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《3章過去編》完全無欠のサイキョウ勇者の攻略法  作者: MeguriJun
2章【第5次種族間大戦】
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6-6【正体】


その攻防は凄まじい速さで行われた。

まるで時が止まったかのような錯覚に陥る。

1秒が10秒にも20秒にも感じる感覚…

そんな時には大抵戦いはすぐに終わる。

相手がその感覚についてこれないからだ。

相手が1秒の動きをする間にこちらが10秒の動きをするのだから当然と言えば当然。

そんな時間の概念を揺るがし兼ねない戦いがどれだけ続いているのだろう…


小太刀二刀による多方向攻撃を繰り出す。

ゼロの動きを見極めながら、常にその逆を突いた剣撃へ軌道を変え振り抜く。

その一撃一撃は周囲一帯の瓦礫や岩壁を吹き飛ばす衝撃を生み出す程だった。

…にも関わらず、それなのにそこまでしてもなお当らない。

ゼロは両手を駆使し、腕を叩きその軌道をずらし、体勢を崩させてからの一撃すらも足で弾くようにして斬撃の軌道をそらし、

振るう太刀筋に剣を重ねることで、軌道を書き換える。

その数、2秒程で10数撃を斬り出したにも関わらず、その全て掠ることなく空を裂いていった。

そして”無限砲剣インフィニティーペインにより地に突き刺さる剣を両手交互に握りながら振り抜く。

その一つ一つは脅威にはならないが、斬り裂いた次の瞬間にはその振り抜いた先に刺さる新たな剣を握り、振るい、それを繰り返す。

そこでできた僅かな隙に、柄を狙い、弾き、軌道を逸らしできた隙に打撃を叩き込んでくる。

そのダメージは少しずつながら確実に体力奪っていき、その攻防が5分と経つ頃、ついに肩で息をする程にダメージは蓄積されていた。


強い…強すぎる。

動き、技、能力を高次元に使った攻撃の組み立て方が、完全に自身を上回っている。

これ程強い敵には短いとはいえ、ミクの人生においても巡り会ったことがない。

そう…

"敵"には…

ダンッッッ!!!

踵落としにも似た足による一撃で斬撃の軌道を変えられたその反動で、ゼロは距離を取る。



「やっ!!!!!」



横一閃に全力の《全剣》を上空のゼロへと放つ。

それを目視で確認したかのように素早い反応で背を仰け反らせ避ける。

今ッ!!!

ミクから目を離したその隙をつき、左手に持った短剣を先程の斬撃に十字を描くように放つ。

あの体勢とこの軌道、速度ならよけられない…

そう確信する一撃。

しかしその斬撃が当たる瞬間、ゼロの身体は消え、斬撃は上空へと飛んで行く。

雲を斬り、天を裂き、星をも貫通させる一撃…

その世界最強と謳われた一撃すらも、ゼロには届かなかった。



「あなた相手に目を逸らすほど、余裕はないですよっ!」



声のする後ろへと振り向いた瞬間、凄まじい蹴りの一撃が腹部を襲う。

岩壁を2枚3枚と崩壊させ、5枚目にぶつかった辺りでようやく止まる。



「フフッ、”絶対に斬れる”!というのは戦いにおいて、絶対に有利になる!というわけではない。

 斬れることを前提にしてしまえば、対処法も戦い方もいくらでも存在する!

 良い例を見せてあげられているでしょうか?」


「ケホッケホッ…

 いったぁーーーあぁ!!!

