6-2【被害】
アスフォードより南東・カブレラ山脈
「以上が、大魔王が現れてより開戦までの流れです。
続けて、被害状況の報告を致します。
統合都市アスフォードは王宮から王下町外壁までのそのほとんどが全壊。
修繕は極めて困難な状態です。
被害者は各王を含め、重症者”6名”。
軽傷者286名…死者は0、被害状況を見てもこれは奇跡的な数値で……」
「バカを言うなっ!!!
龍王を筆頭に最強クラスの王族が軒並み倒れているのだぞっ…
これほどの被害……大戦時代でも記録にないわっ!!!」
「不思議なのは、怪我人のほとんどが逃げ遅れですが、
隕石落下地点に残っていた人々は、ぶつかる間際に外へ引き寄せられる感覚があったということです。
複数人が同じ報告をしているとのこと…
そして、隕石発生以前から避難を促していたフードを被った不可思議な少年の情報…」
「どうせ隕石直撃の爆風によるものだろっ、それよりも報告を続けろっ!」
「はいっ!
更に大魔王が提示により壊滅的被害にあった国は現在、
初日アスフォードに続き、砂漠大国オルセリカ、機械国クレステラス、戦乱の国アガルタイシャ。
事前の情報があった為、人害はないものの、国自体は立て直しが不可能なほどの壊滅状態です。
続きまして、これらの被害を引き起こした元凶の大魔王についてです。
確認した所、魔王クロノ・クロイツ様の死亡はほぼ確定。
ただ下位から上位、上層部の魔族に確認を取りましたが、その誰もがゼロの存在を知らないとのことでした。
また、ゼロと名乗る大魔王が使用した能力は現段階において確認済みが6つ。
まず大会やイベントなどで司会を務めるなど、興行活動に大きく貢献している人族の少女、紺野茜の映写能力《鏡映》。
空中への浮遊及び、龍王グレンノア様を大地へと叩き落とした仙族屈指の超攻撃型能力。
仙王側近クリエラ様の重力能力《威圧》。
太古より存在する幻、そのうちの1体にして死四龍を凌ぐ脅威。
ブラックホールとホワイトホールを司る世界が与えた頂点の恩恵……
【王蛇:シャハル・メルト】の世界唯一のダブルギフト《神無月》と《白輝星》
突如アスフォードに出現した大魔王がいる魔城で、今尚周囲に甚大な被害を出し続ける城を守る鉄壁の障壁。
圧縮された暴風が、時空断層となって驚異的な破壊力と、何者も寄せ付けない絶対の壁を生み出す自然災害の一種。
”風”限定とすれば、アテナ様すらも凌駕し大戦時、
飛空する龍族に多大な被害を及ぼし、苦しめたとされる仙王ユリクス・リーフトレア様の風圧系最強能力《空流》。
無から有を生み出すとされる無二の能力。
歴代の魔王を遥かに上回り、最速で王の座を我が物とし、崇められた前魔王クロノ・クロイツの無機創生能力《想生》
また、それ以外でもフィオネス様の探知能力にも引っかからず、王宮内魔王の席に突如として現れた瞬間移動能力。
まだ未確認ですが、これ以外の能力も使用可能の恐れが……」
「ふざけているっ!!!
なんなんだ、この能力はっ!?
種類も系統もめちゃくちゃ…ダブルホルダーの前魔王以上じゃないかっ!?」
「<能力>だけでな<恩恵>まで……
これだけ関係性のない力を使用した辺り、複合能力ではなく複数能力…
多種多様性を考えたらマルチ……というよりコピー能力に近い力かもしれませんね。
能力をコピーする能力…ノーリスクで発動が可能だとしたらこれほどの力はありませんよ」
「しかも王城に丸一日以上攻撃を続けているが、解除される気配がせんっ!
