6-1【全てを斬る少女】
「ミクちゃーん!闇龍見つかったらしいですよぉ!」
「んぁ?無理なのですぅ~
お兄ちゃん成分が足りないから動けないのですだぁ~」
だらけきった勇者の姿にハァ~と溜息をつく。
確かに意にそぐわないクエストとはいえ、他のメンバーの命に関わる現状
さすがに死四龍相手に彼等だけでは荷が重すぎる…
仕方ない!とそっとミクの耳元で囁く
「早く倒せばその分、お兄さんと早く会えますよぉー!
それに今ならそっと、私がお兄さんにミクちゃんの頑張りを教えちゃおうかなぁ~?」
ガバッと立ち上がる
ポキポキッと首を鳴らしながら武器を握り締める
「ちょっとだけ…行ってくるのですよ!」
▽ ▽ ▽
ズドォォォオオオオンッ!
漆黒を纏った巨大な龍が両手足を大地へとつけ倒れ込む。
全身は切り傷に覆われ、絶えず流れる鮮血は黒光りする龍鱗を怪しく染め上げていた。
S級クエスト
A級を超える、表沙汰にできないクエストが世界に存在し、別名を”闇クエスト”と呼ばれる。
個と組織に対してに分かれており、ここでは個に対しての表記となるが、
たった一人の個においても、良いも悪いも世界への影響が計り知れず、
A級が国から出される指定クエストならば、S級は世界が指定したクエストと言って過言ではない。
そんな一般の生徒や団体には、参加どころか情報提示すらされない超上級クエストは世界に16存在している。
その数を聞くと多く感じるかもしれないが、内容は大きく分けて3つ。
王の名を冠する魔と仙の頂点2人。
世界の理を司る10匹の幻。
そして龍王に勝るとも劣らない圧倒的な力で世界を崩壊寸前まで追い込んだ4体の龍、死四龍。
その討伐クエストである。
ここで多くは語らないが、猛威を振るう死四龍率いる龍王の5体の龍に対し、先代の魔王・仙王とその直属の配下。
そして、幻獣を含む計400程の能力所有者と2万を超える軍勢がぶつかり、甚大な被害を要し、
ようやくその進軍を止め、引き分けにまでこぎつけたとされる程の実力の持ち主達である。
世界を震撼させた4体は、その一体一体が一夜にして国を滅ぼす程の力を有していた。
龍王の命の元、破壊の限りを尽くした4体は勇者・支王真の接触の後、条約を結んだ龍王に対し、
ある者は今尚、その忠義を欠くことなく従い、またある者は反旗を翻し、
我頂点に立たんとせんが如く、王の命を狙う脅威と化していた。
その死四龍の一体、闇龍アルデウスは後者である。
6年前の大戦時、そして大戦後、彼が通った大地は腐敗し、そこに住む者は生気を失った生ける屍と化し、二度と動くことはなかったという。
後日その土地を訪れた研究員は語る。
「人々は悲痛と絶望の中、絶命していた。
それは人に限らず生きとし生ける全てに及び、草花や木々、大地といった生命全てが対象になっている。
ここを通った者はまさに、世界の全てを根絶やしにする存在だ」
まるで魂を抜き取られたような状態だったことが故に、別名【闇を従える深淵・破魂龍】と呼ばれていた。
そんな皆が皆、誰もが恐れおののく死四龍を戦闘により、
地形が変わり果てた大地の一番高い位置より見下ろす形で、少女はその場に立っていた。
「なぜだ?ワシの身体は闇と同化して実態がなかったのだぞっ!
