5ー2【アンチキラー】
十二の月20の日
前日と同じく施設へと向かっていると、聞かぬ声の怒声が響き、俺達の向かわせる足を早めさせた。
物陰からチラリと様子を伺うと、
まだ若い青年二人が、子供達に向かい太々しい態度で睨みを利かせ怒鳴り散らしていた。
種族は…人族のようだが……
いつでも対応できるよう、右手を構える俺の横でファムは目を細めながらじっくりとその二人を観察する。
「あれっ…うちの学生だよ。
学園で見掛けたことがある。
なんでわざわざこんなところへ…」
それを聞き、展開された魔力を抑える。
言って世界トップクラスに有名な学園の看板を背負っている以上、
学園生が他で大きな事件を起こしづらい。
それはつまり、学園の評価を下げ、泥を塗り、学園を敵に回し、
強いては学園に通う4種族全てを敵に回し兼ねない状況になる恐れがあるからだ。
…だがかといって安心はできない。
要は『学園生がやった』という証拠さえなければ、何ら問題ないのも事実ではある。
人族である以上、超々火力の能力での証拠隠滅はできないにせよ、
こんなへんぴな場所にある施設、隠滅はできなくても隠蔽はできる…
すぐさまに行動が取れるよう、構えを崩さぬままに様子を見る
「おいおいっ!
人里離れた山岳施設、なのに猛獣や魔物に襲われない…
気配遮断の結界でもはられているのか?
い~~とこに住んでるじゃないの?」
施設を囲う木の囲いを握り締めると、ベキベキベキとその握力で握りへし折る。
「あらら~、立地や環境が良くても、建物自体がオンボロなのかな?」
「老朽化が進んでいるんじゃないかな?
早く直してくれよ?今後俺達も使わせてもらうんだから…」
1人は高笑いをし、1人は口に手を当てクスクスと笑みを溢す。
そんな様子に痺れを切らした最年長のイムが、二人に向かい飛び掛かるが、
返り討ちにあい、壁に叩きつけられる。
イムの元へ子供達が心配そうに駆け寄る中、ザッザッと一人の青年がその場へ近づき、
見下すような視線で、子供達を見下ろす。
「お前達はいいよな~!
能力がないからって楽な仕事だけして、のうのうと生きてられて…
それに比べて、俺等能力者は超絶危険な仕事や報酬に見合わないクエストばかり…
本当に損な役回りだよなぁ~
そんな可哀そうな俺達に、拠点になるような場所の一つや二つ貸し与えても、罰は当たらないだろ?」
「能力を持たない人間が、俺達能力者…上位者に勝てるわけがねぇんだよっ!
さっさとこの場から立ち去って、どこぞの訳の分からない場所で野垂れ死にやがれ。
何もできない無価値な粗大ゴミ、《アンチホルダー》様よぉおっ!!!」
その言葉を聞いた瞬間、はじけるように俺の右足は前へと進んでいた。
”人間同士”のイザコザに巻き込まれたくない、目立ちたくない。
様子を伺うだけで見て見ぬフリをする…そのつもりだった。
これから先、何度となく味わうことになるであろうアンチホルダーの性…
この状況・言われのない中傷の場面で、必ずしも守ってくれる人が傍にいるとは限らない。
今からでも現実の厳しさを知り、受け入れ、
こんな罵声を浴びせられても、笑って受け流せる生き方を身につけてほしかった。
その方が絶対に楽だから…
それでも俺は知っている。
例え、どんなに辛くても…
例え、どんなに苦しくても…
例え、楽とはかけ離れた人生だったとしても、
他種族に比べ短い命を、短い命だからこそ一生懸命に生きる人間の姿を…
俺は近くで見てきたのだから
泣きじゃくる子供達と対峙する、青年達との間に割込む形で入ると、青年二人を睨みつける。
「あんっ?お前…確か支王の…」
「…いい加減にしておけ、みっともないぞ。
能力者は確かに強い力を持っているかもしれないが、命の価値に優劣は存在しない。
ましてや子供に対しての弱い者イジメなんて…こいつ等よりガキじゃねえか、見てて虫唾が走る」
「な…何をっ!支王…貴様ぁあ!!!」
と言葉を続けようした口を止める。
子供達のミライに対して、すがりつくような表情を見てクスリと笑みを浮かべる。
「支王の…良いのかい?
そんなカッコいいこと言っちゃって…!
ここじゃあお山の大将気取ってるかもしれねーけどよっ、
学園じゃあ”最弱のアンダーホルダー”として有名じゃねえか。
負けて地べた這いつくばって命乞いするくらいなら、その前に誠意ある謝罪とそこのガキ共雁首揃えて頭下げて、
『無駄に生きていてすみません』の一言があれば、生意気言ったことを許してやらなくもないんだぜっ?」
「ハハハッ!ガキ共も不憫なものだねえ。
助けに来てくれたヒーロー様が、学園一弱い勇者の出来損ないなんだからよぉー!
今はあのヤバすぎる妹もいない…
いつもの恨み…返させてもらうぜっ!」
挑発的且つ威嚇言動に、心配そうな表情で俺を見つめる子供達の頭をポンポンッと軽くたたく。
「みんな見てろっ!
アンチである以上、必ず突き付けられる現実がある…
どうしても抗えない場面に、出くわすのかもしれない。
でも、例え能力がなくても…例え最弱の烙印を押されようとも…
強くあろうとすることに、無駄なんて一片もないし、
抗えないから立ち向かわない理由にならないことを、今ここで証明してやる。」
「っ!!!ほざいたなアンダーぁああ!!!」
言い放つと一人が弾けたように飛び掛かる。
その姿は数秒前と明らかに違い、右肩から先が数倍の大きさに膨れ上がっていた。
筋肉増加……肉体強化系能力の主に部位強化特化型。
繰り出される強烈な右ストレートを左肘でいなすと、その勢いに乗せ、右肘で顎を捉え、
三半規管が揺らされ、隙だらけのところを右蹴りを顔面に叩きつけ吹き飛ばす。
宙で回転をしながら視線をもう一人へやると、
親指を立て人差し指の先をミライに向け、さながら拳銃を撃つような構えをとっていた。
目を凝らして見ると、その人差し指の先端から血が流れ出ているのを見て、能力を確信する。
「悪い、借りるぞっ!」
「…えっ?」
ソラの答えを聞かぬまま、先程青年等に立ち向かおうと、
握りしめていた木刀をするりと抜き取ったタイミングで”それ”は放たれた。
「死ねっ!!!
《紅血》…【ブラッディートリガー】!!!」
銃声のない銃撃が襲い来る。
血液を固めて撃ち出された血弾3発、それを木刀で左右へはじき飛ばす。
そして最後の3発目を勢いよくはじくと、先程蹴り飛ばした男の頬を掠らせた。
「「…っ!!!」」
二人の視線がその血弾に向いた瞬間、倒れる男の元へもう一人を蹴り飛ばす。
吹き飛ばされてくる相方を受け止め、立ち上がろうとすると、
その二人の顔の間を木刀が通り抜け、
血弾でできた岩盤の亀裂に突き刺さった。
青ざめる二人の元へ、コキリコキリと首と指の骨を鳴らしながら一歩ずつ近づく。
「さて、地べたを這いつくばって許しを乞うのは、果たしてどちらになるのかな?」
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