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68話



領主様のお屋敷の中は華美過ぎず、豪華過ぎず、けれどセンスの良い調度品が嫌味にならないように配置されていて、とてもステキな御屋敷でした。


で、終わればいいのだけどそうもいかないのが現実です。


さて、先行する執事さんに案内されてついた先には同じように封筒を手渡されたらしき人たちが10人ほど、作りのいいソファーに座ったりして落ち着かない風にそわそわとしている。


わかる、わかるぞその気持ち。

執事さんからお好きな席へどうぞ、もうしばらくお待ちくださいと声をかけられて、空いている椅子へと子供達と一緒に座る。ちなみにシャドウは立っておくとのこと。


この中で一番堂々としているのはシャドウだろう。

絶世の美男子が堂々と立って待っている姿は絵になるなぁ・・・と見上げる。

でもどうやら認識阻害の魔法を使っているとのことなのでそこまで注目は浴びていない。

むしろ注目を浴びているのは、部屋の中は大人ばかりのなかでいい子に座って待っている子供であるアルとエル。


うん、かっこかわいいからね。

日本だと子役とかモデルとか言われてもおかしくないと思っているからね!


騒ぐことなくいい子に座っている2人をチラチラと見てくる人たちに、見世物じゃねぇぞ?ってガンを飛ばしそうになる。

そうこうしているとメイドさんらしき人が来て、飲み物を進めてくれる。

2人は果実を絞ったジュースを、自分は柑橘系の果汁で香りをつけた果実水をいただき、それからもうしばらく待つ。

待っている間にもう2組ほど人が来るが、やはり場慣れしていないのだろう、視線がキョロキョロとさまよっている。


わかるよその気持ち。

というわけでしばらく待っていると最初に案内してくれた執事さんがやってくる


「皆さま、大変おまたせいたしました。これより会場へご案内させていただきます。」


と言って、扉を開き、近くにいた人から執事さんの後について歩いていく。

自分たちは部屋の奥にいたので最後についていく。


慣れない靴でここまで歩いて来ていたアルとエルが足を気にしていたのでエルを自分が、アルをシャドウが抱き上げてついていく。

とりあえずせっかく着飾っているので洋服に変なシワが入らないように、じゃないとせっかくこの服を気に入っているエルに申し訳ないからね。


しばらく歩いていると先頭を歩いていた執事さんが扉の前で立ち止まる


「こちらです。皆さまどうぞごゆるりとお過ごしください」


そういって扉を開く。

中は温室になっていてとても広く、中にはテーブルがあり立食形式で食事ができるようになっている。

温室なので花が綺麗に咲いていて、なんというかメルヘンな世界観ですな!


アルとエルが降りるというので降ろして、手を繋いで温室の中に入る。

2人は満開に咲き誇る花の近くに行き、じーっと花を見るので何かあるのかな?と思いつつ同じように見るけれど・・・花以外何もありませんよ。


で、2人を見るとキラキラした目で花をじーっと見続けているのでシャドウにそっと、もしかして妖精さんでもいるの?と聞けば、いるとのこと。

しかも花の妖精の中でもとても可愛らしい、人の近くにいることは滅多にいない妖精らしい。それがニコニコと笑顔で2人に話しかけているそうで、さらにクルクルと踊ってくれているとのこと。


ちくしょう!!見えねぇ!!


「でも、そんな妖精がいるってことはここはそんなにいいところってことでしょ?」


見えないのは本当に残念だ。

ちらっと、ちらっとだけ見せてもらえないだろうか?こう、ほんのちょっとでもと思いつつシャドウにそう聞けば


「たしかにここは居心地がいいな。妖精が気にいるのも分かるな」


そういって、シャドウは温室の中を見回す。

どうやら他にも妖精さんがいるっぽいですね。小さなこう、本とかに載っているフェアリーってやつだよねぇ・・・。

なぜ、なぜ自分には見えないのか・・・。


そんなことを考えつつ、用意されている軽食や飲み物をいただきながら備え付けの椅子に座り、妖精と戯れているのであろう2人を眺めていると


「やあ、よく来てくれたね、楽しんでくれているかな?」


そう、温室全体に通るような響く声がかかる。

声の主は華美ではないが豪華な服を着ていてその斜め後ろに執事さんが立っている。


「領主様だ!」


「領主様がいらっしゃった」


温室がにわかに騒がしくなり、聞こえてくる声にどうやら声の持ち主が領主様っぽい。

領主様は温室を歩き、招待した人たちに順番に声をかけていくのだけど、声をかけられた人は最初こそガチガチに恐縮しているのだけど、幾度か会話をしていくうちに表情が緩み、離れる時には緊張が解けている。


というか、この街に来てしばらく経つが領主がいるっていうことを全く考えてなかったんだよね、なにせイシュタル様とシャドウが全て手を回してくれてこの街に違和感なく溶け込ませていただいているので権力者と関わるなんてこれっぽっちも考えてなかったんだよねぇ。


そんなことを思っていたらアルとエルが戻ってきて自分の服を掴みながら領主様をじーっと見る。

ん?どうしたのかな?


