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不仲の原因
丸一ヶ月が経った。
丸一ヶ月間、一日一回の「3000円」は続いていた。
「あれから、もう一カ月経ったのね。早いわね。次はいつにする?」
先輩が言い出した時、田中はあの日とこの一ヶ月をまた繰り返すのは真っ平ごめんだと思った。
「あー、ごめんなさい。飲み過ぎでドクターストップかかっちゃってー。しばらく飲めないんですよねー」
飲まない先輩をごまかすことは簡単だった。たとえそんなわけないだろうと思われても田中にはどうでもよかった。先輩に誘われないためならどんな間抜けなことでも言ってやる覚悟だった。
その直後の会社の全体の飲み会で田中が生ビール大ジョッキをあおっているのを、先輩が眼光鋭く見据えて以降、先輩と田中の会話が嫌みと当てこすりの応酬になったことは当然だったのだろう。