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《3章過去編》完全無欠のサイキョウ勇者の攻略法  作者: MeguriJun
2章【第5次種族間大戦】
30/74

4-5【進化】



「闇龍討伐っ!!?」



十二の月12の日

夕食時、ミクからの話題はとんでもない内容の話だった。



「闇龍生息場所は有名だ、南半球奥地……エアノスミカの更に最果て…逢魔境ダークホール。

 片道だけでも一週間以上はかかるだろ?

 しかも闇龍といったら……’死四龍’の一体じゃないかっ!」



そう、今回の話の一番とんでもない所はその討伐対象である。


闇龍アルデウス

元々個体数が少ない龍族が4種族トップに君臨する大きな要因は紛れもなく龍族の長、龍王グレンノアの力なのだろうが、

そのグレンノアに次ぐ、4体の龍こそが王直属軍 『死四龍』。

その力は恐ろしく、1体が一夜にして国を消し、島を沈める程とされている。

その中でも闇龍は特別で、単純な攻撃力のみでは他の死四龍に後れをとるものの、

その真骨頂は闇そのものを支配する特殊なギフト《九相図ダークネフトゲイナー》にある。

精神攻撃型<恩恵ギフト>で、視覚だけでなくその相手対象の精神そのものの闇部分に干渉したり、闇そのものを支配し堕とす力とされ、

精神の弱い者などはそれだけで心を失った廃人へと変えてしまう、物理的な力よりも心の強さが試される敵なのだ。

ミクの能力は完全物理攻撃型の上、精神攻撃型の力の持ち主とは戦った経験が皆無に近い。

何より精神が成熟しきっていない12歳という身で、その相手は正直分が悪い。



「なのですっ!1ヶ月以上の大型クエストなのです!

 なんでも龍王直々の依頼らしくて、

 編成部隊に強制的に入れられちゃったのですよね…」



頭を掻きながら苦笑いを浮かべそう告げた。

その表情を見て状況を理解する。



「……人質だな」


「っ…!!!」


「まぁ、察するに直接的な人質とは違うだろうなっ…

 闇龍討伐の編成に”ソイツ”が加えられている!…とかなっ。

でないとお前が、こんな長期のクエストに出向くわけはないし、

 いくら龍王直々でもガン無視するのがお前だ。

だとして対象が俺とも考えられるがそんな話は受けていない。

と、なるとギルドメンバーの誰か…更に確実にお前を動かすとしてた必然…『歌方音奈』。

アイツが有力だろうなっ!」



瞬間、場の空気が変わる。

穏やかな声。

静かな声で淡々とミクは言う。



「本当に浅はかで甘っちょろいことをしてくれるのですよ。

 ミクが死四龍’程度’に遅れをとるとでも思っているのですかね…」



スッと、ミクの瞳から黒色以外の全ての色が消える。

凄まじいプレッシャーと漆黒のオーラが周囲の全てを飲み込んでいくのを感じた。

辺り一面には激しい圧迫感が充満し、空気がヒリつき、突き刺さるような感覚に陥る。

台所ではひとりでに食器が割れ、椅子はカタカタと揺れ音を立てて倒れ、

外では騒がしく虫や動物、鳥達が脱兎の如く周囲から離れていく音が聞こえた。

その禍々しくも異様なオーラは故意に俺を避けている為、客観的になってしまうが、そんな俺でも末恐ろしく思う。


時々考えさせられる。

自分は一体”ナニ”を育てているのか…と


学園入学当初に計る能力使用に大きく関わる魔力…

その計測において一般的な能力者の平均魔力値が5千~1万。

学年トップクラスの成績を誇る音奈は3万弱。

生徒会長にして龍王の娘…龍姫アルフレア・ノーツが約11万。

世界最強と名高い龍王に至っては40万超える魔力と言われている。

そんな中、計算上約1000万程までの魔力計測が可能とされる機械がはじき出したミクの魔力値は”エラー”

カンストを起こしていた。

その、あまりにもありえない程の魔力のタガが少しでも緩み、

漏れ出せばこれ程までの影響を周囲に及ぼすものなのか…

人外…などでは言い表せない…

生物としての枠を軽く超えている…

コイツは一体…何者なのか…


ツーッと一粒の滴が額から零れ落ち頬を伝う。

そんなこちら側の心情を察してか、フッと黒く重い漆黒に染まったオーラが一瞬にして霧散して消えてゆく。



「まぁ、ちょっとした旅行気分でパパッと片付けてきますですので、

 お兄ちゃんはミクの居ない寂しい夜を枕を濡らしながら、

 帰りを今か今かと待っていて下さいなのですよっ♪」



そしてニパッといつも通りの笑顔で俺の顔を見つめていた。



「あぁ、寂しい夜をずっと一人で過ごす悲劇の主人公になる覚悟は一昔前からできてるから、

 お前はもう帰って来なくていいぞ。」


「ええぇぇええ!

