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《3章過去編》完全無欠のサイキョウ勇者の攻略法  作者: MeguriJun
2章【第5次種族間大戦】
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5-4【思い出のあの時のままで・・・】

十二の月23の日



いつものように子供達と遊んでいるが、その子供達は心ここにあらず…

視線は一点の部屋のドアに向けられていた。



「チエちゃん…出て来ないね……」



今朝どころか、昨日の夕方部屋に籠って以降、一度も顔を見せないらしい。

子供達が心配する中、ファムと目が合う。

その視線はどこか冷たく「ほら、見たことか」と言わんばかりの表情でこちらを見ていた。

「はあ~~~~」と深く溜息をつく。



「みんなはここにいてくれ…

 俺が様子を見てくる」



そういうと扉のノブを握る

小生意気にも鍵がかかっているようだが、

そんなもの物ともせず電気を流し込むと、カチャリと鍵は横から縦へと向きを変える。

開けたドアのすぐ横にある電灯スイッチをONにすると、

先程まで闇に閉ざされていた部屋は昼間のような明るさを一気に取り戻す。

奥ではベットの上で、なぜか服を抱え体育座りをするチエの姿があった。

突如の出来事に驚きを隠しきれないチエへと近付くと、その視線をチエへと合わせる。



「どうやって入ってきたのっ?」


「…空いてたから普通に入ってきただけだよ」


「……他の子達が朝から入ってこようとして、入って来れなかったんですが?」


「みんながガチャガチャやるから、鍵が緩んだんだろう…

 建付けも悪いし古いからな…仕方ない」



冗談と分かりつつ笑みを向けると、チエはクスクスと笑うと、スッと両膝を抱える腕に力がこもる。



「父と母はあの力を見て、私を捨てた…」


「……そうか…寂しい思いをしたんだな」


「多額の寄付がされたの…だから施設はこの力を見せるな!って…」


「……まあ、方針上、そりゃそうだな」


「怖く…ないんですか?

 あんな力…間近で見て……」


「怖い?あの程度で?

 俺をナメるなっ…

 どれだけの時間、化け物みたいな妹と一緒にいると思っているんだ。

 アイツに比べれば、チエの能力なんて赤子に毛が生えた程度のもんだ」



チエの頭にゆっくりと手を置く。



「俺はさ、区分はされてはいるけれど、恩恵と能力は同じものだと思ってる。

 違いがあるとすれば、それが星からの恩恵か個人からの恩恵かの、そのスケールの大きさくらいなもの…

 ゆっくりと自分のものにしていけばいい。

 この世界で生きる為に、親がお前にくれた贈り物だ…大事にしてやればいい

 まあその間、できる限り、俺が傍にいてやる。

 一応、能力師事の前歴もあるからな…」



よしよしと頭を撫でると、触れた頭の箇所以外、身体全体がスパークを伴い黄色く輝く。

そして、バッと立ち上がると部屋から駆け出し出て行ってしまった。

元々の目的自体は達成できたが…果たしてこれは成功なのだろうか?

などと頭を掻きながら部屋を出ると、その前では子供達が集まり待っていた。



「なんか泣き出しそうな、恥ずかしそうな、嬉しそうな…

 よく分からない表情で走り去っていきましたけど、何かありました?」


「ん?少しだけな…

 アドバイスと言うかなんというか……

 まあ、自分をしっかり持った聡明な彼女なら分かってくれるだろう」



その言葉を聞いて子供達の顔は、ニコニコとした表情へと変わる。



「さすがチエちゃんのこと、よく分かってますねっ!

 クエストをお願いして正解でしたっ♪」



その言葉に違和感を感じ聞き返す



「ん?クエストを出したのは施設担当で、

 内容は年末の忙しい期間、お前達の相手をする…じゃないのか?」


「…あ~、ん~~~、間違ってはいないんですけどね……」



口を滑らせたリリスは『しまった』という顔をしながら姉のイチゴの後ろに隠れる。

『まったく…』と頭を掻きながらイチゴが一歩前へ出る。



「依頼内容は間違っていないんだけど、少し補足があって…

 兄さんが来てくれれば、チエが元気になってくれるかな~と思って…

 ちょっとした別クエストと言うか、裏クエストと言うか…」


「内容はまあ理解したけど、だとするとなんで俺なんだ?