「アル、エル、どうしたの?」


「えっとね・・・あの人の声 どこかで聞いたことあるんだけど」


「エルもきいたことあるとおもうの」


誰だったかなー?と2人が首を傾げていると


「よく来てくれたな、ミツル。アルとエルも今日はステキな装いでびっくりしたぞ」


ニコニコ笑顔の領主様登場です。


「あー!!ルーさんだ!!」


「ルーさん!!」


そんな領主様を見て、2人が思い出したとばかりに名前を呼ぶ


「え?ルーさん?!」


改めて領主様を見る、が、いつも顔を隠していたので顔を見てルーさんですね、とは確信できない。声は・・・たしかにこんな声だったと思うけど


「よくわかったな!どうだ?ここの温室はいいだろう?」


「うん!すっごくここステキ!」


「キラキラしてるの、とてもステキ!」


はーい、ルーさんで正解のようです。

シャドウを見れば、頷くのでシャドウは知っていたのだろう。

わざと言わなかったな。びっくりしたわい!!


「改めて、ルイス・エグゼル

この街、エグゼルの領主をしている。

が、今までと同じようにルーさんと呼んでおくれ」


「「うん!ルーさん」」


アルとエルは笑顔で返事をするけどいやいや、領主様にルーさんって流石にダメだと思うのですが!!


「ミツル、あの店で食事をするのは息抜きでもあるのだ、あまり畏れると寂しいのだながなぁ・・・」


「・・・お、お店ではいつも通りにします。」


しょぼんとする領主様もといルーさんもといルイスさん。

年齢はおそらく50代後半ぐらいだろうか、白髪が多少はあるが歳を感じさせない、体はがっしりしていて若々しさがある。


執事さんを見れば困った方ですというような顔をしている。

なんというか苦労されているっぽいですね。


「旦那様はよく外へお忍びで出かけてしまうのです、最近は貴女のお店によく立ち寄っているようで、せっかくなので今日、正体をばらしてしまおうと黙っていたようですよ」


「うう、人が悪い・・・。」


はっはっはっ、と豪快に笑うルイスさんに、なんだか恐縮するのもなんだかなぁと思い、びっくりさせないでくださいと一言だけ文句を言う。


悪かった悪かったといいつつ、椅子に座り、アルとエル、2人を膝に乗せてしかし、可愛らしいなぁと孫を見るような目で2人を見る。


「ところでそちらの御仁は初めて会うと思うのだが・・・」


「ええ、初めまして。私は普段は店に立ちませんがミツルとアルとエルとともに暮らしているものでシャドウと申します。以後お見知りおきを」


「ふむ・・・・いや、こちらこそ。座ったままでは失礼だな」


そう言って立ち上がろうとするルイスさんを手で制して、お気になさらずと言う。

目だけで会話をするような感じ?でしばらく黙った2人は、ふと、頬を緩ませてこれからもどうぞよろしくと握手する。え?なんか通じ合ったの?


「しかし、ここの温室はいい。」


「我が家で最も心地よい場所でな、なにせ妖精が住み着いていくれている」


そういってウィンクをする。


「ルーさんも見えるの?」


「みえるの?」


「ああ、いつも、ではないが稀に姿を見せてくれる。」


えー、いいなー!!っと口にだしそうになるのを我慢する。そうか、家主には見せてくれるのか


「この後、妻や息子たちも来るのでな、質問責めになるかもしれんが、ミツル、許せよ」


「え?なんですかそれ、どういうことですか!?」


「何、パスタのことをな、ついつい口にしてしまってなぁ」


すまんすまんと笑うルイスさんを一発殴りたくなったのだけど、さすがに殴るわけにはいかないのだが、ええー、それは困るので帰ってもよろしいでしょうか?


「次、来店の際はルーさんだけ、パスタ以外のものを出しますね」


「いや!それは!!本当にすまない!!」


「その分は私がいただこう」


シャドウが意地の悪い笑顔を浮かべて追撃してくれてルイスさんはいやいや、本当に済まない!と謝ってくる。

まぁ、意地悪はこの辺にして、これから来るご家族様との戦いに気合いを入れ直しましょうかね!!




読んでいただきありがとうございます。(*^^*)


うう、思ったよりも長くなってしまってます(T^T)

もう少しだけ領主の館編続きます。

。゜(゜^Д^゜)゜。

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