4-2【その少女の名は・・・】
種族の隔たりのない、平和を守る為に結成された統合都市ならではの警備隊…護衛騎士団。
その統合都市より10数キロ先。
数日前に起きたとある事件により、周囲は未だ慌ただしく駆けずり回っている。
その中にいる一人の指揮官が、一枚の紙に目をやる。
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報告書(とある人族の老夫婦と孫娘の証言より抜粋)
界歴0299年八の月某日
それは突然訪れた。
いつものように農作業に勤しんでいた。
青天の中、作物を握り掘り起こしていると急に辺り一面が暗くなる。
ふと畑仕事をしていた手を止め、視線を上空へ向けると、
そこには空を覆い隠すほどの龍の群れ…その数は4・50匹はくだらなかった。
後に、その龍の群れが革命軍・紅4団 <蒼天> と知り驚愕するが、
それを知らない当時ですらも、この異常に唖然とし、戦慄し、恐怖する…圧巻の光景だった。
世界の終わりを予感した。
呆然と見守る中、龍の軍勢が東の空へと向かって飛んで行くその時に、それは起きた。
先頭を飛ぶ一匹の金龍の羽が突然吹き飛ぶと、身体中から血を吹き出し落下。
それに気を取られている龍達の中心に、落ちる金龍を踏み台に跳躍する者が一人、傍目から人間大の姿を見る。
突如巻き起こる風を苦ともせず、両の手に握る剣のようなものを振るうと、次々に龍達は羽を失い、斬り裂かれ落下。
最後の一体を斬ると更にその龍を踏み台に跳躍する。
上空より周囲を見渡すと剣を振るい、意識があり反撃に転じようとしていた龍達は再び斬撃の雨に打たれ地に伏していった。
”その者”が降り立ったそこは、まさに惨劇だった。
そんな血溜まりの中で最初に大地へ落ちた一体が起き上がる。
咆哮と共に舞い上がる金色の鱗粉を目にして、腰を抜かし震えあがる。
第4次種族間大戦で中心となる龍王の側近、龍王に均衡する龍族の中でも更に希少の4体 <死四龍> …その一体に他ならなかった。
《金鱗憤》の粉を司どるギフトホルダーで、毒の鱗粉や粉塵爆破、粉粒化・粉粒体を操るなど汎用性は高く、
金粉に目を奪われていると一呼吸で毒に侵され、呼吸困難、意識障害に陥る。
あるいは、体内からの爆破によってその命を散らせる世界で最も美しく世界で最も硬い龍。
この存在こそが、紅4団を超高難度S級討伐クエストへと引き上げることとなった元凶。
紅4団総団長及び龍族衆<蒼天>長 金鋼龍フィジカルタ
舞い散る鱗粉は大地を腐らせ、付近の龍達の強固な皮膚[龍鱗]も徐々に浸食し変色していく。
その巨大な腕を振るうと、”その者”に向け爆撃の嵐が襲い掛かる。
そんな凄まじい爆撃を剣を横に振るっただけでかき消すと、そのまま金鋼龍の強固な身体を貫き抉った。
激痛に悶え苦しみ、吹きあがる鱗粉を、眼にも止まらぬ速さでの一回転で全て吹き飛ばすと同時に、
金鋼龍の身体は無数の斬撃による出血で倒れ込んだ。
<死四龍> 金鋼龍フィジカルタ討伐
”その者”はS級にも当たる討伐報告をする素振りもなく、その場を後にしてゆく。
遠方よりの確認のため何者だったのかは不明。
確実性正確性に欠けるが、”その者”の姿、体型、特徴から年端もいかぬ少女らしき容姿だったと言う。
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この世界には大きく分けて4種の種族が存在する。
自然と共に生きる森の番人・仙族
魔力の原点とも言われる地底の王・魔族
種族の効率的繁栄と環境変化に順応した大地の主・人族
そして圧倒的破壊力と支配力から世界を掌握していると言っても過言ではない、4種の頂点である空を統べる皇帝・龍族
この4種族が共存できている背景には、
12年前に起きた第4次種族間大戦において龍族VS魔族+仙族+人族という構図ができていたことと、
突然変異とさえ言われた人族の勇者・支王真の存在があってこそに他ならない。
仮にもしも、人族の介入がなかった場合、龍族の勝利は間違いなかったであろう。
その龍族をまとめる者こそが、現龍族の長にして、世界最凶と呼ばれる者…
その日は学園の雰囲気がいつもと違っていた。
ざわざわざわと場内は騒然としており、
生徒は元より、教壇に立つ者ですらも、緊張した面持ちで様子を伺っていた。
学園を代表する理事の視察……
アスフォードは4種族が同盟を結んだことによりできた統合都市であり、
その中ある学園もまた種族の垣根を越え、全ての種族が揃い、学び、友好を深める場として建設された。
それに関わった理事会の各々は相応に権力や立場を持っており、他の者達から支持を得ている者が多く、
その種族間においての大物と言っても過言ではなかったが、
今日視察の為に訪れた者は、他の理事役員を完全に凌駕していた。
”龍王グレンノア・ノーツ”
学園理事を代表する最高責任者にして、4種族の中でもトップにあたる力と発言力を持っている存在。
大戦時代、最も多くの戦果をあげ、他種族に恐れられたとされ、
その名を聞いただけで人々は戦慄し、震え上がる世界で一番危険な人物である。
世界のパワーバランスさえ崩しかねない人物の来園に、学園中がピリピリとひりつく空気に包まれていた。
ざわざわと人の群れが動きをみせる。
最前線においては、この街の中枢を支える重鎮達が、朝からずっと、頭を下げて待機していた。
それはさながら大名行列かモーセの海割りのように、異様な光景が目の前に広がっていた。
その中心には、マントを翻す濃い顔立ちの男とその護衛が幾数人。
周囲の人々を頭をたれ、その者が立ち去るのを静かに待った。
二人を除いて……
「うわーーーん!遅れたのですっ!!
