プロローグ
「新入生代表「黒羽根銀地」」
ガタッ
体育館に敷き詰められたパイプ椅子から勢いよく立ち上がる音が響く。つかつかと台の上へと一人の男が歩いていく。
「ねえ、あの人カッコよくない?」
と、ヒソヒソと話す女子生徒たちの話し声を遮りるように黒羽根が喋り始める。
「挨拶の前に一つ、、俺の名前は、プルマシュバルツだ!二度と間違えるな。」
シーンと静まり返る体育館。先ほどまでかっこいいなどと言っていた女子生徒も今では、ただ呆然とフリーズしてしまっていた。
「ゴホンッ。ええ〜未だ冬の呪縛から完全には逃れられていないこの緑芽吹く祝福の季節に降り立った210人の戦士の代表として、、、、」
そのまま多少のアクシデントはあったものの、式は滞りなく進み新入生は各クラスに集まっていた。
どのクラスも、ガヤガヤと話し声が聴こえてくるのだが、黒羽根のいるクラスでは、ガヤガヤと言うよりもザワザワと言った感じで普通の性格であれば、クラスの人気者だったであろう黒羽根には誰一人として近づきすらしない。何も事情の知らない人からすれば異様な空間がそこにはあった。
ガラガラガラ
このクラスの担任であろう先生がドアから入ってくる。生徒たちは即座に自分の席に着き先生の言葉を待った。
「ええ〜私がこのクラスの担任の石澤岳徒だ。よろしく。んで、さっそく本題だが、取り敢えず自己紹介をしてもらう。じゃあ、一番前の君から頼もうかな。」
そう言われ立ち上がったのは、ザ、 普通 といった感じの男子だった。
「えと、普通田通です。趣味は読書です。今後ともよろしくお願いします。」
こんな感じで何の面白みもない自己紹介が始まった。そして最後に黒羽根の番が回ってきた。教室に緊迫した空気が立ち込める。誰もが心の中で先ほどとは打って変わり普通に話すことを、望んでいたが、そんな淡い期待は、黒羽根が発した次の言葉で崩れ落ちた。
「俺の名は、プルマシュバルツだ。普段は妄想を操る妄想力使い《ミンストレル》として活動している。模擬戦ならいつでも受け付けている。腕に自信があるやつは、デュエルと声を掛けてくれ。」
またしても静寂が教室を包む。この何とも言えない余韻とともに自己紹介終わりを迎えた。
「ええ〜皆さんとても個性的でいいクラスになりそうです。まぁ、問題を起こさない程度に遊び、勉学に励んでください。
最後に皆さんの自室の鍵を置いておくので荷物を自室に置き15時に再度この教室に戻ってきてください。それでは入学式お疲れ様でした。」
黒羽根のヤバさが予想以上だったのか、すっかり敬語になってしまった石澤であった。
ガラガラガラ
と、先生が出ていったのにも関わらず誰一人として話し始める者はおらず。そのまま十数秒が経った頃、黒羽根が静寂を破る。
「ハッ!しまった。早く祖国へと戻らなければ!」
そういって黒羽根は教室の扉付近に置いてある鍵を取ると
「まるで、石化の攻撃を受けたかのようだな、、、、ハッ!そうか!このプルマシュバルツの妄想力漏れ出ているのか!これは済まない事をした、諸君よ。では、アベオ(挨拶)」
と、一人呟き、納得し、挨拶をして教室を出ていった。
こうして、入学初日から黒羽根 銀地 の名前は、学校内外で有名になり、そしていつしか
「私立英才高校には、厨ニ病のやべえヤツがいる」
と、囁かれるようになった。
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