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05話 キャロン


「この辺りだと思うんですけど」


 ユウマ達はシャドウベアーを見つけた場所まで来たが、そこにシャドウベアーの姿は見当たらない。


「どこかに移動したのかも知れないな」

「その可能性が高いですね」


 周りを見渡し、シャドウベアーが見当たらない可能性を話し合う。


「もう少し奥に行く、いつでも戦える体制を取っておけ」

「了解です」

「わかりました」


 セナの命令でユウマとエレナはそれぞれの武器を手に取り、辺りを警戒しながら森の奥に進んでいく。

 10分くらい歩いた頃だろうか、それは突然現れた。


 グガァァァァァ!!!!!


 魔物の咆哮が森の中に響き渡り、ユウマ達は戦闘体制を取る。

 前後左右見渡しシャドウベアーの姿を探すが、その姿はない。


 絶対に近くにいるはずだ、とユウマは先程の咆哮の大きさから推測する。


「最優先はシャドウベアーの討伐だ。君達のことは守れない。自分達でその身は守れ」

「わかりまし───」

「ご主人様!下です!」


 セナの容赦ない言葉にユウマはうなずき返そうとすると、その言葉を遮るようにエレナは叫ぶ。

 ユウマは一瞬の疑いもなく後ろに跳躍すると、今までいた場所の地面の影から、シャドウベアーが噛み付くように出てくる。


 少しでも回避が遅ければ、今頃あの牙に噛み殺されていただろう。

 エレナは獣人の特徴である耳を研ぎ澄ませ、敵が襲う一瞬前に危険を察知したのだ。


「やっと現れたか───ふっ!」


 セナは敵が襲う前に危険を察知し、後ろに跳躍して攻撃を回避し、木を蹴って一気にシャドウベアーに接近して、白い剣を振るう。


 だが、シャドウベアーの1m手前で、地面の影から山のような壁が出来上がる。

 セナは構わず剣を横に一閃し、壁を壊すがそこにシャドウベアーの姿はない。


 シャドウベアーは影の中に潜り、セナの背後から飛び出て右の爪でセナの背中を攻撃しようとするが、それをわかっていたかのようにセナは半回転して背後を向き、白の剣と右の爪がぶつかり合う。


 ガキィィィィン!


 森の中に剣と爪がぶつかり合った音が響く。

 セナとシャドウベアーは共に地面に着地し、相手の行動を伺うように睨み合う。


 数秒睨み合った後、シャドウベアーが先に動いた。

 グガァァァ!!!と咆哮を上げると、地面や木の影から黒い針のようなものが無数に現れ、セナではなくユウマとエレナに向かって飛んでくる。


「ちっ!ここでこっちに来んのかよ!エレナ!自分に飛んでくる針だけを斬り落とせ!」

「わかりました、ご主人様!」


 あらゆる影から黒い針が生まれ、ユウマとエレナに向かって飛んでくるのを、ユウマは2丁のショットガンで、エレナは剣で、それぞれ相殺する。


 ドパンッ!、ドパンッ!、ドパンッ!


 前、右、後、左、と五感を限界まで高めて、次々と黒い針を相殺していくユウマ。

 対してエレナは縦横無尽に動きまわりながら、剣で斬り落とし、時には回避してなんとかやり過ごしている。


 それを横目に見ながらセナは、もう1本の青い剣を抜く。


「この剣を抜いた以上お前に勝ち目はない。死ね、シャドウベアー。───ふっ!」


 セナが青い剣を横に振った瞬間、その直線上のすべてが凍りつく。

 地面、木、シャドウベアーまでもが一瞬にして凍りつき、その空間だけ極寒地帯に生まれ変わる。

 