早くするのです音奈っ…
絶対にお兄ちゃんは先に帰っているのですよっ!!!」
「まっ…待ってミクちゃん…早すぎるよお……
それに教室にいないなら先回りして正門や学園入口とかに…」
そこで、一人の少女が気付き視線を向ける
その先の者と眼が合い、背筋が凍り、動きが止まる
「うそっ……龍王…グレンノア……様?」
急に立ち止まる少女に気付き、もう一人も止まり近付く。
「何をしているのですか?
止まってる時間はないのですよ!」
立ち止まる少女へと駆け寄る少女の背中、行道を塞ぐようにその影は立つ
「……なんの用なのですか?」
「人族にしては整った顔立ち。だが、綺麗すぎる。
……それにどこかで……」
「急いでいるのです、道をあけてほしいのですが?」
王族の、しかも世界において最も危険な人物への礼儀知らずな態度に周囲がざわつく
そんな少女を見て「ガハハハッ」と豪快に王は笑う
「そのような態度を取られるなど幾十年ぶりかっ!
いいだろう、ではこうしよう。
これから、我が振るう一撃をもって、今回の無礼はなかったこととしてやろう
生き延びてみせよ、手段は問わん!
避けても構わん…避けれるものならなっ!
この学園に通う以上、それくらいはできてもらわねば困る…」
それを聞き、少女はホッと胸を撫で下ろす
「そんなことでいいのですか?
お兄ちゃんに迷惑がかかることだったら、どうしてやろうかと思いましたけど…
構わないですよ?いつでもドーンとくるといいのですっ♪」
その発言に周囲は凍る。
慌てるお付きとは逆に王は更に高笑いをし始め、その笑い声が途切れた瞬間、スッと空気が張り詰める
「いい度胸だ………死ねっ」
次の瞬間、轟音を轟かせ王の拳の一撃が放たれた
風を切り、空間を歪ませるほどの衝撃は大地に触れることなく抉られ、砂煙を吹き上がらせた。
舞い上がる砂塵が徐々に空へと消え、大地へ戻ってゆく。
そこには、龍王すら驚愕する光景が目の前にあった。
そこには逃げもせず…また踏み耐え忍ぶこともせず、
垂直のまま、右掌で龍王の拳を受け止めている少女。
その足元には、地盤沈下でも起こしたかのようなクレーターの跡があった。
驚愕の表情を浮かべる龍王を尻目に、少女はあっけらかんとした表情で話しかける。
「すごい速度なのですねっ!
避ける時間がなかったので受け流すので精一杯でした。
それに物凄い破壊力なのですっ!
こんなの他の人に向けたらダメなのですよっ♪」
とニッコリとした笑顔を向けた後、「早く行くのですっ!」
と連れの少女を右手で担ぎ、脱兎の如く走り去っていった。
その一瞬、連れの少女が2・3回頭を下げたのが見えたが、
それが脳で認識した時にはすでに少女達の姿はなかった。
「本気では…なかったのですよね…」
「当たり前だっ!だが、そこを見ろ。
相応の力を加えたし、殺すつもりの一撃だった…
何より、避けていれば後ろのもう一人の女を消し飛ばしていたんだ…
まさか……それを見越して……?」
「龍王様の一撃を……大地へ受け流した!?」
「…というより感触的には真正面から”受け止めた”ようだった。
どちらにせよ尋常ではないなっ……あの小娘……」
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