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07話 エルフの村(1)


「お願いします!もう時間がないんです!」

「そう言われましても、今Sランク冒険者はいませんし、Aランク冒険者もほとんどはこの国を離れていますし………」


 リーンは困ったように、目の前の少女の受け答えをする。

 リーンの前にいる少女は、髪がエメラルドグリーンのような色をしており、目も同色で、胸はそこそこでかくて、なんといっても特徴的なのは、その耳である。


 人よりも長く、先は少し尖った形をしているエルフ族なのだ。

 このアルヴァノ王国では、様々な種族が共存しているので、エルフを見かけることも多々あるのだ。


 そして今、そのエルフの少女が、切羽詰まったように、リーンに話しかけている。


「誰でもいいからとにかく人を集めてよ!」

「そう言われましても、状況を聞く限りCランク冒険者やDランク冒険者では荷が重すぎますので、最低でもBランク冒険者からでないとダメなんです」

「じゃあそのBランク冒険者を集めてよ!」

「それは少し難しいと思います。緊急での依頼はあまり人が集まりませんし」

 

 冒険者に依頼をして、それが受注されるのは依頼をしてから約2日かかるのだ。

 それを当日の短時間で集めろと言われても、それは不可能に近いのだ。


「あの〜、リーンさん、どうかしましたか?」

「あっ、ユウマさん。おはようございます。今は依頼の話をしてまして、何か依頼を受けたいのでしたら、他の受付のところでお願いします」

「いえ、依頼じゃなくてエレナの試験の報告に来たんですけど」


 ユウマの後からエレナは、仮の冒険者カードをリーンに見せる。


「昨日のやつですね。わかりました、では確認させてもらいます」

「お願いします」


 そう言ってリーンは冒険者カードを見て、ゴブリン3体を倒しているのを確認する。


「確認が出来ました。おめでとうございます、これでエレナさんはDランク冒険者です」

「ありがとうございます!」


 冒険者カードを受け取ったエレナは、嬉しそうにお礼を言う。

 すると、今まで黙っていたエルフの少女が、いきなり声を荒らげる。


「ちょっと!さっきから何無視してんのよ!」

「うわぁ!びっくりした〜。何だよいきなり」

「何だよじゃないわよ!こっちが先に話してたのに、あんた達が横から割り込んで来たんでしょ」


 エルフの少女は鬼の形相でユウマ達に迫り、あまりの形相にユウマ達は後ずさりする。


「悪かったよ。俺達は違う受付に行くから、あんたはリーンさんに依頼の続きを聞いてもらってくれ。それじゃあ」


 ユウマは手を振りその場を後にしようと歩き出した瞬間、肩をガシッ、と掴まれる。


「何勝手に行こうとしてるのよ。まだ話は終わってないんだけど」

「はあ?だから悪かったって言ってるだろ」

「それはもういいの。用があるのは依頼のこと」

「依頼?」


 何を言ってるのかわからないといった顔で、ユウマはエルフの少女を見る。 


「そう。あなた、私の依頼受けてくれない?どうしても人手が欲しいの」

「どんな依頼なんだ?」

「それは───」


 エルフの少女が言ったことを要約すると、東の森にエルフ達が住んでいる村があり、そこにオークの群れが襲ってきたそうだ。


 オークの群れの数は50に対して、エルフの総数が30という数の差があるが、エルフは地の利を活かして必死の抵抗を見せた。


 だが、それも1体のオークが現れるまでのことだった。

 戦闘が始まって少しした頃、最前線に1体のオークが現れた。


「それが、オークウィザード」

「オークウィザード?」

「ええ、魔法を使うオークよ」

「オークが魔法⁉」

「オークって魔法使えるんですか?」


 エルフの少女が言った言葉に、ユウマとエレナは驚き、自分の認識を改める。


「魔法を使えるのはオークウィザードだけよ。でも、そいつが現れてから一気に形成が逆転されて、10人くらいが殺されたの」

「そいつが一番やばいってことだな」

「ええ、そうよ。だからお願い。私達を助けて」


 懇願するようにエルフの少女は、ユウマを見つめる。

 ユウマはしばらく悩んだあと、エルフの少女に告げる。


「わかった。その依頼受けるよ」

「本当!ありがとう!」

「ちょ、ちょっと待ってくださいユウマさん!ユウマさんのレベルじゃまだ駄目です。」


 嬉しそうにするエルフの少女を無視し、リーンは急いでユウマを止めにかかる。


