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糠壁市奇譚

糠壁市奇譚:川童の伝説。

作者: 桜桃露雨

 糠壁市東部を流れる、1級河川の刀祢川。糠壁湖より流れ込む西部から東部に流れる糠壁川。


 糠壁川をかつて結んだ渡し場の跡地に立つ記念碑には、こう書かれている。

『かつて糠壁の渡しと呼びならわされていたが、天文19年(西暦1550年)に起きた糠壁合戦に置いて蘇芳家の家臣である那仁川(なにがわ)塁佐衛門(るいざえもん)照元(てるもと)が、梶蝋家の家臣である恩納(おんな)数寄之助(すきのすけ)平妥(へいやす)の追撃を受け騎馬でこの渡しを泳ぎ切った。その際、後ろから射かけられた数百の矢を一刀の元に切り捨てた。以降、俗称で"矢切りの渡し"と呼ばれる。』


 糠壁市教育委員会が設置した、糠壁市巡り「土地土地の伝承と伝説」によると、この辺りには川童(かわわらべ)と呼ばれる河童が出たという伝説がある。

 日本の河童伝説は西高東低で西に行くほど強力な妖怪と呼ばれ、この辺りでは精々「人に害を及ぼす力もないいたずら妖怪」扱いだ。


 いつもの、暇を持て余した糠大生がこの伝説に飛びつかないわけがない。創学以来、推定で3桁回目の調査になるだろう。


 久しぶりに、バンク渡辺氏率いる「ちびっこギャング」の悪さが今始まろうとしている。

 「あーあたしはパスしとく。母方の実家のほうじゃシャレにならないからね」

 バッテン江戸川女史が、参加を拒否する発言を行った。実家の家業の関係で一度は大学を卒業したけど就職口が無く地方都市に歯科医院を開業するしか道が無かった。実の兄が3人すでに歯科医大を卒業し、うち2人が実家で就職済みで歯科医師3人もいる状況でいかに国試に合格し研修も終えたと言え割り込む気に成れず、趣味で続けていたセラミクス技術方面の第一人者である世良見久寿雄世良見久寿雄(せらみくすお)教授がいる糠大に入りなおした経緯がある。義歯の開発という大義名分を振りかざしセラミクス工学を学ぶため糠大素材工学部に通う歯科医学博士号を持つ31歳の2年生…東京の国立大学大学院で博士課程を終え博士号を取得した…糠大の教授陣よりよっぽど高学歴な女の子?。


 「河童の皿って取り外せるのかな?」

 北海道出身で罠猟の免許を持つ狩猟ガール※第一種は年齢がまだ足りていない。オレオ久永嬢19歳のピチピチ1年生が地元に無い伝説に食いついた。


 「川童って捨て子を育たり、溺れた人を助けたって記録しかないんだよね・・・」

 地元出身のマテン小田が、少しいやそうに発言した。21歳と2番目に若いが年長組が寄り道入学なので、学年で言えば最上級になる3年生。

 地元での就職希望の小田氏にとって、「地元に愛される伝説クラッシャー」な活動はこれ以上やばいと認識している。

 年の離れた姉家の長女である、浅井早苗(あさいさなえ)(9歳)が通う豆井堂スイミング教室に姉の代わりにたまに迎えに行く小田氏は、講師の刀祢水流(とねみずる)にほのかな恋心を持っている。

 市内の水泳教室は、水難除けの意味を込めて刀祢川や糠壁川の川童をモチーフにしたマークを使っているので水流に嫌われたくない小田氏にとっては鬼門である。

 小田氏の通った、銅沢水泳教室は糠壁川上流にある河童沢渕に住むといわれる黒い川童をゆるキャラにしたモチーフが銅=カッパー=河童という連想で採用されていた、豆井堂は刀祢川に住むピンクの川童「子育て川童」をモチーフに採用している。

 

 結局、反対多数でこのたくらみはお流れになった。

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