38話 愛莉
「勇………者?」
ユウマは絞り出すように、その言葉を口にする。
圧倒的なプレッシャー、全てを包み込むような温かさに包まれる。
「もう大丈夫、安心して下さい。皆さんは早くこの階層から出て下さい!」
勇者の切羽詰まった言葉に、ユウマはやっと思考がクリアになる。
「いや、俺達も戦う。こんな所で、引き下がれねーんだよ!」
そう言ってユウマは、勇者の首筋ギリギリにショットガンを撃って、勇者に攻撃しようとしていたアンデッドを倒す。
それを見た勇者は、目を見開き、ユウマを凝視する。
「あなた、もしかして………」
「その話は後だ! 今はこいつらを片付けるぞ!」
「いや、勇者様には敬語使いなさいよ…」
アインは呆れたような顔で、ユウマに注意しながらも、“風竜”でアンデッドを蹴散らす。
今度はエレナも下がりながら、“雷竜”で敵を倒し、勇者の道を開くために、支援する。
「皆さん、ありがとうございます!」
指揮官の道が開けた瞬間、勇者は一気に肉迫する。
「はぁぁぁ!!!」
指揮官はすぐに防御魔法を張るが、勇者にそんなもの効くわけがなく、あっさりと破られ、首を跳ねられる。
指揮官の命が絶えた瞬間、アンデッドも砂のように消えていく。
「みなさん、ご協力ありがとうございます。お陰で倒すことが出来ました」
「私達は何もしていません。勇者様のお陰です」
勇者はユウマ達にお礼を言うと、剣を鞘に納めて、ユウマ達の所まで歩いてくる。
「自己紹介がまだでしたね。私は愛莉といいます」
「俺はユウマだ。こっちがエレナとアイン、そっちがディアとシーナとセレアだ」
ユウマは順番にエレナ達を紹介していく。
一通りの説明を終えると、愛莉が気になっていることを、ユウマに尋ねる。
「あの、ユウマさん。あなたもしかして、私と同じ、日本から来たんですか?」
「やっぱりバレてたか。まあ、ショットガン出てきた瞬間に、気づくよな」
ショットガンを撃ったあの時、愛莉はユウマではなく、ショットガンの方を見て驚いていたので、もしかしたらバレてるんじゃないかと思ったユウマだが、どうやらその予感は当たっていたようだ。
「ショットガンもそうですが、私と同じ黒髪と黒目なので、もしかしたらと思ったんです」
「まさか日本から来た人が他にもいたなんて、俺も驚いたよ」
ユウマは苦笑しながら、愛莉と話していると、エレナとアインの耳が、ぴくぴくと動く。
「ご主人様、何か来ます」
「数は5、いや、6人よ」
「ここまで来るってことは、それなりの実力があるってことだよな。岩陰に隠れて様子を見よう」
ユウマ達は岩陰に隠れて、6人組のパーティーを待つことにする。
暫くすると、武装した6組が歩いて来た。
「流石にここまで来た奴はいねぇか」
「俺達が活発化させた魔物に殺されてるんだろ」
「違いねぇ」
男達は笑いながら、ユウマ達が隠れている岩陰を通り過ぎていく。
向こうに行ったのを確認してから、ユウマ達は岩陰が出て行く。
「今、俺達が活発化させたって言ってたよな?」
「はい、言ってました」
「どういうことでしょうか〜」
ユウマ達は、男達が話していた内容について話し合っていると、セレアがある仮説を立てる。
「もしかしたらあの人達、魔人族ってことはない?」
「魔人族? そんなことありえるのか?」
「確かに可能性はあるのじゃ。この階層まで登ってこれるのは、ごく僅か。Sランク冒険者くらいしか、この階層まで登ることは不可能なのじゃ」
セレアの言葉に、ディアは可能性を感じ、考えていることを、ユウマ達に話す。
「そして、Sランク冒険者にあの人達は見たことない。この迷宮都市でも、Sランク冒険者の顔を見たけど、いなかったからね」
「セレア、そんなのいつの間に見てたんだよ」
ユウマは苦笑しながらセレアに言うと、セレアは自慢げに胸を張って、ユウマに向かって、ピースサインを送る。
抜け目ないな〜、とユウマは内心思いながら、あの6人組の正体を決定づける。
「ってことは、やっぱりあの6人組は魔人族ってことか」
「多分ね。あんまり関わらない方がいいわ」
もう少しここに滞在して、魔人族と思われる6人から距離を離すことを決めたユウマ達は、再び馬車に入って、休息をとる。
「とりあえず30分くらい休むか」
「そうですね」
ユウマ達は馬車で、30分間の仮眠をとる。
✼
「……マ、ユウマ、起きるのじゃ」
「う……ん、ん? ディアか?」
ユウマは重い瞼を擦りながら、起こしに来たディアの顔を見る。
すぐに頭がクリアになり、あれから30分立ったことがわかる。
「もう30分立ったのか。早いな……」
ユウマはのっそりと起き上がると、馬車から降りて周りを見渡すと、既にエレナ達は外に出ていて、ユウマが最後のようだった。
「みんなおはよう。早いな」
「おはようございます、ご主人様」
ユウマの挨拶にエレナが答えて、ユウマ達は先に進むことにする。
馬車に乗り込んだユウマ達は、魔人族と思われる6人が通って行った道を進む。
少し進むと、すぐに71階層に続く階段を見つけ、ユウマ達はなんの躊躇いもなく、その階段を降りる。
そして71階層は、灼熱地獄が待っていた。
マグマのように熱く、所々火柱見たいなものも立っている。
この階層に来た瞬間、全身から汗が吹き出す。
「何ここ、熱すぎ………」
「熱くてヘトヘトです〜」
服をパタパタさせながら、この熱さに文句を垂れていると、いきなり隣の火柱が、ユウマ達に向かって飛んて来る。
「……なっ!」
ユウマは驚愕の表情を作るが、すぐにアイテムボックスから盾を取り出し、火柱を受け止める。
ジューっと、盾が焼ける音を響かせるが、なんとか無事に盾は溶けずに、受け止めた。
「なんとか食い止めれたか……」
「火柱が飛んで来ることがあるんですね」
エレナがそう言い、他に火柱がないか確かめる。
「この近くにはありませんね」
「そうみたいだな。まあ注意しながら進んで行こう」
こうして、ユウマ達の71階層の攻略が始まった。




