37話 70階層
「今じゃ、セレア!」
「了解!」
ディアの背後からの攻撃を、ミノタウロスは斧で防ぎ、その隙にセレアは、がら空きになった背中に銃を連射する。
何の抵抗もなく、ミノタウロスの背中に弾丸が被弾して、ミノタウロスは苦痛の叫び声をあげる。
ミノタウロスは背後を向き、セレアに向かって走り出そうとするが、ディアはミノタウロスの右脇を蹴り飛ばし、数メートル先まで吹き飛ばす。
この好機を逃すまいと、セレアは銃を撃とうとするが、セレアの横を凄まじい速度で、弾丸が通り過ぎていき、ミノタウロスに被弾した瞬間、大爆発を起こす。
こんなことを出来るのは、1人しかいないとわかっており、セレアは後ろを振り向くと、先端から煙が出ている銃を持ったユウマがいた。
それも当然ミノタウロスを相手しながら、セレア達の動きを的確に把握して銃を撃ったのだ。
「ミノタウロスの攻撃を避けながら、こっちの行動も見ていたなんて………」
「流石ユウマじゃ。負けられないのじゃ!」
ディアはユウマのすご技に興奮し、指揮が高まったようで、ミノタウロスに肉迫する。
セレアも少なからず興奮したのか、不敵に笑い、銃の標準をミノタウロスに合わせる。
「ユウマ君には負けてられない!」
ミノタウロスの右腕に銃を発泡すると、被弾した瞬間に爆発を起こす。
「さっきのユウマ君までとはいかないけど、結構効くでしょ? ディア、やっちゃって!」
「わかったのじゃ!」
ディアは右手だけ竜化して、ミノタウロスの顔を殴りつける。
地面にクレーターを作り、ミノタウロスはピクリとも動かなくなる。
「こっちは終わったのじゃ」
「後はユウマ君の方ね」
ディアとセレアはユウマ達の方を見ると、ミノタウロスは傷だらけで、もうすぐで倒しそうな状態だった。
「エレナ! 同時に行くぞ!」
「はい!」
ユウマの合図と共に、エレナとユウマは、それぞれミノタウロスの前と後ろに走って行く。
ミノタウロスは前と後ろをチラチラ見ていると───
「───“風竜”」
アインは風の竜を作り出すと、ミノタウロスに頭部めがけて噛み付く。
それをすぐに反応したミノタウロスは、斧で風の竜を倒すが、それは悪手だった。
「やっぱそうするよな」
ユウマは新夜叉でミノタウロスの右腕を斬り落とし、反対方向から、エレナがミノタウロスの首を斬り落とす。
「よし、終わり!」
「やりましたね!」
「楽勝だったわね」
三者三様の感想を述べ、セレアとディアの援護に向かおうとするが、既に終わっており、こちらに向かって歩いて来る所だった。
「無事終わったようだな」
「そのようですね」
それからユウマ達は、セレアとディアと合流し、再び馬車を走らせようと準備をしていると、前方から冒険者が歩いて来るのが見える。
「あんたら、この先の層に進むのか?」
「ああ、そうだ」
男の問いにユウマは答えると、男は周りを見渡し、声を潜めてユウマに助言する。
「悪いことは言わねぇ、引き返せ。こっから先は活性化した魔物がうじゃうじゃいやがる。俺達は勇者様が助けてくれたからよかったが、もう勇者様も先に進んじまった」
「勇者?」
ユウマは気になる単語を聞くと、男は興奮したように説明する。
「聞いてくれよ! 俺達がピンチの時に、勇者様は颯爽に現れて、俺達を助けてくれたんだよ! あ〜、かっこよかったな〜」
男は助けてくれた時のことを思い出しているのか、凄く興奮した様子でユウマ達に伝える。
それを聞いたユウマは、顔には出さないものの、内心は凄く驚いているのだ。
俺と同じ日本から来たってことだよな。しかも勇者ってことは、それなりの地位があって、もしかしたら元の世界に帰る方法を知っている可能性もある。と、ユウマは考える。
「とにかく、こっから先はマジでやばい所なんだ。行くなら死を覚悟しといた方がいい」
男は必死の形相で、ユウマ達に伝える。
ユウマはそれを聞いても尚、決意は変わらず、不敵に笑う。
「忠告ありがとう。でも、俺達の決意は変わらない。俺達はこの先に進むよ」
「そうか、わかった。くれぐれも気をつけろよ」
「ああ、有力な情報ありがとう。助かったよ」
ユウマはそう言い、男達と別れてから、馬車に乗り込む。
「最深部まで行くのは変わらないけど、その前に勇者に会っておきたい。話を聞く限りだと、結構強いはずだ」
「わかったわ。仲間になってくれたら、ラッキーってことで」
今後の方針を簡単に決めたユウマ達は、馬車を走らせる。
✼
「範囲攻撃だ! 少しでも多くの敵に当たるようにするぞ!」
『了解!』
ユウマ達が今いるのは、迷宮都市の70階層で、辺りは薄暗く、周りにはガイコツのアンデッドの大群が、ユウマ達を取り囲んでいる。
「あの奥にいるのが、指揮官だ! 回復役も担ってる! あいつを倒さないと、永遠に終わらないぞ!」
「ご主人様、私があいつを倒します!」
「わかった、みんな! エレナの道を開くぞ!」
ユウマは軽機関銃を取り出して、周りのアンデッドを一掃する。
続けてディアのブレスで、直線上のアンデッドを屠る。
「───“雷走”」
エレナは雷のような異常な速さで、奥にいる魔法使いの指揮官に向かって走って行く。
指揮官の前にはまだまだアンデッドがいるが、セレアはその1体1体を確実に無力化する。
「───“風竜”」
続けてアインは風の竜を作り、残り少ないアンデッドを倒す。
そして指揮官の前には、アンデッドがいなくなる。
「今だ、エレナ!」
完全にフリーになった魔法使いの指揮官に、エレナはその剣を振るうが、寸前の所で、指揮官が張った防御魔法に防がれる。
「………なっ!」
エレナは驚愕の声を上げた次の瞬間、右からアンデッドの剣が襲いかかる。
「エレナ! すぐに後退しろ!」
ドパンッ!とユウマはショットガンを撃ち、アンデッドの剣を弾き飛ばす。
そしてエレナは、急いでユウマ達がいる所まで帰って来る。
「すいません、ご主人様。防御魔法を破れませんでした」
「いや、気にするな。もう1回行くぞ!」
「はい!」
ユウマ達は再びエレナの道を開こうとするが、先程よりもアンデッドの数が数倍にまで増えている。
「さっきよりも、明らかに多くなってる」
「ユウマ、どうするの! このままじゃ、あいつの所まで辿り着けない!」
アインは焦ったようにユウマに言うと、ユウマは軽機関銃で一掃しながら考える。
このままじゃジリ貧だ。いずれ魔力が尽きてこっちがやられる。
「どうすれば………」
ユウマは頭をフル回転させながら考えると、ユウマ達を眩い光を襲う。
ユウマ達はその眩しさに目を瞑り、手で顔を覆う。
そして光が収まり、ユウマ達は目を開けると、そこには艷やかな黒髪と黒目、紺色のブレザーとスカートで、輝くような聖剣を持った、女勇者が立っていた。