「オークの数は50体なんですよ!それにオークウィザードまでいるのに、ユウマさん達3人じゃ無理です。せめてAランク冒険者がいないと駄目です」

「………私、行く」


 リーンが興奮しながらユウマを説得していると、冒険者ギルドに入って来た1人の少女が、リーンに声をかける。


 ねずみ色の髪をしており、身長は155cmくらいの小柄な体型をしていて、胸はぺったんこだが、身長の2倍くらいはある太刀を背中に背負っており、かなり目立っている。


 年齢は17くらいの少女が、ユウマ達の元へ歩いて来る。


「マリンさん、今のは本当ですか?」

「………本当」

「マリンさんが行くのでしたら、ユウマさん達も行っても大丈夫ですね」

「あの、この人は?」


 ユウマは突然現れた少女について、リーンに詳細を求める。


「この人はマリンさんといって、Aランク冒険者なんです」

「この人がAランク冒険者なんですか?」

「そうですよ。でも、マリンさんだけじゃまだ心配ですね」


 リーンは心配そうにユウマ達とマリンを交互に見ながら、心配そうに唸る。

 すると、リーンの隣にいたマリンが、リーンに向かって右手の親指を立てる。


「………だいじょうぶ」

「まあ、マリンさんがそう言うなら」

「よし、じゃあさっそく行こう。あ、そういえば自己紹介がまだだったな。俺はユウマ」

「私はご主人様の奴隷のエレナです」

「私はアインよ。よろしく」

「………マリン」


 一通り自己紹介を終えて、ユウマ達は冒険者ギルドを後にし、29番地にある厩舎へと来ていた。


「ここで馬を借りるの」

「馬って高いんじゃないのか?」

「まあ、そこそこ高いけど大丈夫よ。ここの店主とは顔馴染みだから」


 そう言ってアインは厩舎の中に入っていき、それに続くようにユウマ達も厩舎に入っていく。

 中に入ると馬の為の餌や、馬に付ける部品など色々売られており、奥には受付のような場所があり、そこには筋肉質な男が座っている。


「こんにちは、ガルさん。馬を借りに来たんだけど」

「おう、アインちゃんじゃねーか。いつもの馬でいいか?」


 どうやら顔馴染みの店主というのはガルという男のようで、アインと親しげに話している。

 一見ガタイがよくて怖そうに見えるが、アインとの会話を聞いていると、愛嬌がよく親しみやすい性格のようだ。


「───だから荷馬車をつけて欲しいの」

「そういうことなら任せろ!外で待っときな、すぐに用意してやる」

「ありがとう、ガルさん!」


 ユウマ達は外に出て、用意が出来るまで待っていると、アインがガルと出会った経緯を話しだした。


「ガルさんと初めてあったのが1ヶ月前くらい前のことで、エルフの村からアルヴァノ王国まで馬で3時間くらいかかるんだけど、休憩の為に馬を休ませてると、シャドウウルフの群れが現れたの」

「ちょっと待て、エルフの村まで3時間もあるのか⁉」

「そうだけど、言ってなかった?」

「言ってねーわ!」


 話しの途中でユウマはどうしても気になって、アインに尋ねると、アインはキョトンとした顔で頷く。

 ユウマは目頭を押さえてため息をつく。


「続きをどうぞ」

「それでね、馬がびっくりしちゃって逃げちゃったの。馬がなくなったから仕方なく歩いてアルヴァノ王国まで歩いてたんだけど、もう満身創痍で倒れる寸前に馬に乗ったガルさんと出会ったの」

「まるで白馬の王子様だな」


 乙女の永遠の憧れとも言われている王子様が、あんなに筋肉質な男だとちょっと残念だな、と思いユウマは苦笑する。


「なによ、何かおかしいところあった?」

「いや、何でもない」

「なら、笑わないでよ。それでね、アルヴァノ王国まで乗せていってくれたの。それからだんだん話すようになって、今では結構仲いいのよ」


 何故かアインはそこそこある胸を張り、自慢げな顔をしている。

 

「素敵な出会いだったんですね」

「………素敵」

「そうでしょ!」


 エレナとマリンの賛同を経て、アインは凄く嬉しそうに笑う。

 すると、厩舎から荷馬車を付けた馬とガルが出てくる。


「待たせたな」

「わぁ〜、立派な馬」

「………立派」

「ありがとうガルさん。はい、これお代」

「おう、気をつけて行ってこい」


 マリン以外は荷馬車に乗り込み、マリンは馬の手づなを引くために前に座る。


「それじゃあ、行ってきま〜す」

「行ってこい!」 

  

 ガルに手を振り、ユウマ達はエルフの村に向かうのだった。

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