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08話 エルフの村(2)


 アルヴァノ王国から出発して2時間が経とうとしていたが、ユウマ達は1度も止まることなく、馬を走らせている。

 

「なあ、アイン。そろそろ馬を休憩させたほうがよくないか?」

「まだ大丈夫」

「大丈夫って………」


 1時間ほど前からずっと森の中を走り、代わり映えしない景色に退屈しながら、ユウマはアインに馬を休めることを進めるが、アインは聞く耳を持たずに馬を走らせ続けている。


「あと少し、もう少しだから。待っててみんな!」


 アインは祈るようにさらに速度を上げて、馬を走らせる。

 こうなったら何を言っても聞かないだろう、とユウマは考えて何も言わずただ座ることにする。


 特に誰も喋ることなく、無言でユウマ達を乗せた馬は森の中を駆ける。


 それから1時間くらいがたった頃、マリンがいきなり「………止めて」と言って馬を止まらせる。


「どうかしたんですか?」

「………いる」


 マリンの少ない言葉が全員に伝わり、荷馬車から降り戦闘体制を取る。


「村まではあと少しなんだけど」

「………でも、いる」


 マリンは深呼吸をして、オークの気配を探るように集中する。

 ユウマ達も辺りを見渡しオークを探すが、それよりも早くにマリンが見つけたようで、背中の2mの太刀を抜き一閃すると、太刀から斬撃が出て、ぎりぎり視認できる程の遠さにいる、オークの首を斬り落とす。


「マジか………」

「凄すぎでしょ」

「………!、ご主人様、上です!」


 その瞬間上から棍棒を持ったオークが、ユウマ達めがけて飛び降りてくる。

 ユウマはエレナの言葉を聞いた瞬間にショットガンを抜き、上から来たオークを撃ち抜く。


「ここからは徒歩で行ったほうがよさそうだな」

「………賛成」

「わかったわ」

「わかりました」


 ユウマの提案に皆が賛同すると、村がある場所まで走り出す。

 

 ドパンッ!、ドパンッ!


 前方にいたオーク2体をショットガンで撃ち抜いた先に、村が見え始める。


「見えたわ!」

「よし、行くぞ!───っ!」


 ユウマは悪寒を感じ後ろに跳躍すると、先程までユウマがいた場所を、斬撃が地面をえぐりながら通り過ぎていく。

 一瞬でも回避するのが遅かったら、ユウマは斬撃に斬り刻まれていただろう。


「あっぶねー!」

「大丈夫ですか、ご主人様!」

「ああ、なんとか」


 ユウマ達は斬撃が飛んできた方を見ると、そこには剣を持った1体のオークが、佇んでいた。


「あれがオークウィザードか」

「ええ、そうよ」

「………いく」


 そう言うとマリンは、オークウィザードに向けて斬撃を飛ばす。

 斬撃は吸い込まれるようにオークウィザードめがけて飛んでいき、直撃する寸前、


 ガキィィィン!!!


 斬撃は不可視の障壁に防がれる。

 

「………防御魔法」

「鉄壁の守りってわけか。おもしれえ、障壁ごと撃ち抜いてやるぜ!」


 ユウマはオークウィザードめがけて走り出し、そのすぐ後ろにエレナも追従する。

 周りに散らばっていたオーク達が、ユウマ達のところに集まり始める。


「これは早めにオークウィザードを倒さねーと、面倒なことになりそうだな」

「私が囮になりましょうか?」

「いや、俺が囮になる。その間にオークウィザードの障壁に、攻撃しまくってくれ」

「わかりました」


 ユウマは右に、エレナは左に、それぞれオークウィザードを囲む形で走る。

 ドパンッ!、ドパンッ!、とユウマは走りながらもオークウィザードにショットガンを発砲するが、破るどころかヒビも入らない。


「どんなけ硬いんだよ!───っと」


 障壁の硬さに悪態をつきながら、オークウィザードの斬撃を紙一重で回避するが、回避した先にオークが棍棒を振りかざす。


「させない!───“風刃”」


 アインがすかさず風魔法の風刃を使い、風の刃でオークの首を跳ねる。

 

「助かった、アイン」

「どういたしまして」


 アインは風刃を使いながら、ユウマの近くにいるオーク達を次々に倒していく。

 ユウマも負けじとオークウィザードに接近を試みるが、周りのオーク達が邪魔で接近することが出来ない。


 両手のショットガンでオーク達を蹴散らしながら、オークウィザードに向けて走る。


 右からオークが棍棒を振りかざそうとした時、斬撃がオークを縦に真っ二つにして、ユウマに直撃するが、寸前のところでショットガンをクロスにして防ぐが、斬撃の方が重く後方に吹き飛ばされる。


 かなりの勢いで吹き飛ばされ、木をいくつも破壊し、勢いが収まり木に激突してようやく止まる。


「がはっ!」


 口から血を吐き、その場にうずくまるような体制を取る。

 