 何ですかそれカッコいいのですよっ!

 でも全然全く寂しそうな気配がないですし、

 絶対戻って来てやろうと覚悟させられたのですよ!」



そんな他愛もない会話が一区切りした辺りで、フッとミクの視線が揺らぐ。

その微妙な変化に気づいた時、ミクは静かにその場に立ち上がった。



「お兄ちゃん!

ちょっと席を外すのですっ」


「……何かあったのか?」


「いえ、少し友達と会う約束があったのを忘れていたのですよ。

 30分くらいで戻るのですよ♪」



そう言うとパタンとドアから出て行った。



「30分……ねえ…」



食に細かく、無駄にすることを嫌うミクが、食事を残すこと自体ありえない。

ミクの机の前には、まだほんのり温かいスープとパンが半分程置いてあった。

先程から感じる殺気が原因だろうが、明らかに綺麗すぎるしムラがある。

まだ”人”を殺したことのないであろう気配から察するに、

暗殺者というより学園の誰かに間違えなさそうだし…

『何かあれば連絡が来るだろう…』

そう思いゆっくりと目の前に置かれた残りのスープを飲み干した。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




支王家から500m程離れた崖の上でミクは足を止める。



「そろそろ出て来たらどうですか?

ミクに用なんですよね?」



先程までミクが歩いて来た森の方へと声を掛けると、スッと木々の間から一人の青年が現れた。



「…アナタは確か、お兄ちゃんのクラスにいた…」


「炎城寺 裂だ!

 この間はどうもっ!!!」



その発する言葉一つ一つに殺意・殺気が込められていた。



「何か御用ですか?

 ミクは早急にお兄ちゃんとの楽しいディナータイムに戻りたいのですがっ!」


「おいおい、男からの夜の誘いにノッて来たのはお前だぜ?

 もっと楽しそうにしてくれよっ!」


「相手がお兄ちゃんなら歓喜して、お尻も尻尾も振るのですがね。

 生憎アナタ程度のお誘いじゃあ、

 朝飯前どころか、寝ながら応対してもお釣りがくるレベルに無駄な時間なんですがねぇ…」


「…いちいち癇に障る奴等だぜっ!

 お前等兄妹は…」



ボウッと烈の手から炎が舞い上がると、その炎は龍の形を成し、

使役する火炎龍は地獄のような業火の竜巻を顕現させていく。



「ハーハッハハハハ、見るがいいっ!

 これがお前への恐怖が、怖れが、絶望感が、無力感が…

 そして何よりもお前に対する憎悪が、怨恨が、殺意が…

 全てが混濁し、合わさり生み出された力っ!

 《広炎パイロキネシス》…【炎上烈火ヴェルファイア】!!!」



能力の発動と共に、烈を含めたその周囲全てが灼熱の炎へと姿を変え、燃え上がる。

周囲一帯全ての木々が、一瞬で灰燼と化し焼失していく。



「なるほど、確かに自信ありげに言うだけはあるのですよ。

 通常の炎に比べて明らかに温度上昇が異常なのです。

 火力自体は劣るとも、会長アルフレアと同種の力を手に入れたみたいですね。

 面倒くさいのですよ……

 一体この短期間に何をしたのですか?」


「フハハハハッ!

 これこそ進化を遂げた《広炎》の力だっ!

 周囲に留まらず自らの肉体すら炎と化し、完全同化を実現させた能力の進化系…

 もはや龍族の恩恵にも劣らない力だ!

 お前のような、ただの腕力や斬るだけしか能のない凡人とはレベルが違うんだよぉー!

