5-1【指名クエスト】
「…で、今回はどのようにしてついて行かれるのですか?
さすがに移動時間・距離共に長期クエストで隠れてついていくのは難しくないですか?」
「ああ、だから今回俺達は参加しない。
全てをミクに任せるつもりだ。」
一瞬、場の空気が止まる
クローがポカンと口を開け呆然と立ち尽くす。
「え”?
いや、本気で言ってらっしゃいますか?
相手はあの死四龍の一角……
仮に私がフォローしたとしても守り切れるかどうかの強敵ですよ?
もしもの時に……」
「大丈夫だろう…
もう俺等が思っている程アイツもガキじゃないし、実力的にも問題はない。
少しばかりアイツ本来の力も垣間見た。
精神操作系は脅威と思うが、今回自らが俺の手を離れて戦うことを決めている。
いい機会だし、卒業試験みたいなもんだ」
「で…ですが……」
「それにお前の言ってた通り、さすがに何日も長距離移動で旅客機の中に隠れているわけにはいかないだろ。
お前もお前で常に俺やミクの付近に居れば、色々勘繰ってくる奴もでてくる。
この機会に他の奴等との親交を深めておくのも、今後の為になるだろう…」
渋るクローをなんとか説得し、帰路へとつく。
あの様子を見る限り、俺より保護者しているのではないか?と不安になる。
過保護にならなければいいのだが…いや、もう遅いのか?
そんなことを自問自答しながら家に着く。
そこから先は滞りなく時間は進み、長期クエストへの準備が整っていく。
龍王直属の命とあり、こちらで用意するものも特になく、
日は刻々とその日を刻もうとしていた。
クエスト前日の夜、支度の為部屋に戻ろうとすると、何か悍ましい気配がする。
耳をすませると、俺の部屋の中から何かガサゴソと漁る音がする。
先程の件もある…気配を消し、そっと部屋の扉を少し開け、中の様子を見る…
「…はぁ…はぁあっぁぁぁ!
お兄ちゃんの匂いぃぃい♪
今日の充電をぉぉお♪」
「……」
スッ…と部屋の扉を閉じ、額に一指し指を当て眼を閉じる。
俺は一体何を見たのか…
できたら見間違いだと良いな…と思いながら、改めてそっと扉を開ける。
「んにゃ~~~///!
お兄ちゃんのベッド最高ぉぉぉおおお♪
快眠の為ですっ!
快眠の為には仕方ないのですっ♪」
「……」
スッ…と部屋の扉を閉じ、額に一指し指を当て眼を閉じる。
俺のベッドで、悶え転がり回る訳の分からない生物が見えた気がした。
できたら見間違いだと本当に良いな…と思いながら、再度改めてそっと扉を開ける。
そこには先程の悪夢のような光景はなく、いつもの静かな部屋が広がっていた。
いや…これは…
タンスを開け、シャツを数える。
「……」
ミクよ…一着ならまだバレないかもしれないが、なぜ五着もなくなっている?
それになんなら、俺のお気に入りのポロシャツとジーパンまでなくなっているではないか…
ため息が漏れる。
本当に…ミクの将来が本格的に不安でならなくなってきた。
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十二の月18の日
「でも珍しいねぇ~、ギルドに対してならまだしも、ミライ君に新規で名指しの指名クエストなんてっ!」
午前中「やっぱり行かない」と泣きながらゴネるミクを無理矢理引っ張り出し、
巨大旅客機へとぶち込んだ後、その足で二人はとある場所へと足を運ぶ。
クエストにも色々な種類がある
掲示板経由でどんなギルドでも受注ができるオープンクエスト
ギルド自体を指名したギルド固定クエスト
そして、個人に対して希望が入る指名クエスト
「養子施設の子供達の先生…ボランティアねぇ~
人族でそのほとんどが無能力者の施設らしいから、俺にうってつけだった…って感じだろ。
学園内外でもある意味有名だからな…能力者学園に通う無能力者は…」
「低能力者…って言っても結局使えないんじゃ無能力者のようなもの……かっ…
まあ、そのおかげでかわゆい子供達の相手ができるんだからいいんじゃないのぉ?」
「否定はしないが、何か悪意を含んだ言い方だなっ…」
「まあまあ!これでも褒めているんだよぉ~
お人好しだなぁ~って
普通は嫌がるんだよ……他の人達は!」
「嫌いじゃないだけだよ、子供の面倒がっ!
腐った大人を相手するよりよっぽどいい…」
「擦れていると言うべきか…これも褒めるべきなのか……」
そんな取り留めのない会話をしながら、施設への足を運ぶ
隣には華憐な少女がニコニコと大地にステップを刻みながら着く
ふと何か違和感を感じ、彼女に問う
「しかしこんなクエストに、なんでお前まで付き添ってきてんだよ?」
「いいじゃない!
久しぶりの二人でのクエストなんだからっ!
