君と過ごした時間は楽しかったよ。
お前は忘れてしまうかもしれないけれど、俺は決して忘れない…」
景色がどんどんと歪み、周囲は漆黒へと塗りつぶされていく。
「魔王さん…に…兄さまあぁぁぁーーーーっ!!!!!」
「ティアラ…お前は…」
ブツンッ!!!
その瞬間、まるでテレビの電源が切れるように、ぶつりと意識が途切た。
「君は…俺の大事な妹だったよ」
▽ ▽ ▽
「…っ!!!」
目が開くとそこは真っ白な壁に囲まれた小部屋だった。
ベットに横たわる私の体にはいくつもの線のようなものつけられ、
テレビ画面にはその都度数字が変わる映像が流れていた。
「…ティアラ………?」
ガシャン!!!とガラスが割れる音が部屋に鳴り響く。
見ると口元を抑えたまだ女性がそこに立っていた。
「お母……様……?」
勢いのままに私は抱き締められる。
そしてその後、落ち着いてからか自身に何が起こったかを伝えられる。
「もう安心していいからっ!
今討伐隊に、あの有名な勇者支王ミクが加わった。
すぐにでも大魔王を倒して、お前の仇をとってくれるからね」
父が優しい声で私に告げる。
魔王さんを…お兄様を…倒す?
…倒すってどうするの?
討伐隊…それじゃあ……
…殺すの?
「や、やめてっ!!!
お兄s……魔王さんは良い人だよっ!!!」
父と母の会話に入るようにして、アタシは大声で魔王さんへの悪口を止めた。
「なっ…何を言ってるんだい?
ティアラをこんな目に合わせた悪い奴なんだよ?
討伐対象にされて当然なんだっ!!!」
「魔王さんのことよく知らないでヒドイこと言わないでっ!
魔王さんは悪い人じゃないもんっ!
魔王さんのせいかもしれないけど、ごめんなさいしてくれたもんっ!
頭なでなでしてくれたもんっっっ!!!」
ぶわっと、涙が溢れた。
会いたい…
会ってちゃんともう一度お話がしたい…
そう思った時には身体は勝手に動いていた。
しかし次の瞬間、床が目の前に現れ、ゴテンッと鈍い痛みが顔に広がる。
周りでは母の悲鳴と父の慌てる声が聞こえるような気がするけど、そんなこと気にしていられない…
「魔王さん…待ってて…今行くからっ…だから…」
窓に映る見たこともないお城へと届かない手をそっと伸ばしていた…
「魔王さん…死なないでええぇぇぇぇええ!!!!!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
カランカランッ
時が止まったかのような世界の中で何かが落ちる音が響き渡る
「やっぱり…できないのですよ…」
そう言ったミクの手から、剣がすり落ちていた。
「だって…ミクにとってお兄ちゃんは…」
それはフラッシュバックのように頭を過る…
「ぶっきらぼうで無愛想で…」
なつかしい、あの日々を…
「不器用でミクにいつも冷たくて…なのに」
そっと頭をなでられた…
「なのに…優しく…いつもミクを見守っててくれていて…」
あの時のぬくもりを…
「この世界の誰よりも平和な世界を願ってて…」
瞳から伝う一筋の雫がミライの頬に落ちる。
「そんなお兄ちゃんを…殺せるわけないのですよ。
だってお兄ちゃんは……ミクの大事な家族なのですからっ!!!」
抱きつくようにミクはミライの胸で泣き出した。
そっと右手がミクの頭に触れそうになる。
伝えてやりたい。
俺の本当の気持ちを…
俺の想いを…
今まで伝えらなかった全てを…
でも…
それはもう叶わない夢で……
「……隙ができたなっ!」
瞬間、ミライを抑えつけていたミクの身体に浮遊感が襲った。
一瞬のうちに目の前のミライの姿はその場から消えていた。
そんな異常に驚愕する暇もなく、背後から迫りくる殺気に反応し、振り返る。
《鬼門》のように亜空間を創り出し入る…という過程がなく、
視界に映し出される光景内から、指定した位置へと移動する瞬間移動能力《瞬身》により、
ミクに抑えられていた身体は、一瞬でその拘束を解き、ミクの上空へとその身を移動させていた。
その右手に、左手に突き刺さっていた一振り…星剣クローバーを握り締め…
ふと、ミクの視線の左端には二刀が一振り、星包ガーネットが映り込む。
それはまさに刹那といっていい時間であろう。
クローバーがミクの顔に向かい、振り降ろされる
ドーーーーン!!!と激しい轟音と衝撃で砂煙が巻き起こる。
巻き起こる砂塵が徐々に周囲へと散っていく…
「……どうして、反撃しなかった?
お前だったら、そこにあるガーネットでいくらでも対抗手段はあっただろう?」
「なんでですかね…わからないのです。
でもなんだか、お兄ちゃんはもう、これ以上ミクを傷つけないような…そんな気がしたのです。
お兄ちゃんの望んだこと…それは種族の垣根を超えた団結をもって、世界が一つになった力で自身を打ち負かせてくれること。
お兄ちゃんは本気だったけど、本気じゃなかった…
ミクの《全剣》を借り入れることもできたのにそれをしなかったのです!」
その瞳は揺らぐことなく、ミライの姿を映し出す
「ミクは思うのです。
さっき、お兄ちゃんは支王の名は『王を支配する者』だと言ったのです。
でもミクは違うのです。
支王の名は『王を支える者』の名…
だからミクは、いつでもどこでもずっとずっと、お兄ちゃんの支えになってあげたいのです。
お兄ちゃんが”本当にしたいこと”の手助けを…大魔”王”の支えになってあげたいのですよ。」
ふぅ~と瞳を閉じ、深く息を吐く
「まいったよ……俺の…負けだ……」
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