 セナがSランク冒険者にまで成り上がったゆえんともいえる。

 セナは剣の才能もあり、氷魔法の適性まであったいわゆる天才という訳だ。


 普通剣の才能があれば、魔法の適性がなく、逆に魔法の適性があれば、剣の才能がないのだが、セナはその両方があり、稀に見る魔法剣士という訳だ。


 そのひと振りを側で見ていたユウマはゴクリ、と唾を飲む。

 たったのひと振りで辺り一面を凍らせる何て、どれほど強いんだ、とユウマは考える。


 Sランクというのは伊達じゃないというのを、感じ取った瞬間だった。


「それじゃあ帰ろうか」

「は、はい」


 この人を絶対に敵に回してはいけない、とユウマは一瞬で感じ取り、セナの後ろをエレナとついて行くのだった。



「無事シャドウベアーを倒せたんですね、お疲れ様です」


 冒険者ギルドに着いたユウマ達は、リーンにシャドウベアーを倒した旨を伝える。

 

「これで当分は大丈夫だろう」

「そうですね、本当にありがとうございます」

「それじゃあ、私はもう帰るから」

「はい、お疲れ様です」


 そう言うとセナはリーンに背中を向けて、冒険者ギルドをあとにした。

 

「あの、俺達も帰りたいんですけど………」

「あ、はい。色々と面倒なことをすいません」


 リーンがユウマに頭を下げて謝罪するが、ユウマは「いえいえ」と手を横に振り、宿のことを聞いてみることする。


「どこか、おすすめの宿ってないですか?俺達宿を探していて」

「宿ですか?そうですね………キャロンですかね」


 リーンはう〜ん、と唸りながら、1つの宿屋の名前を出す。


「キャロンは25番地にある宿屋で、旦那さんと奥さんと娘さんが経営している宿屋なんです」

「キャロンですか、ありがとうございます。行ってみます」


 ユウマはリーンにお礼を言って、冒険者ギルドから出る。


「じゃあさっそく行ってみるか」

「はい」


 ユウマとエレナは先程リーンに教えてもらったキャロンに行くため、22番地に足を進める。

 

 ✼


「ここのようですね」

「ああ、そうだな」


 ユウマとエレナはキャロンと書かれた看板の前に立ち、扉の取っ手に手を掛けゆっくりと扉を開ける。


「いらっしゃいませ!今日は宿泊ですか?それとも食事ですか?」

「宿泊で」


 ユウマとエレナを出迎えたのは、エプロンを着けた中学生くらいの女の子だ。

 

「朝と夜の食事付きで1日銅貨5枚です。何泊しますか?」

「とりあえず2日で」

「2日ですね。銅貨10枚です」

「はい」


 ユウマは銅貨10枚を女の子に手渡す。

 何か買うかもしれない以上、出費は最低限しないといけないので、支障をきたさない程度に支払う。


「お名前を聞いてもいいですか?」

「俺はユウマだ。こっちはエレナ」

「エレナです。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします。私はサエです。それでは部屋に案内させていただきます」

「ああ」


 キャロンの店は、1階が受付と食堂になっていて、2階が宿泊用の部屋になっている。

 部屋は全部で10部屋あり、階段を登った先の通路の両脇に、それぞれ5部屋ずつという構図になっている。


「ユウマさん達の部屋は109号室です。これが鍵です。食事は朝晩7時なので遅れずに。遅れたら食事が出ないので早めにお願いします」

「わかった。ありがとう」


 ユウマはサエから鍵を受け取り、部屋の中に入る。

 部屋の中は、入って左奥にベットが1つ置かれていて、真ん中に机と椅子が2つ置かれている。


「シンプルでいいな」

「はい、そうですね」


 ユウマとエレナは部屋を見渡し、思ったことを口にする。


「はぁ〜、疲れた〜」


 ユウマはベットに腰掛け、伸びをして倒れ込む。

 ポンポンと空いた場所に来るように伝えると、エレナもユウマの横に腰掛ける。


「何か今日は色々あったな」

「そうですね」


 ユウマは今日あったことを遡りながら、重い瞼をゆっくり閉じる。


「夜ご飯になったら起こしてくれ」

「わかりました。おやすみなさい」


 疲れのせいか、ユウマは瞼を閉じるとすぐに眠りについた。

 エレナはユウマの寝顔を見て、小さく微笑んだ。


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