 参ったのです…世界最強とか持ち上げられてここに向かわされましたけど、

 やっぱりミクより強い人がいると、その通り名がさすがに恥ずかしいものなのですよ」


「最強だろう…人間の中では…なっ。

 ただ、この世にはまだ上には上がいるという…ただそれだけのことだけです。」



ミクの攻撃など苦にもせず、受け避ける姿。

常にミクの前では余裕を崩さないその姿……



「そうですね、知っているのですよ。

 ただ、ミクの中ではミクより上は”ただ一人、ある人しかいない”…つもりで言ったのですがね。」



その瞬間、仮面越しとはいえ空気が変わったのを感じた。

今までの攻防で確信した。



「少しだけミクが思うあなたの能力仮説といきましょうか。

あなたが使った能力、体内電流の向上により発生する目に見えるほどの電流。触れた瞬間の異常な熱量。

 これは伝承にあり授業でも聞いたミクの父親、支王真の《超限オーバードライブ》…

 ですが現状、未だ止まない《大災害》と城を囲む異常な空流域…

 通常ではありえない複数能力を一度に複数使えるなんて、右を見ながら左と上を見る程に無理難題なのです。

 もしもそれを可能とするならただ一つ。

 あなたはどんなに色々な能力をいくつも使っていようとも、根本にはたった一つの能力を使っているに過ぎないということ…」



能力の核心…



「あなたの能力…それは……」




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




同時刻 カブレラ山脈


「能力を…他者から”借りる”能力…だと?」


上位スキルホルダーすらその環境と上級モンスターの出現の多さより寄り付かないこの場所で、

各種族の参謀及び各知識のスペシャリスト10数名を集めた大魔王対策会が急ごしらえに作られていた。

その中の仙族の一人が口にした一言が、まさにミクと同じく核心を突いていた。



「はいっ!大魔王ゼロ・クロイツは他の者達が使う数多のスキル、それ自体を借りて発動させることが可能なんです。

詳しく説明致します。」



ホワイトボードに図を描き、カンッとペンでボードを指した後、説明が続いた。



「大魔王ゼロ・クロイツの使う能力の不可思議な点は3つ。

まず、なぜ種類の異なる能力が使用可能なのかですが、言わずもがな…先程のを頭に置けば説明が不要ですね?