 わざわざ個人指名でクエストを出してるだろ?」


「指名クエストを先生にお願いしたのはリリス達だけど、

 お兄さんのことを教えてくれたのはチエ姉なんだよっ!」



リリスが後ろで隠れながら、クエストの経緯を話すが更に分からなくなった



「?話が見えないんだが、どういうことだ?

 元々チエが俺のことを知っていて、みんなにそのことを話していて、

 元気がないチエを気遣って、みんなが指名クエストで俺を呼んだ…

 でいいのか?」


「うんっ、そうだよっ!その通りだよっ!!わかってるじゃない!!!

 ……でもあまり納得してなさそうだけど…なにか問題でも?」


「問題はないが腑に落ちない。

 話だと、チエは俺のことを以前から知っていて話をしていたんだろ?

なんとなく好意を寄せてくれているみたいだけど、

 会った記憶はないし、クエストで会っていたとしても、他に滅茶苦茶優秀な奴等が何人もいるギルドだぞ。

 わざわざ俺なんて…」



その言葉に子供達全員がポカンとした表情を浮かべる。

そのうち、一人の少女:モミジが冷めた目で俺を見つめ問う



「あれっ?………もしかして……気付いてないの?」


「……なんのことだ?」



口をあんぐり開けた子供達は互いに目を合わせると、そそくさと集まり小さな声で話し合いを始める。

断片的にだが「鈍い」だとか「話していいのか?」「それじゃあ意味がない」などと聞こえる度にチラチラと皆がこちらを見てくる。

何も悪いことをしてないのに責められてる…そんな居心地の悪さを感じ、顔が渋る。

やがて話がまとまったのか、代表して少女:リーブが俺に近付いてくる



「あの~、本当は私達から言うべきではないと思うんですけど…

 チエちゃんの性格的に、何も伝えずにこのまま終わっちゃいそうだし、

 ミライさんは…その……鈍感というか…気付きそうにないというか……

 アレなので私達から伝えちゃいますけど…」



物凄く気を使われた言い方でそこまで言うと、

モゾモゾと身体を捩らせながら、顔を赤くして彼女は言う



「ミライさんはチエちゃんの初恋の相手なんです…

 ずっとずっと前から……」




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




日もそこそこに暮れ始めた頃、時間があれば立ち寄っていたその場所に少女はいた。

一人ベンチに座る少女の横に青年は立つ



「みんなの言った通り……ビンゴだったな」



そこはとある公園

町の東にポツリとある、賑わう町とは反対に、木々に囲まれた静かな空間にある、とある建物の横に広がる公園。



「そういえばこの辺だったか…

 初めて会った場所は…

 懐かしいなぁ」


「……聞いたんですか?

 ……みんな、お節介なんだから……」


「そう言ってやるなっ…

 全面的に俺が悪い。

 というかお前も悪い…

 変わりすぎだっ!

 面影がない程に可愛くなりやがって…」



ボンッと破裂したかのように顔を真っ赤にし、チエは更に深く下を向く。

瞬間、チエの周囲全体を雷撃が覆うが、そっとバレないように自身の能力で抑えつける。

そんな互いの行動に自然と笑みが零れる



「改めて……久しぶりだなっ、本好き少女っ!

 それともデカシャツ幼女の方がいいのか?」


「……怒りますよっ?