なんなんだコイツは?」
机を囲う人々の様子を見渡した後、仙族の青年は報告を続ける。
「本日29の日現在で大魔王が提示した期限まであと2日と半日。
この4日強、アスフォードに突如現れた魔王城の周囲は《空流》と思われる能力により発生している《空流》の絶対防御に加え、
周囲5キロ圏内は気圧の異常低下により近づくことすら困難とされております。
現在をしても様々な攻撃を加え続け様子を見続けていますが、能力解除・魔力の枯渇などといった状況は見られません。
どんな手段を用いてか…どんな手を使ってなのか皆目検討が付かず、全てが謎とされ定かではありません。
討伐ランクはSSランク。
種族絶滅の危機のある極めて危険な状況です」
「襲撃箇所は分かっているんだ!
無理に《空流》の解除を行うのでなく、その箇所で迎撃したらどうだ?」
「無理言わないで下さい、準備が間に合いません。
それに瞬間移動系の能力を持っているらしく、
距離の概念を無視して襲撃を行うので我々では到着前に全てが終わっています」
「くそっ…どうしても後手に回ってしまっている…」
首都アスフォードが壊滅してすぐ、この《大魔王対策議会》が立ち上げられた。
その目的は2つ。
1つ目は種族間トップとそれに次ぐ最高位能力者をアスフォード崩壊と共に失ったことによるまとめ役不在の穴埋めである。
特にその強さとカリスマ性を如何なく発揮していた龍王グレンノアの敗北は龍族のみならず、全種族に凄まじい衝撃を与えた。
慌てふためき戸惑う群衆の中、混乱を治めまとめる者達。
元より上位の地位を有していた者達。
そして、個々の種族において大戦時、作戦指揮などを任されていた参謀者達によって構成された。
そしてもう1つは、その全ての元凶である大魔王討伐である。
その会談が今まさに行われている最中だった。
「ほっ…報告しますっ!!!」
ドンッ!と、沈黙が支配する会議場内を勢いよく扉が開かれ、その先から一人の青年が慌てた様子で入ってきた。
「馬鹿者っ!!
会議中だぞ、場をわきまえよ!!!」
「し、失礼致しました。し、しかし急を要する大変な事態が起こっておりまして……」
その青ざめた表情を見て、只事ではない状況を察した一人が場を治める。
「報告を続けなさい」
「は、はいっ!只今伝令が入りまして…
本日大魔王による壊滅箇所はアルベノ山脈。
その壊滅対象内に、あの古代都市アースが含まれておりました」
「古代都市…まさかっ!!?」
ーーバンッ!!!と両手で机を叩き、ガタンッ!と椅子が倒れる。
同時にグラスから飲み物がテーブルクロスに零れる。
皆の視線が一点に集まると、そこには一人の老者が立ち上がり、絶句していた。
「はいっ!
古代都市全域を使った封印術で眠りについていた、
終わりと始まりを告げるとされる伝説の原神龍、エンドレスルーツが目覚めました!」
「なっ…なんてことをしてくれたんだっ!!!」
ドンッ!と叩く机が真っ二つに破壊される。
周囲でも慌てる龍族を見て一人の人族が問い掛ける。
「原神龍…話では聞いたことがありますが……まさか?
あれは伝記で記されている伝説…
空想上のただの作り話であり、子供に聞かせるおとぎ話の類では……」
「実在するんだっ!!!
龍族の祖・邂逅龍エンドレスルーツ…
世界を終わらせ始まりへと繋げる…終わりと始まりを繰り返し巡り合わせることからその名がついている歴史史上最恐最悪の存在だ。
その名の通り世界を終わらせる龍で自然界の全てを司るギフト《聖母神》を有し、
天変地異を呼び、ある時は世界を海で沈め、またある時は大噴火を起こし、全てを失った世界で新たな大地を創り出したとされている。
伝説では神が古代の地へと封印したとされ、地脈封印と空間封印の上から更に長い眠りへとつかせ目覚めさせない為に時間封印。
そして、その後我々でその地が見つからないように空間結界で覆い隠すなど、
何重にもわたり封印と結界を施した上に【幻獣:銀鷲イーブル・ジュピス】の監視下にあったはずなのに…」
「封印を守る為、迎撃に入った【幻獣:銀鷲】は突如発生した漆黒の空間に呑まれ消失。
生死は不明でして…」
歯を食いしばりワナワナと震える。
「元々種族間大戦の発端も打ち倒すべき相手、その意見の食い違いから始まったものです。
我々が敵視し、全勢力をもって倒すべき相手と挙げた存在が、この邂逅龍です。
それほどまでに危険な存在なんです」
「これはもう、種族絶滅どうこうの話ではないぞっ!