 借りる能力の数に上限さえなければいくつでも…

 いくらでも多種多様のスキル使用が可能となるでしょう。

 次になぜ長時間の使用に対しても魔力・仙力の枯渇がなく、尽きることなく力を発揮し続けられるのかですが、

 大魔王自身が使っているのはただ一つのスキル≪他の者からスキルを借りる≫その一点につきるのです。

 あれば説明がつきます。

 多分、何かしらの条件クリアで使用可能になった能力を、大魔王は自分の魔力を使い能力を使用して他者の能力を借ります。

 この時、大魔王が使う魔力はここまでなんです。

 後は借りた能力が行き場を失くし、自然に漂う魔力を媒体に発動。

 能力を発動した際、大魔王の周囲の魔力が極端に減っているのを魔力感知系が把握しているのでほぼ間違いないでしょう。

 あとは大魔王が止めるその時まで、条件か周囲の魔力が尽きるまでオートに効果を発揮させ続けているだけです。

 《空流エアロストリーム》が良い例ですが、あれは発動以降、大魔王は一切干渉していません。

 それは天候使いが雨を降らせた時、能力を解除し、勢いがおさまっても雨が止まないように…

 雲が散らないように…

 《空流エアロストリーム》もまた解除も干渉もしなければその場に残り続けるのです。

 自然に消えるその時まで…

 そして、元々の使用者からスキルを借りている状態にあるのであれば、元々の使用者本人が能力を発動できなかったことも道理、説明できます。

 借りられている以上その瞬間、元々の使用者本人は能力を持っていない状態にあるんですから…

 コピーではない大きな要因はそこにあります。

 そして3つ目に使用者本人を超える能力効果の発動も挙げた2点を踏まえれば説明が可能です。

 本来スキルを使用する上で気を付けなければならないのは魔力の枯渇です。

 戦闘途中でそれらが尽きてしまえば、能力使用は不可能となり、無能力者へと変わり果ててしまいます。

 それ以前に脳が制御装置として働き,本来の20%~30%の力しか出させないようにコントロールしてセーブしてしまうと言われています。

 つまり、本人が意識してなり無意識でなり、能力の使用時には自動でセーブがかかってしまうわけです。

 限界を計算しての能力の使用…

 我々からすれば当たり前過ぎて気にすらしたことがない程ですが、大魔王にはその当たり前が当てはまらない…

 枯渇・限界を考える必要のない、本人でないからリミッターもない大魔王ならば、常に能力の100%使用が可能でしょう。

 その為、元々の使用者本人を超える…

 いえ、元々使用者本来ができるであろう…しかしできない、100%フル状態での能力発動が可能なんです。

 極めれば他者から能力の10%だけ借りるなど調整すらできるかもしれない…その場合プルラルの名すら霞む、まさに究極の能力と言えます。」



静寂が部屋全体を包む。



「私の見解が正しいならば、現時点攻略不可能なほぼ敵なしの能力と言えます。

 以上が私が推測する大魔王ゼロ・クロイツの能力ですが…いかがでしょうか?」



その言葉と共にその場にいた者達は一様に今の話の内容を分析し、周囲と情報を交換し合い、検証をし始めた。

その光景を見て満足げにする仙族の青年に龍族の一人が問う。



「話は分かった。

 多分…いや、間違いなく、その仮説は当たっているだろうっ!

 だがしかし、そうなると更にわからなくなるのは奴の”正体”だ。

 今の話だと魔力値がそう高くなくとも使用が可能ということになる。

 それこそ我々が設定した値に達せない者ですらも大魔王になりうることになってしまうぞっ!」


「…それは…」



その場のざわつきがまた静かになる。

能力の解明には絶対の自信があったであろう仙族の青年も、説明をしていた時とは一転して口ごもり口調で…



「その点に関しましてはまだ明確な相手を割り出せてはおりません。

 ただ、先程の情報を踏まえ、検証していけば大魔王の正体の判明も時間の問題かと…」




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




「そう…そこまでは多分、解明されているのでしょうね…

 彼らだってバカの集まりじゃないのですよ。

 各種族の参謀格、頭の良い人達が集まり、尚且つあれだけ能力の使用を目認していれば、何かしらの情報からここまで辿りつける。

 解けない謎…という程でもないのです。

 でもここから先……

 そこまで分かっても……

 彼らはアナタが『誰か』という答えには、誰も辿り着けないと思うのです。

 この力の本当の肝は”ただ他者から能力を借りているだけ!”ということにあるのです。

 実際熱を発生させるわけでも水を操るわけでもない…

 クリアした条件分、借りた能力を周囲にある自然の魔力で具現化させているのです。

 そのため自身の消費する魔力はほぼ0に近いのです。

 魔力をほとんど持たない者でも可能……

 自然の魔力を魔力装や自身に魔力へ変換するといった生まれながらの特性を持ったミクだからこそ、気付けたこと…

 まあ、こんなのが無くてもミクなら気付けましたけどねっ!

 アナタを過少評価し、異端と罵って、能力値から低能力者と蔑んできた彼らでは、気付けるはずがない…

 ミク以外は…いえ、多分ミクだけしかわからないのです…

 そうなのですよね?

 ………お兄ちゃん…」



そこで時が止まる。

ミクも…そして、大魔王魔王も…



「フッ…フハハ『ハハハハハッ』」



途端、不敵な笑いがゼロから漏れる。

その笑い声は徐々に声を変えていく。

それは変声された声とは明らかに違う、聞き慣れた……

聞き慣れているはずなのに初めてとさえ思える『彼』の邪悪を孕んだ…そんな声が聞こえた。

そして、周囲の黒い靄が消え、右手は顔を隠す仮面へと伸ばし、そっと仮面は外された。

そこにはいつも見慣れた姿があった。



「…よく、それだけで気付いたなっ。

 認識誤認の能力の他にミク…お前対策の為の能力《偽声ライアーノーツも使ってみたんだがな。

 使用者の声質や声色を変える”だけ”の能力で悪意や殺意も幻惑でも催眠でもない無害効果ゆえに無効化できず、

 気付かれないと踏んでいたのだが…!

 しばらく離れていたことで、完全誤認を仕込む時間がなかったが…それがアダになるとは思わなかった。

 感謝するんだな、龍王に…!」


「それはもう、お兄ちゃんの息遣いのタイミングや発音発声の仕方、近くにいる時の匂いや空気感……でもわかったんですけどね。

 決め手はミクの剣撃を捌く手段や方法・足さばき・歩行術と戦闘戦術に距離の取り方や間合いの取り方などなど……

 隠そうとしていても戦闘途中、所々でその癖が出ていたのですよ。

 お兄ちゃんの一挙手一投足、つぶさに見て覚えてますからね!