昔馴染みのよしみというやつだよっ♪」
昔馴染み…ねぇ……
そういえば、いつの間にかコイツとはよく話すようになっていたが、いつ辺りからだったか…
小等部の頃から、クラスにいたのは覚えているが、どうもその辺りは曖昧だ…
「まあ、いいか。
とりあえず遅れる訳にはいかない…
行くぞ……”ファム”」
▽
養護施設に辿り着くと、子供達は良いも悪いもその”らしさ”から突然訪れた自分達に対しては、
大歓声で出迎え、好意的にワ~と両手を広げ近寄ってくる
訪問者自体が珍しいのか、周りに群がり俺とファムの腕を引っ張り合う。
しかしそんな中、それよりも何よりも俺自身は、なぜか不思議な感覚に襲われていた。
既視感……というよりはなんとなく懐かしさというべきか……
不思議と言えばもう一点、なぜか子供達に人気だった。
正確には俺が人気だったのだが、不可思議なのは男の子供からも、えらく質問を受けたことだ。
突如の訪問客に寄って来るのは分かるのだが、問題はそこではなく、隣にはファムがいたことである。
客観的に見ても小さな顔立ちでスリム体型、綺麗系であるファムにはあまり向かわず、
なぜか俺にばかり子供達が群がり、質問を投げかけてきた。
横で明らかにファムの機嫌が悪くなっているのを感じたが、それはまあ見なかったことにしておこう…
そんな違和感も、チョコマカとはしゃぎ回る子供達を見て、『こんな時期もミクにはあったな、今もだけど……』
などと考えているうちにどこか彼方へ消えてゆく。
そんな子供達の輪の中から外れた木陰の隅で、木に隠れながらこちらを見つめる少女の姿があった。
目が合いこっちにおいでと手招きをすると、そそくさと施設の建物へ駆け出し、中へと逃げてしまった。
何気にショックを受けつつ、子供達の怒涛の質問攻めにあい、その日はまともに身動きが取れないまま終わった。
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十二の月19の日
まったりとした午前が過ぎていく。
昨日程に混乱もなく、外でのボール遊びをしていると、
男の子の大声と、それに続いて女の子の泣き声が聞こえ振り向く。
その先で、男の服を握り締め引きずられる女の子の姿があった。
その光景に周りの子供達は「またか」と見慣れた様子で、呆れている。
「……いつもあんな感じなのか?」
「うんっ!施設にやってきた一番新しい子達なんだけど、その時からあんな感じ。
いわゆる兄妹喧嘩だよっ…
まあ、一方的にソラがヒナタちゃんを突き放しているんだけどね。」
「ソラはいつも冷たい感じだし、ヒナタはいつも泣いてるから、僕等も近寄りづらくて困ってるんだよ」
見ると、手を振り解かれ走り去っていく兄のソラと、地面に座り込みワンワンと泣き叫ぶヒナタ。
フゥ~~と溜息を吐き、泣きじゃくるヒナタの元へ行くと、両手で彼女を持ち上げ立たせ、
砂だらけの足を手ではたくと、抱き上げ抱え、抱っこし、施設の中へと連れて行く。
他の子供達がヒナタの様子を見ている中、俺は一人近くの公園へと足を運ぶ。
そこでは、ベンチに物憂げに腰掛けるソラの姿があった。
横に座ると、ソラはこちらに視線を向けた後、その視線を下へと向ける。
「そんな落ち込むくらいなら、喧嘩なんかしないで、手を指し伸ばしてやればいいだろうに…」
「兄ちゃんには関係ないだろ?
俺等のことなんて、知らないくせに…」
「そうだな…全く知らない。
ただ、ヒナタちゃんは泣いて、ソラが落ち込んでいる。
俺が知ってるのはそれだけだ」
「……いっつも付きまとってくるんだもん。
そろそろ兄離れしてさっ、他の奴等とも仲良くしてほしいんだよ…」
両腕で膝を抱え丸くなる。
そんなソラの肩をチョイチョイと叩くと、振り向いたソラの額へ渾身のデコピンを喰らわす。
悶絶するソラを余所に呆れたように溜息を吐く。
「ガキが大人ぶってんじゃねえ~よっ。
妹なんて、いずれは勝手に兄貴から離れていくもんだ。
甘えてくるのなんて今のうちだけだぞっ!
だからせめて…甘えてくる今のうちだけは、傍にいて守ってやれっ。
家族のみんなとはまた違う、血の繋がった兄妹なんだろ?」
一瞬こちらを睨み付けるも、思うことがあるのか抱える膝を更に強く引き寄せ、
丸く縮こまるソラの背中をバンッと勢いよく叩く。
「ヒナタ自身、みんなと馴染もうと必死なんだ。
昨日も怖がりながらも、俺に接してくれていただろ?
ただ、最後の一歩が踏み出せないだけだよ。
その一押しくらい手伝ってやっても罰は当たらねえだろ?
兄貴なんだから…なっ?」
しかめっ面を向けた後、じっと正面の大地をぼ~っと見つめる。
それは時間にして数分だっただろうか…
突如バッと立ち上がると、施設の方へと駆け出す。
はぁ~と息を漏らし、立ち上がるとどこからともなくファムが現れ、俺の元へと近付いてくる。
「完全に自分を棚にあげたねっ…」
「……どこから見てたんだ?
気配なんて感じなかったぞ」
「まあまあ、そこは色々、企業秘密だよ♪」
「……まあいい。
ミクとは違うんだよ。
少しくらい手を貸してやらないと、すぐにダメになっちまう…
それがアンチだよっ」
この世界において、アンチの脆さを…儚さは知っていた。
だからこそ、手を貸したくなった…というのは建前で、実際は自身に重ねて、
それがどうしようもなく滑稽に思えたからこそ、
同じ道を歩んでほしくないと思ったのかもしれない。
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