邂逅龍の危険度は大魔王を遥かに上回る。
今すぐ強力な能力者と封印術の持つスキルホルダー、そして龍族を総動員させて…」
「申し訳ありませんが割り込みますっ!
報告にはまだ続きがございまして…」
身体を震わせ、先程以上に青ざめた表情で報告者の青年は口を開く。
「邂逅龍復活の際、上空にて能力発動中の大魔王と接触…
対峙したのは一瞬で、次の瞬間には決着がついていたとのことです。」
「はぁ?決着?何を言って……」
「…邂逅龍は上下に身体を引き裂かれ、下部は青い炎を帯び燃えながら消失、
上部は首だけを残して空間にできた歪みに飲まれ時空の彼方へと消え、
隣国リセイラに全長15mもの大きさの、残された頭部が投下されております。
邂逅龍エンドレスルーツの死亡を確認……討伐されておりますっ!」
その言葉を聞き、先程激昂し立ち上がった龍族の老者はフラフラと腰から崩れ落ちる。
「バ…バカな…
伝説の祖龍だぞ?龍王グレンノア様を超える唯一の存在にして世界神話にすら語られ恐れられ、
幾度となく世界の創造と破壊を繰り返した神の代行たる存在を…たかが魔族一匹に…」
「これはもはや個種族で戦っても勝ち目がありません。
全種族総出で作戦を組み直して…」
「こと大戦において我々誇り高き龍族が、お前ら他種族と手を組めと言うのか?」
「世界全土の危機に種族がどうの誇りがどうのと言っている場合ではないでしょう。
私も親を龍族に殺されています。
そんな私を私情を挟まず客観的に物事を見れるからと、この役職を頂きました。
それこそ今、そんな私情的な考えは捨てるべきでしょう?」
「グッ…だが実際どうする?
手を組んだところで奴を倒せるビジョンが浮かばん……」
「…支王ミクを……呼び戻すしかない。」
参謀たる龍族の一言に他の龍族の表情が凍る。
「バカなっ!
よりにもよって人族の……しかもあの勇者まがいの小娘に助けを乞うというのか?
それでなくとも闇龍との一戦は両者の討伐を視野に入れた作戦だったというのに…
何よりここからダークホールのあるエアノスミカまでの距離は最短でも7日以上はかかるんだぞっ!
間に合うわけが……」
「しかし、それ以外に手段がありません!
龍王様が倒されてしまった以上、仙王を超える《空流》の暴風を突破できる者はいません。
ましてや相手は更なる力を持っているかもしれない未知なる存在…
でしたら測定不能、我々の想像を遥かに上回り、龍王様より”脅威”と認識された勇者に……
我々の命運を委ねる以外に手段はないかと…」
皆が黙る。
それは、他種族どころか人族を含めた全ての種族から危険視扱いされた支王ミクの帰還…
現状、兄である支王ミライ以外、誰一人としてその手綱を握ることが許されない…
どころか、自分達に害があると判断した時点から種族関係なく、力でねじ伏せる強行。
故に龍王の采配に種族全て、なんの異論ものなくこの作戦は行われた。
ただ、各種族の王達が敗れた以上、次に考えられる世界が誇る最大戦力の投入は必須…
その時、1人の男が肩を借り、扉から会議室へと入る
「…今すぐ緊急通信を繋げろっ!」
「あっ…貴方様はっ!?」
「通信先は…ダークホール!
闇龍討伐部隊に…だっ!」
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