 ほんの少し変えた程度じゃごまかされないのです!

あとはまあ、一番最初の初撃…上空からの一撃の時、お兄ちゃんはミクが剣を振り下ろす前から避けていたのです。

 ミクの能力や剣筋、特徴をよく知ってる人にしか、そんなことできるわけがないのです。

 そう考えれば、考えられる人はただ一人なのです。

 本気でごまかしたいならもう生まれ変わって、お兄ちゃんがお兄ちゃんでなくならない限り無理なのですよっ♪

 ……ただ一つお兄ちゃんの魔力値では能力を使用できないことがずっと疑問でした…

 能力自体が『借りる』ではなく『借りて使用する』までだった場合、

 借りているにも関わらず使えないという矛盾が生じるのです。

 だから、いくつかあるであろう条件の一つは周囲に魔力があること……」


「…ある少女曰く、世界に存在しない、世界とかけ離れた力。

 世界と独立した力、インディペンデンス(Independence)。

 逆に世界にいる人々から借りないと能力が成立しない、世界と繋がりを最も必要とする上記と矛盾した能力。

 借りる(debt)ことが世界と繋がる懸け橋になることから間に加えた当て字。

 能力名《借入インデビデンス

 まあ、子供が遊び半分で考えた名前だがな…

 条件さえ整えば全ての能力を使うことができるという意味では、全ての種族の血を引く俺らしい能力だろ?」


「……本当の兄妹では…ないのですね。」


「フフッ!

 あぁ、思い出してもらえりゃあ楽だが、俺が支王真を語る時は一度として俺の父親として話してはいなかったはずだぜ!」



思い返して気づく、そうだ!いつもお兄ちゃんが父さんを語る時、必ず『お前の父親』とハッキリ言っていた…



「始めから知ってたんですね…」


「ああっ!謎が一つ解けただろ?俺がどうしてお前を嫌いかっ!」


「ッ!!!」


「……で…だっ!そんな俺が言うのもどうかと思うが……ミク!

相手が俺だとわかったからどうなる?

 戦況は更に悪化したとも言えるぞ。何せ修行中において、この数年間俺から一本としてとったことがないんだからな…

 それにだ…お前は大魔王の正体が俺だと気付いていながら、なぜ俺に刃を向け続けていたんだ?」



ズドンッ!と空気が重くなるのを感じる。

今までにない程のプレッシャー

それは靄や仮面に隠されていたのではないかと思える程比較にならず、

異常な程の悪意を孕んだ威圧感にほんの数㎜、自身すらも気付かない少しの後ずさりをミライの眼は逃がさなかった。



「まあ、何も言わなかった俺にも少しは責任があると感じているんだよ。

 だから少しだけ教えてやろう…

 能力名は先ほどの通り《借入(インデビデンス)》。

 その名とお前の説明の通り…”他者の能力を借り入れる能力”だ。

 相手の能力そのもの100%を”借り入れる”ことがこの能力のポイントで、

 あとは周囲に漂う自然の魔力を媒介に、その100%をそのまま放出すれば、

 自身は借り入れるだけの魔力だけで他者の能力を使うことができるというわけだ。

 その数に上限はなく、条件さえクリアすればいくらでも…いくつでもストックし、いつでも使用が可能なのさ。」


「…何が最弱の低能力者ですか…最強じゃないですかっ!」


「人が蟻に対して本気で戦いを挑むと思うか?

 俺からすれば、世の中の全ての生き物は蟻んこのそれと変わらない。

 いつでも駆逐できる蟲同然。」


「……」


「龍・仙・魔、そして人…4族全ての血を受け継いだ俺だからこそ成し得ることができた能力。

 他者の能力を借り入れ、使用ができる力《借入インデビデンス》。

 全てのスキル・ギフトホルダーの能力が俺の力の糧となる。

 世界の頂点に立つにふさわしい力だと思わないか?」



ミライの高笑いが部屋中に響き渡る。



「俺達は正義の味方でも、全てを救える救世主でもない。

 誰かの為に誰かを殺せば、その者を取り巻く者達が殺した相手を殺すか返り討ちで殺される…。

 そして、それをまた繰り返す…

 この世界ではその無限に続くループに翻弄される。

 それだけではない。

 知らぬ未知の為に実験と評し、他者を傷つける者。

 快楽や欲求を満たす為だけに他者を殺し尽くす者。

 争いのない世界など絶対にありえない。

 ならどうすればいいのか…

 だったら一度、全てを消し去ってしまえばいい。全てを0に戻せばいい。」



静かに見つめるミクにスッと手を差し伸べる。



「俺と共に来い、ミクッ!

