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140-4000

全自動人間

 この国には昔、“ロボット”と呼ばれる機械があった。人間を模して作られたそれは、人間の代わりに様々な作業を担っていた。しかし、医学の進歩により人間はめざましい進化と発達を遂げ、その機械は不要になり姿を消した。と歴史書で読んだことがある。

 そんなおとぎ話のようなことはにわかに信じがたいが、部品を組み上げ造形された“ロボット”は資料館の映像や写真にも残されている。開発されてから時代を追うごとに、それは我々人間と遜色のない姿になっていった。

 その技術は素晴らしいものだと思うが、強靭な肉体と精神を得た我々にとってはもう必要のないものだ。

 おっといけない、こんな時間だ。今日も無事コドモが出来ているか確認しに行かなければ。

 腕に内蔵された時計を確認する。健康状態などの全てが計測・記録され、国が管理しているデータセンターへ転送される。万が一独りで倒れたときにはセンターから連絡が入り、救急隊が駆けつけてくれる。

 病気や怪我などは病院へ行ってパーツを交換すればあっという間に完治するし、市販されている付属品を装着すれば自動車のように速く走れ、飛行機のように空だって飛べる。……高価なので一部の富裕層しか使用できないが。

 とにかく便利な世の中なのだ。

 無人操縦タクシーに乗り出向いた建物には『●▲製造工場』と書かれた看板がかかっていた。『●▲』の部分は経年劣化によって崩れ落ちたのか、解読することができない。故意に壊されたのではないかと言う者もいるが、なんの必要があってそんなことをするのか、私には理解ができない。

 建物の出入口をくぐり、ベルトコンベアの道を辿る。

 ロボットはいなくなったが、機械はまだ国のあちこちに残っている。人間が作業をするのに面倒なことを、それらが全て請け負っているのだ。

 うんうん、今日も順調に“コドモ”が作られている。子孫繁栄とはこのことだな。

 ベルトコンベアに乗せられた身体のパーツが距離を進めるごとに組みあがり、“人間”になっていく光景はいつ見ても壮観だ。

 行きついた先では、コドモたちが専用ポッドに納まり眠っていた。その中の一人に「やぁ」と声をかける。

 コドモは瞼を開き、こちらを見た。

「初めまして。いまから大事な話をするから、まずはそれからインプットするんだよ?」


 コノくにニハむかし、“ろぼっと”トよバレルきかいガ――。



end

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