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タミーナフ治世緑 第二部第一章

 若き神が聖王にして賢君、タミーナフを頼りに、地上へと降りた、その次の朝、タミーナフの頭には、既にこの先の展望が思い浮かんでいた。

 魔に染まり、堕ちし、かつての神々。その数、合わせて一〇二四柱。

 その頂点に立つは、神々への反逆の首魁にして魔神王、クームベサム。その力、創世にさえ比肩する。

 彼らは人の形をした魔の群衆を従え、地上と神の国へ侵攻を続けていた。

 聖王タミーナフであっても、聖都のつわものであっても、彼らに敵うはずもなし。

 しかしタミーナフは、その瞳で確かに、彼の勝利を見たのだ。

 魔神征伐に出かけようとする王を、側近たちは懇願して、引き留めた。

「おお、我らが王よ、それは死出の旅、定められし負け戦。神々は我らと王を見捨てたのだ。どうか我らが聖都に留まり、我らが民を守り給え」

 涙をこぼし、膝を負って彼らは王に訴えた。

「哀れな子らよ、汝らは、この都を無敵の要塞と信じて疑わぬ。だが我らの星を脅かす存在は、天頂さえ揺るがす軍勢、そして率いるは創世に匹敵せし嵐と砂の主人。彼らにとって、我らが誇る城壁など、砂礫に過ぎず。我らが放つ砲火など、火花に過ぎず」

 タミーナフの言葉に、忠臣は恐怖を覚え、思わず体を震わせる。

「だが恐れるな。我は聖王、魔術の祖、魔を理解し、操りし者。若き神さえ我に頼るというのに、何を恐れることがあろうか」

 王の勇ましき言葉に、臣民は鼓舞され、喜びに心を震わせる。

 王は、その身に様々な道具を纏う。奇跡が結晶となったような魔石と、深淵より生まれた鉱石で作られた三つの指輪、万年の大樹の呪いを秘め、獣すら怯える邪悪な力を放つ杖、魔力の水と、自然界の純粋な元素を混ぜた複数の薬瓶、そして竜の鱗と骨で編み上げられた、至上の外套。

 偉大な王の宝器は、三界の主たちの宝庫さえも恥じ入るほど。

 賢帝の装身具は、四方世界全ての知恵と力を集めたが如き。

 王は供を連れず、たった一人で魔神の跋扈する、魔の領域に足を踏み入れる。

 かつてそこには、命を繁栄させる大河があり、周囲には壮麗な都市が栄えていた。しかし最早その面影は無い。人の代わりに、魔人が住まう魔境と化していた。

 タミーナフを見て、魔人たちは声を荒げる。

「なんだ、人がどうしてこのような場にいる」

「我はタミーナフ、聖都の王、若き神の友なり。魔に堕ちた神々を誅すべく、この地を訪れた」とタミーナフは答える。

「愚かな。そのようなことができる人間がどこにいようか」と魔人たちの主、魔神が現れ、彼を嘲笑う。

「一〇二四柱の魔の神が一柱よ、汝は我が糧となる。汝は我に平伏する。汝の力、我が物としてみせよう。その力を以て、タミーナフ、賢君にして、至上の王たる我が、次の一柱の魔神を調伏する」

 タミーナフは杖を掲げる。すると、周囲の魔人たちは、皆溶けて、霧と化した。魔の神、その力を見て、タミーナフに恐れをなした。

「おお、タミーナフ、汝の力、見事なり。決して我には敵わぬ。我が力、我が存在の結晶を汝に捧げる。我の権能は、今より汝が指に宿る」

 その後、タミーナフは、魔の都にて、一年を過ごす。その間、合わせて三三九柱の魔神が、彼の手によって誅された。これほどの偉業に、全能なる神々すら驚きを隠せず。

 彼に並ぶ人間が、この星に他にいようか?

 三三九柱の魔神の力を携え、彼は次なる魔の地へ旅立った。




『タミーナフ治世緑 第二部第一章より』

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