ただの斬撃を飛ばす程度の能力で斬られるはずが……」
「残念なのですが、ただの斬撃じゃないのですよ。
先程からの攻撃も、魔力ののった斬撃がその魔力が尽きるまで”空間を斬り裂き続けている”だけなのです。
それが斬撃が飛んでいくように見えるだけ……
貴方が斬られたのも、斬り裂かれる空間内にいたので、そのオマケで斬られたに過ぎないのですよ」
「空間を斬り裂く能力……空間系を操るレアスキルの一種か!?」
「それもまた本質とは少し違うのですよ。
空間を斬るのはあくまで副産物…技の一つなのです。
ミクの能力…それは”世界の全てを斬り裂く”能力。
その対象に限定はなく、生物から無生物・無機物、水からダイヤモンド…
空間も例外ではなく、加えてさっきも言った通り、魔力量によって空間を”斬り裂き続ける”ことが可能で、
斬撃が飛んでいるように見えるのは単に空間が加えた魔力量の分だけ斬り裂き続けているだけなのです。
闇そのものも空間の一種で世界の一端…
能力効果範囲内なのですよ。」
「バッ…バカな!!?
そんな能力が存在するなど…
それに龍族のギフトは深淵や煉獄…この世界ではない裏世界の力を呼び寄せた力のはずだ!」
「何を言っているのですか?
昔から…そして今も含めて能力をこの世界に現界・召喚して発動しているじゃないですか?
世界の人々も認知されている時点で、この世界に存在し、ミクの能力の対象範囲内なのですよ」
苦虫をかじるかのように歯軋りを立て、勇者を睨みつける。
それは屈辱以外の何ものでもなかった。
たかが人族の…それも10を少し超えた程度の少女を相手に手も足も出ない状況…
しかし、その口元がニヤリと不敵な笑みへと変わる
気付けばミクの視界に黒い靄がかかる。
それは、周囲一帯に拡がったのは濃厚な暗黒の霧。
憎悪や怨嗟、闇が形となった瘴気が呑み込むように空間を侵食していく。
「…何ですか?これは…?」
「少し気付くのが遅かったな、お前はオレの術中にハマっている。
お前を倒す手段など、他にもあるのだよっ!
永劫の闇に眠るがいい…≪テラー≫!!!」
バツンッ!!!とまるで急な停電に襲われたかのように周囲が暗闇に包まれる。
月や星の光もない。
誰かがいる気配もない。
振るう剣も何かを斬った手応えがない。
空間すらも斬れない、先程までとは別の異様の力。
ふとその時、突如背後に人の気配を感じ振り返る。
「…誰ですか?」
「み…ミクッ………」
そこには、血だらけで足を引きずる最愛の兄の姿があった。
偽物…と考えるも、その見た目から動き、匂いや雰囲気、感じる全てがミライその者だと気付く。
「お兄ちゃん……どうしたのですかっ?」
「や…闇龍の強襲が…あ…った…
俺は…お前を…誘き出す……ために……」
その次の瞬間、ミライの身体が斬られたかのように裂かれ血を噴き出し倒れる。
ミクの絶望の号哭が辺り一面へと響きわt……
バリンッッッッンン!!!
世界が弾け、今まで見ていた暗黒の景色の全てが吹き飛び、その先の新たな景色がその場に広がる。
振り抜かれた一閃が、その対象を大きく斬り裂いていく。
「バッ…バカなっ……
物理干渉のできない完全精神攻撃型封印術”幻影封印”を…
直接記憶から再現した幻……蝕む術だぞっ!?
本物と認識した深層で尚、それを拒絶する強靭な精神を…こんな年端もいかぬガキがどうして持ち合わせているっ!?」
「大したことではないのですよ。
精神干渉型は基本、身体に流れる魔力を乱すことで電気信号にも干渉して効果を発揮する。
でしたら幻だと分かった時点で、自然から取り込む魔力の量を強制的に増やして無理矢理循環させ、
魔力と電気信号を正常戻してしまえばいいのですよ。
それに…」
歩を進め、地へ這いつくばる闇龍の頭部付近に立つと見下すような形でミクは言った。
「お兄ちゃんの幻影を見せたのは正解でしたが、内容がよくありませんでしたね。
お兄ちゃんが負けるなんて想像できないし、ありえないのですよ。
幻影を見せるなら、もっと騙せるありえる幻を見せるべきでしたね」
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