 今から思えば、かなり恥ずかしい出会い方しちゃってるんですから…

 その辺りの記憶はボカしておきたいんですっ!」


「まあ、いきなり脱ぎ出した時には俺も焦ったがな…

 施設に着いた時に、何か違和感というか既視感というか…

 懐かしい感じがしていたんだが…

 カレンや他の小さい子供達が着ていた服は、あの時あげた服だったんだな…」


「大切な人からもらった大事な服を、おいそれと捨てられなかったんですよっ」



ハハッと冷めた笑いと共に、サーと血の気が引く

ミクが悪かったとはいえ、あの時の彼女の説教の重みが今になって分かることになるとは…

スッとチエは立ち上がると、後ろに手を組み、一歩二歩とゆっくり前へと歩く



「あれから度々、あの図書館には行ってたんですよ。

 でも一度も貴方には会えなくて…

 時々会う館長さんに、よく昔の話を聞かせてもらってました。」


「あの館長からの話か…

 それこそ俺の中でボカしておきたい過去の記憶なんだがな…」


「そうですね、色々話してくれました。

 図書館の権利問題解決の件や、妹さんとの話…

 ある日を境にあまり足を運ばなくなったこと…」


「………」


「ミライお兄さんが、アスフォードの学園にいるのを知ったのは偶然だったんです。

 元々みんなには話していて、そのうちの一人がこの人がそうじゃないか?って…

 驚きました…

 能力者を育てる学園で唯一、覚醒していながら能力が使えないアンダーホルダーがその人だったなんて…」


「……失望したか?」


「反対です…尊敬しました。

 能力学園で能力が使えないにも関わらず、同等以上の成果を上げて、

 学園最強の妹さんから熱い信頼をおいて、

 いくつものクエストを高水準で達成する高ランクギルドのリーダー…

 知らないかもしれないですけど、地方新聞なんかで取り上げられているんですよぉ?

 全種族が集まる学園自体、今でも異例で注目度は高いですからねっ!」


「そうだったのか?

 そこまではさすがに知らなかった…」


「みんなあんな感じですけど、内心はすごく嬉しがっているんですよっ!

 いつもテレビ越しで見てたヒーローが来てくれたような感じで…

 世間や学園はどうか分からないけど、私達からしたらアナタこそ

 私達に勇気をくれる最高の勇者なんですよ」



進める足を止め、後ろ手をそのままに、

ゆっくりと顔をこちらへと向け振り返る



「ミライさん…アナタのことが好きです。

 ずっとずっと…不安でした

この気持ちが本物なのか…

 6年前の憧れを追っているだけで、ただ理想を求めているだけなんじゃないか!って…

 でもアナタと会って分かった

 この気持ちに間違いはなかった

 ずっと私の想ってた通りに強くて、出会った当時のままに優しい、私が好きになって人そのままだった

 だから、今ならハッキリ自信をもって言えます

 ずっとずっと大好きでした」



振り返った少女の顔はもう少女ではなく、一人の女性の表情で…

夕焼けに照らされる彼女に、ほんの少し心が揺らぎ、見惚れた自分がここにいた。

多分数秒、俺は呆けていただろう

ハッと目を覚ますように頭を掻き、冷静を装いながら彼女に近づくと、そっと頭を撫でる



「ありがとう

 正直、思ってる以上に嬉しいし動揺してるよ。

 でもごめん。

 今は誰に対してもそうゆう気持ちにはなれない。

 自信を持って相手を好きだと伝えることができない。

 だからもし、数年後変わらない気持ちを俺に持っていてくれたなら、

 返事は改めてその時でいいかな?

 その時まで、俺もしっかり考えるから…」


「……ズルいですね。

 そんなこと言われたらずっと待っちゃうじゃないですか」


それは彼女に対する本当の油断だったのだろう。

横を抜けようとする彼女の唇が、近付けた頬に軽く触れる。

そして軽い足取りですり抜けていくと、少し距離をとった先でこちらに振り向く



「フフッ、前借です。

ミライお兄さんには、これからの私をみて好きになってもらえれば問題ないです。

 その時、今度はミライお兄さんからしてもらえるように頑張りますねっ♪」



恥ずかしさからか、真赤に染まる顔を隠すように背を向けると、両手を広げ駆け出してゆく。

そんな彼女の後ろ姿を見ながら、彼女の唇が触れた頬をゆっくりとなぞる

どうして周りにいる女子は、こうも強い子等が多いのか……



「随分と油断が過ぎるな…俺は……

 ミクにどやされる」



その時の俺は多分、困り顔で…でも……

笑っていたのだと思う

やがて訪れる地獄を前に…

………最後の微笑みを……




ここから先、思い出してはいけない情景が、記憶の中から沸々と蘇ってくる

”今”へ繋がる最悪が、目の前へと近づいてきていた。




【※大切なお願い】


少しでも




「面白い!」


「続きが気になる!」


「応援してあげてもいいかな」


「更新がんばって!」




と思ってくださった方、応援を是非お願いします(*- -)(*_ _)ペコリ


応援は簡単、たった2、3秒で終わります!




このページの下の方にある、☆☆☆☆☆ボタンをポチッと押すだけです! もちろん無料です!




どうか皆様の数秒を、私に分けてください!




皆様のそのヒトポチでモチベーションが爆上がりします☆




何卒応援よろしくお願いします!




>すでに☆☆☆☆☆ボタンを押してくださっている読者様


 応援ありがとうございます!感謝してもしきれません<m(__)m>


 今後とも面白い話を作っていきますので、楽しんでいってください!



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