36話 ミノタウロスの脅威
日の光が木々の間から差し込み、ユウマ達が乗る馬車に、温かい光を与える。
ここは迷宮の50階層で、薄暗い迷宮内から一転、木々が生い茂る森の中だ。
「そろそろ中層だな」
「そうですね、気を引き締めないと」
宿で冒険者が話していた内容を思い出し、ユウマ達は気を引き締めて、森の中を馬車で駆け抜ける。
「何か足音が聞こえます。それも結構速い……こっちに向かって来ます!」
エレナが声を荒げて言うので、ユウマは馬車の窓から外を見ると、そこには人の2倍くらいの大きさをしたミノタウロスの斧が、視界いっぱいに広がっていた。
「っ!、盾!」
普段は頭に思い浮かべて、アイテムボックスから収納したアイテムを取り出すが、緊急時で頭よりも言葉で取り出す方が早いと考えたユウマは、すぐに叫び、盾を具現化させる。
そしてミノタウロスの斧が、馬車の木を破壊し、ユウマの盾に激突する。
ユウマは斧の攻撃に耐えきれず、馬車と共に吹き飛ばされる。
馬車はすぐ近くの木に激突し、中に乗っていたエレナ達が、外に放り出される。
ユウマは斧の攻撃を直撃したので、木を3本へし折って、4本目の木に激突して、ようやく止まる。
「がはっ…」
ユウマは苦痛の声を上げて、地面に座り込み、ミノタウロスを睨みつける。
「やってくれるじゃねーか」
ユウマはアイテムボックスに盾を直し、代わりに新夜叉を取り出す。
エレナ達も起き上がり、戦闘体制を取る。
「コイツが活性化したミノタウロスか。みんな、気をつけろ! 油断したら殺られるぞ!」
「そんなこと、わかってるわよ! ───“風刃”」
アインは風の刃を、ミノタウロスに向けて放つと同時に、ユウマはミノタウロスに肉迫する。
風の刃がミノタウロスに直撃しようとした時、持っていた斧で、ミノタウロスは風の刃を潰す。
「そんなでかい斧振ったら、多少のラグは発生するよな!」
風の刃を切った斧が地面に突き刺さると同時に、ユウマはミノタウロスの懐に入り込む。
そして新夜叉を横に一閃して、ミノタウロスを斬ろうとしたその時、ユウマの腹に強烈な痛みが襲い、後方に吹き飛ばされる。
新夜叉がミノタウロスを斬る瞬間、ミノタウロスは斧を持っていない左腕で、ユウマの腹部を殴ったのだ。
不意打ちでダメージを食らったユウマは、木に激突する。
エレナが“雷走”を使おうとした瞬間、ミノタウロスが騒音のような咆哮を上げる。
あまりの音のデカさにユウマ達は耳を塞ぐが、そこにディアの姿はなかった。
チラッとユウマは、はるか上空にいるディアを見る。
今ディアは上空3000mの高さまで飛び、自由落下の要領で急下降する。
「はあぁぁぁ!!!」
右足を突き出して、ミノタウロスの頭に蹴りを入れる。
ミノタウロスは地面に激突して、クレーターを作る。
「これでどうじゃ!!」
ディアは後ろに跳躍して、ブレスで追撃の攻撃をする。
「今だ、一斉攻撃!」
ユウマの合図と共に、エレナ達は一斉に攻撃を開始する。
エレナは落雷、アインは風の刃で、セレアは銃で、ユウマは光線銃と手榴弾で攻撃する。
ミノタウロスの周りが土煙で覆われ、煙が晴れると、そこには力尽きて動かないミノタウロスの姿があった。
「なんとか倒せたか」
「これくらいなら、まだ余裕ね」
「ご主人様、怪我の方は大丈夫ですか?」
エレナはユウマを心配して駆けつけるが、ユウマは大した傷がないのか、大丈夫と言って、手の平を返す。
ユウマはすぐに変わりの馬車を創造魔法で作り、再び出発する。
「結構強くなってたな。でも、まだ戦えそうだ」
「ミノタウロスの攻撃も、ユウマ君なら避けれたんじゃない? もっと慎重に行かないと」
セレアに指摘され、ユウマはその通りだと自覚しており、何も言い返せない。
そうこうしていると、エレナが何かを発見したのか、その表情が険しくなる。
「ご主人様、冒険者がミノタウロスに襲われています!」
「何、本当か⁉」
ユウマは馬車の窓から外を見ると、かなり遠くの場所に、男女2人ずつの、計4人パーティーの冒険者が、ミノタウロスに追われている所だった。
「みんな、助けるぞ! 急いで方向転換だ!」
ユウマの言葉にアインはすぐに馬車の方向を、ミノタウロスの方へ向ける。
「妾は先に行くのじゃ!」
ディアは窓から飛び出し、背中に翼を生やして、ミノタウロスめがけて飛んで行く。
それを追いかけるように、馬車も最大速度で走る。
「た、助けてくれ! こ、こんな所で死にたくない!」
1人の冒険者が転び、ミノタウロスがすぐ側まで来ると、無駄だとわかっていながらも、命乞いをする。
ミノタウロスは何の感情もなく、その斧を振るう。
「う、うわぁぁぁ!!!」
目を瞑り、死の斧で斬られる寸前………
「させないのじゃ!」
斧を横から殴り、その軌道を逸らして、男の10cm横の地面に突き刺さる。
「なんとか間に合ったのじゃ」
ディアは男とミノタウロスの間に立つと、間に合ったことに安堵し、すぐに戦闘体制をとる。
すぐ後ろを走っていたユウマ達も合流し、4人パーティーを森の奥に逃がす。
「さあ、2体目だ」
ユウマは新夜叉を持ち構えると、不意に嫌な予感をして後ろに跳躍すると、さっきまでユウマがいた地面に、ミノタウロスが持っていた斧が突き刺さる。
「ミノタウロスがもう1体います! それも、かなり距離があります!」
「かなり距離があるって、じゃあ今の斧は投げたっていうの⁉」
ユウマ達は、かなり遠くにいるミノタウロスを見て、驚愕の表情を作る。
「ユウマ、前!」
アインの声に反応したユウマは、いつの間にか目の前まで来ていたミノタウロスの、斧の攻撃を、新夜叉で受け止める。
金属同士がぶつかり合った音が森の中に響く。
「セレアとディアは向こうのミノタウロスを頼む!」
「わかったわ!」
「任せるのじゃ!」
ユウマの指示に従い、セレアとディアは、こちらに向かってくるミノタウロスに、肉迫する。
エレナとアインも、ユウマの援護をしようと、ミノタウロスに肉迫する。
「───“雷走”」
「───“風刃”」
エレナは“雷走”で一瞬でミノタウロスの背後に移動し、アインは風の刃で攻撃する。
エレナの剣とアインの風の刃がミノタウロスに直撃する瞬間、ミノタウロスは360度回転して、エレナを薙ぎ払い、アインの風の刃も相殺する。
「きゃぁぁ!」
薙ぎ払われたエレナは、軽く50mは吹き飛ばされる。
その機動力に、アインも驚きの表情を見せる。
「エレナ、アイン、勝てない相手じゃない、焦らずゆっくり行くぞ!」
「は、はい!」
「わかったわ」
こうしてユウマ、エレナ、アインとセレア、ディアのそれぞれの戦いが始まった。