 この世界は終わっている…

 また新たに、世界を0から創り直そう!

 お前こそ俺が選んだイヴ…始まり一人にふさわしい!」」



その差し出される手へ向けた視線を、一度瞳を閉じることで外す。

そして再度開かれた瞳は、ミライの顔へと向けられた。



「ミクは戦うのですよ…お兄ちゃん…

支王ミクとしてじゃなく、勇者として…大魔王と……」


「ふっ…結局は最愛の兄より世界を取るか。

 お前も口先だけさ…

 世界を敵に回そうとも…なんて口上垂れながら、最後には俺を裏切る…

 まあ、それもいい。

 所詮人は自らの欲には勝てないもの…

 俺を倒して伝説なり英雄なりになればいい。

 ……倒せれば…なっ!」


「お兄ちゃんこそミクを侮らないでほしいのですよ。

 ミクにとって世界からの地位も名誉も伝説も…

 その全てに意味はないのです。

 ミクの答えは変わらないのです。

 ”お兄ちゃんのため”

 それがミクの全てなのです

 お兄ちゃん…ミクはお兄ちゃんの為に戦うと決めて今まで生きてきたのです。

 その想いは、今も何も変わらないのです。

 だからこそ、お兄ちゃんの為に戦うのです。

 その相手が例え…お兄ちゃんだったとしても…」



そんな矛盾だらけのミクに諦めたように溜息を吐き捨てる。



「俺のためと言いながら俺の敵に回るか、今も昔も訳の分からないガキだよ…

 もう結構だ!

 俺の前に立ちはだかるというなら、その意味に意味はない。

 まあいい。

 種を残すため子を孕める一人がいれば問題ない。

 獄炎の龍・仙帝の踊子・魔女王…もしくは人族の歌姫でもなっ…」


「……ミクがそれを見過ごすとでも?」


「…ククッ、ここで全てを終わらせよう

 寂しいがここでお別れにしよう…」



互いの瞳が互いを映し出す…



「いくぞ、ミク。

 いや、勇者 支王ミク!」


「いくのですよ、お兄ちゃん。

 いえ、支王ミライ…」



瞳が揺らぐ。

そして首を振り改めて前を向き…



「大魔王…ゼロ・クロイツッ!!!」



ダンッッッッ!!!!!!

その言葉が交わされたと同時にミライは宙へと飛び、ミクとの距離をとる。



「さっき俺は言ったな!

 お前に対して遠距離攻撃は自殺行為だと…

 だが、それはお前を知らない他の者達にとって…!という意味で、俺にはなんら意味がないということを教えやる。

 見せてやろう!

 お前に一度も見せたことのない本来の俺の戦い方!能力戦バトルをな」



ミクを指差すその先端が光る。

瞬時に察する

これは…まずいっ!!

『超高圧水流放出能力《水天(シャイニーブルー)》!』

指の差し示す位置からミクが身体をずらすと先程まで自分がいた後方部の壁に綺麗に穴が空いている。

水を圧縮して凄まじいスピードで放出するウォータージェット。



「遠距離斬撃も絶対斬撃も、お前だけの力ではないし、

 お前を視界に捕らえたまま遠距離から攻撃を加える手段なんて、俺にはいくらでもあるんだよ!」



その放出が止まぬまま横へ指を移動させ、水撃の軌道をミクへずらす。

それに反応し、剣を前方に立て構え、水天の水激を斬り裂くと同時に空へ飛び剣を構える。

それを確認すると、ミライは両の手の指で円を作りミクを囲う。



「すぐに終わらせてやる。

 『空中水素集束能力《水牢(アクアプラネット)》』」



宙へと飛んでいたミクの周囲を水の塊が覆う。



「がっ、ぶくくくくくっ……」



呼吸も身動きも取れない状況の中、脱出のため剣を握る右手に力を加えようとする…



「させるかっ!『自然元素掌握能力《五元(エレメントエレメント)》雷ヵ二巻・雷迎!』」



水の塊に捕らえられたミクに追撃が入る。

水により伝導率が上げられた雷撃がミクを襲う。

そして、両手を広げ雷水に襲われるミクへと視線を向ける。



「これで終わりだ。『絶対零度完全氷結能力《白庭(ホワイトガーデン)