 さぁ、死ねえぇぇええ!!!」



燃え上がる炎、その全てがまるで意思を持つかのように一斉にミクへと襲い掛かる。

それを見ていたミクは「はぁ~」と一つ溜め息を吐いた後、手に握る剣を一閃、横へと振り抜いた。

次の瞬間、燃え広がっていた業火は消え、胸部を横に斬られ、血だらけのまま倒れる烈の姿がそこにあった。



「は…はあ~~~~~~?」



胸を押さえた際に手についた血を見て現状を把握しながらも、理解がついてこず混乱しうろたえる。



「ば、バカなっ!?

 俺の身体は炎と同化していたんだぞっ?

 炎そのものだったんだぞっ?

 実験もした…物理攻撃は一切効かなかった…

 炎に物理攻撃が通じるはずがない…なのに…なぜっ!???」



そんな動揺を隠せず、狼狽え、慌てふためく裂の元へミクは近付くと、

無造作に烈の肩口へ剣を突き刺した。



「ん~、少し目測を見誤りましたか…

 だからギフトホルダーや同等種のレベルを相手するのは面倒なのですよ。

 急所がわからなくなるので手加減できなくなるのです」


「ギッ…ギャッアアァァア!!!!!」



けたたましい悲鳴が周囲一帯響き渡る。

激痛にもだえ苦しむ烈の元へミクは近づく。



「うるさいのですよっ」



ボソリとそんな言葉を呟くと表情一つ変えず、

肩を押さえ逃げようとする烈の目の前に立つと、先程と寸法違わぬ位置に剣を突き刺し、

剣の柄を踏みつける形で、地面へと押し倒し抑えつけた。



「ガッ!!!うっあっ………」



右肩に突き刺さる刃を右手で握り、引き抜こうとあがく烈に対し、

柄においてある足に力を加え、グググッと更に刺し口に押し込める。

激痛に悲痛な叫びを上げながら、恐怖に怯える烈の姿に冷たい視線を向けながら溜息交じりにを吐き捨てる。



「ミクを凌辱して殺そうとしてたくせに、情けないのですよ。

 アレですか?

 殺す覚悟はできてても、殺される覚悟はできていない!っていうテンプレですか?

 肩の傷も心臓より高い位置で、出血も最低限ですましている…

 わかりますか?

 アナタはミクを殺す為に必死かもしれませんが、ミクはアナタを殺さない為に必死なのですよ。

 強くなるのは勝手ですし、勝手にミクを恨むのも結構なのです…

 だけど、ミクとお兄ちゃんの大事なひと時の時間を無駄に浪費させないで頂きたいのですよ。

 お兄ちゃんと過ごすこの時を邪魔されるのが、この世で一番大嫌いなのですっ。

 ましてや、アナタには一度忠告してるですよね?」



そう言うと足に力を加え、剣を更に深く突き刺す。

甲高い悲鳴が絶叫に変わり、静かな畔に響き渡り木霊する。



「ミクはですね…思うのですよ。

 伝記や伝説、物語や神話で語られる勇者…その勇者の大半に足りないモノがあるのです。

 それは”徹底力”

 殺すまではする必要はないと思うのです、お兄ちゃんに怒られてしまいますから。

 でももう二度、絶対に過ちは犯さない。

 敵に回してはならないと思わせるような、そんな徹底的な力がいつもみんな足りていないのです。」



烈に対し、凄まじい程の殺気を放ちながら言葉を繋ぐ。



「ミクはお兄ちゃんの為に強くなったのです…他の何でもない、お兄ちゃんだけの為に……

 お兄ちゃんは、ミクにとっての全てなのです。

 生物も種族もそこで起きる争いも、村も街も国も世界も…

 この星の出来事全てがミクには関係ないですし、どうでもいいと思っているのです。

 ”勇者”なんて肩書き、父を尊敬しているお兄ちゃんの為に持っているだけで、

 お兄ちゃんが望まないならいつでも捨てますし、お兄ちゃんが望むならミクは龍王よりも強く、仙王よりも知的に…

 魔王よりも残虐になれるのです。

 アナタが相手にしているのは、そういう相手なのですよ…」



冷たい瞳で睨みながら、突き刺さる剣を烈の肩から引き抜く。

痛みに悶え苦しむ烈へ背を向けると、死神の囁きの如く静かに呟く。



「もう二度と、ミク達の前に姿を見せないで下さい。

 でないと次は……

 本当に殺しちゃうかもしれないのですよ」



【※大切なお願い】








少しでも








「面白い!」








「続きが気になる!」








「更新がんばって!」
















と思ってくださったら、








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