「ご主人様!」

「大丈夫だ!こっちに来なくていい!」


 エレナはユウマの元に走り出そうとするが、ユウマがそれを止める。

 うずくまっていても敵の攻撃が止むわけもなく、オーク2体が接近し棍棒をユウマめがけて振りかざす。


 寸前のところで上に跳躍し、90度回転し反転した世界の中、オーク2体の頭を撃ち抜く。


「全然減らねーな」


 辺りを見渡し次から次へと出てくるオークに、ユウマは悪態をつきながら後から接近していたオークを撃ち殺す。

 

「これは早めにオークウィザードを倒さないとヤバそうだな。───“創造(クリエイト)”」


 ユウマは早急にオークウィザードを倒すことを決め、創造魔法を行使する。

 自らの魔力を原動力とし、魔力を一点に収束させてそれを一気に放出するレーザービームを作り出す。


「レーザービームってダサいから、名前は光線銃でいいか」


 そう言って光線銃に魔力を込めると、横にある3つの長方形の形をしたものが、一番下から順に赤、緑、青と溜まっていく。


「これで溜まったってことか?とりあえず撃って見るか」


 1体のオークに標準を合わせて、光線銃の引き金を引くと、収束した魔力が膨大な光に変換され、地面をえぐりながらオークに直撃する。


 直撃したオークは塵になり、その直線上にいたオークも巻沿いをくらい、塵に早変わりする。

 威力が落ちることなく木を何十本も破壊し、100mくらいしたころ、ようやく死の光が消える。


「ヤバイな、これ」

「………私、周りのオーク倒す。ユウマ、オークウィザード任せる」

「お、おう」


 今日マリンに出会って話した言葉は最低限、相手に伝わるような短い文章で、長い文章は喋れないと思っていたが、予想に反して長い文章を話して来たので、ユウマは驚き、つい言葉が詰まる。


 マリンは宣言通りオークウィザードの直線上にいるオーク達を、次々と倒していく。

 その手際はよく、斬撃を飛ばし、時には首を跳ねて、小柄な体型を活かして戦場を駆け回る。


 それに続くようにユウマも屍の中を走り、オークウィザードに接近する。

 だが、オークウィザードも簡単には接近を許さない。


 無数の斬撃をユウマめがけて飛ばし、光線銃を持っているユウマはその重さに回避が間に合わないと考え、光線銃を捨てることを考えるが、その斬撃はユウマを斬り裂くことはなかった。


 エレナがユウマの前に出て、斬撃を全て斬っていたからだ。


「斬撃は私が斬ります!ご主人様はオークウィザードを!」

「わかった!ありがとうエレナ!」


 エレナはユウマの前を走り、飛んでくる斬撃を全て斬っていく。

 ユウマはエレナの後ろを走りながら、光線銃に魔力を貯めていく。


「よし、行ける。エレナ!交代だ!」

「はい!」


 最後の斬撃をエレナは斬り、ユウマと前後交代する。

 エレナの前に出たユウマは、オークウィザードに標準を合わせて、その引き金を引く。


「いっけぇぇぇぇぇ!!!!!」


 全魔力を収束して光に変換され、地面をえぐりながらオークウィザードめがけて飛んでいく。

 そしてオークウィザードの不可視の障壁に直撃する。


「俺の全魔力でお前の障壁を打ち破る!」


 光線銃は障壁を攻撃し続け、次第に亀裂が入っていくが、ユウマの魔力も、もう限界に近い。


 オークウィザードのピンチを周りのオークが見逃すわけもなく、ユウマに接近するが、エレナとマリンが近距離で、アインが遠距離でオークを倒して、接近を許さない。


 次第に障壁全体に亀裂が入り、あと少しのところまでくる。

 

「壊れろ!!!」


 僅かな魔力を絞り出し、障壁にぶつけると、


 パリンッ!


 という音がして、ついに不可視の障壁が破られる。


「今だ、エレナ!」

「はい!───“雷走”」


 エレナは雷魔法の“雷走”を使い、雷のような速さで敵の背後に移動する。


「はあぁぁぁ!!!」


 エレナの気合いの一閃は、見事にオークウィザードの首を跳ねる。

 首を斬られたオークウィザードを見て、残り数体のオーク達は次々に逃げるように、ユウマ達から距離を取り、走り出す。


 だが、そう簡単には逃がすまいと、マリンが追いかけ、背後から斬り伏せる。

 ユウマは魔力枯渇でその場に膝をつき、心配したエレナはユウマの元に駆けつける。


「大丈夫ですか、ご主人様?」

「ああ、魔力を使いすぎただけだ。最後の一撃、よかったぞ」


 そう言ってユウマはエレナの頭を撫でてやると、エレナは恥ずかしそうに顔を赤くして、気持ち良さそうにしている。

 そして残りのオークを倒したマリンが、ユウマの元にやってくる。


「皆、ありがとう。この村を助けてくれて」

「気にすんな、困ってる時はお互い様だろ」

「そうですよ、アインさん」

「………気にしない」

「皆………」


 ユウマ達の言葉に、心が温かくなるのをアインは感じる。

 これでエルフの村の脅威は去ったのだった。


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