 全てを氷層の中へ…”氷華封印”っ!!!』



ガチンッと甲高い音と共にミクの周囲は氷で覆われる



「はははははっ!誇らしいだろ?ミク!

 これがお前が信じてやまなかった俺の本当の力だ!!」



氷漬けになったミクに背を向け歩き出す。



「お前の恐ろしいところは、何より対応速度の早さだ。

 考えられてしまえばすぐに対処されてしまう。

 雷を含んだ氷の封印術。

 常に続く雷撃の苦痛で思考できないだろ?

 もがき苦しみながら封印が解けるのを待つんだな。

 その頃には全て終わっているさ!」



バキンッ!!!と破裂音がしたかと思うと、ミクの手元から亀裂が走ると握る剣の先端から地面へと光が走り、

そのまま氷の封印全体に亀裂が広がり、瞬く間に激しい音と共にミクを覆う全ての氷は音を立てて粉々に粉砕され崩れ去っていった。

そして、



「驚いたなっ、あらかじめ手元周囲の空間を斬り裂いておいて氷華封印を破壊したか…

 元々最悪の事態を想定して、お前を封印することを視野においた封印術だったんだがなっ…」



息を切らすミクを尻目に、封印を解かれても尚、ミライは余裕の表情を浮かべていた。



「フフッ、だがどうする?ジリ貧だぞ、ミクっ!

 先程までは『魅せる』意味を込めてわざと能力戦主体で戦っていたが、

これからは能力ありの肉弾戦主体にする…

 知っての通り、今まで通りでは俺に勝つことは到底叶わないぞっ!

 諦めて俺の元にくれば、先程の大口は聞かなかったことにしてやるぞ?」


「そうですね…

 今までですらこちらが押されていたのに、本来の戦い方をされたらミクに勝ち目はなくなるのです。

 でも、未来を掴む手と未来に進む足があるのなら、それはもう諦める言い訳にはできないのですよ。

 だからミクは、お兄ちゃんも知らない100%を超えたその先…本当の全力で挑ませてもらうのですっ!!!」



身に着けるマントのカフスを外し、投げ捨てる

背中に垂れ下がる紐を引き抜くとカチャカチャと何かが外れる音がする。

と共にミクはその場で右足を軸に凄まじい勢いで横に一回転する。

巻き上がる砂煙が収まると、そこには両手個々の指に挟む計8本の短剣を握り締めたミクの姿があった。



「……お前の能力をより詳細に言うなら、【手に触れている斬ることのできる物に対して、絶対斬撃の力を付与する力】。

 つまり、手に握られているなら、それがしっかり握られていようが、指で挟み込んでいるだけだろうが関係ないということか」


「思案思考を重ねた結果、危険すぎて一度しか試すことすらできなかったミクの全力のスタイルなのです」



カチャリ…と鉄同士がぶつかり合う音がする



「いくのですっ!

 大魔王…ゼロ・クロイツッ!!!」



【※大切なお願い】


少しでも




「面白い!」


「続きが気になる!」


「応援してあげてもいいかな」


「更新がんばって!」




と思ってくださった方、応援を是非お願いします(*- -)(*_ _)ペコリ


応援は簡単、たった2、3秒で終わります!




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どうか皆様の数秒を、私に分けてください!




皆様のそのヒトポチでモチベーションが爆上がりします☆




何卒応援よろしくお願いします!




>すでに☆☆☆☆☆ボタンを押してくださっている読者様


 応援ありがとうございます!感謝してもしきれません<m(__)m>


 今後とも面白い話を作っていきますので、楽しんでいってください!



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