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34話 迷宮都市


「あれが迷宮都市か………」

「見た目は普通の都市と変わらないんですね」


 馬車で1週間走り、迷宮都市についたユウマ達は、その外観を見て首を傾げる。

 そこには普通の町と変わらぬ外壁と城門があっただけで、他に変わった様子は特にない。


「てっきりそびえ立つ塔とかが、あると思ってたけど、普通の町だな」

「迷宮は上じゃなくて、下に伸びてるの。どんどん地下に進んでいくってこと」


 セレアがユウマ達に説明している間に、馬車は検問へと差し掛かる。


「ギルドカードの提示をお願いします」

「はい」


 門番にギルドカードを渡したユウマ達は、その後なんともなく、迷宮都市に入る。

 中に入ると、色々な種族が道を歩いている。


 エルフ、獣人、ドワーフ、アルヴァノ王国と匹敵するくらいの、多種多様の種族がいる。

 

「色々な種族がいるのね」

「迷宮都市の8割は冒険者が占めているの。まあ迷宮があるからね。そのせいで色々な種族が自然と集まってくるってわけ」


 セレアは知っている知識をユウマ達に伝え、まずは今日泊まる宿を探す。


「出来るだけ迷宮に近い方がいいのでしょうか〜」

「そんなことはないわ。迷宮に泊まらず、日帰りで帰るんだったら、その方がいいと思うけど、私達は違うわ」

『え?』


 衝撃的なセレアの発言に、ユウマ達が一斉にセレアの方を見る。

 セレアはユウマ達が何故驚いているのかわからず、頭に?を浮かべる。


「え、だって日帰りで帰ったら浅い所で、魔物もあんまり強くないから、深く深く潜るしかないの。だから私達は迷宮内で泊まりながら、最深部まで行くわよ」


 セレアの説明に、ユウマ達はやっとセレアが考えていることを理解する。

 迷宮とは、地上の1回層から、下へ行く毎に階層が上がっていく。


 そして下へ進む毎に、魔物の強さも上がっていき、上級の最深部の魔物を見た者は、まだ誰もいない。

 上級の最高到達階層は100階層中、80階層までしか、進んだ者はいない。


 そして80階層まで行った者は、迷宮から出た後、こう言った。「80階層から先は地獄だ。一歩踏み込んだだら最後、猛毒が体を侵食し、1分も持たずに死ぬ」と。


 だが、セレアはそれを知っていて尚、最深部まで挑もうとしているのだ。


「セレア、どうしてそこまで………」

「言ったでしょ、私はみんなを守る力を貰った。だからこの力で魔王を必ず倒す」


 セレアは決意の籠もった目を、ユウマに向ける。

 ユウマはその目を見て、何かを感じたのか、口元を歪める。


「まったく、しょうがねぇな。そんな目で見られちゃ、断ることなんか出来ないだろ。明日から最深部へ向けて、迷宮を潜るぞ!」


 拳を空に掲げたユウマは、高らかに宣言すると、それに合わせてエレナ達も拳を空に上げる。


「最深部には行くとして、まずは今日の宿でしょ」

「そうだな、宿探すか」


 ✼


 それから30分迷宮都市を歩き、ようやく宿を見つけたユウマ達は、宿にチェックインして、食料調達に向かう。


「どのくらい迷宮に潜るんだ? 一週間くらいか?」

「多分一週間じゃ、攻略出来ないわ。食料はどれだけあっても困らないから、一ヶ月分買い込みましょう」

「一ヶ月って……」


 残りのお金を考えながら、ユウマは難しい顔をする。

 一ヶ月分買うとなると、かなりお金がぎりぎりなのだ。


「迷宮の中で、倒した魔物を換金出来るから、お金の心配はいらないわ」

「え、そうなのか⁉」


 驚いたユウマは、思わず大きな声を出してしまう。

 迷宮の構造を知らないユウマが驚くのも、無理はないだろう。


 セレアの説明によると、5階層毎に換金場が設けられていて、そこで倒した魔物を換金して、お金を貰うことが出来るのだ。

 

 換金場の周りは、魔物が嫌う匂いが出る、魔道具を置いているので、魔物が来る心配はないという。

 それを聞いたユウマは、安心したのか曇った顔が晴れる。


「それなら大丈夫か。よし、いっぱい買うぞ〜」

「これはダメなやつじゃ」


 ディアは呆れた顔でユウマを見て、ため息をつく。

 こういう考えの人は、すぐにお金がなくなるタイプだなぁ、とディアは感じながら、特に何も言うわけもなく、ユウマ達の後ろをついて行く。


 屋台やお店で一ヶ月分の食料を買ったユウマ達は、宿に帰って夕食を取る。

 

「いよいよ明日ですね」

「ああ、楽しみだ」

「どんな強い敵がいるのか、わくわくするのじゃ」


 ユウマ達が話していると、近くの冒険者の会話が耳に入る。


「おい、聞いたか。最近迷宮内の魔物が活発化してるって」

「聞いた聞いた。上級の迷宮だろ。中層の魔物が、いきなり強くなってるって」


 冒険者達の不穏な会話に、ユウマ達は眉をしかめる。


「今日帰ってきた冒険者が言ってたぞ。ミノタウロスが、中層の強さじゃないって。まるで深部の強さだって」

「これは当分上級には行けないな」


 冒険者達の会話を聞いて、ユウマ達は顔を合わせる。


「魔物が強くなってるって言ってました〜」

「言ってたわね」

「言ってたな」


 周りに聞こえないように声を潜めて、ユウマ達は話し合う。

 通常ミノタウロスは中層に生息しているが、最近魔物の活性化で深部の強さになっているのだ。


「深部の強さって、只者じゃないわね。ほとんどの冒険者は、中層までしか辿り着くことは出来ない。深部に到達するのは、極わずかしかいないのよ」

「その深部にいる魔物と同じ強さってことか」


 ユウマは腕を組んで、難しい顔をする。

 このまま活性化した魔物と戦うのは、命の危機があるからだ。


「とりあえず慎重に進みましょう。ここまで来て、迷宮に潜らないなんて選択肢、ありえないわ」

「セレア………。わかった、慎重に進もう。危なくなったら、すぐに逃げるぞ」


 ユウマの言葉に、セレア達は頷く。

 ご飯を食べたユウマ達は、3部屋に別れて、それぞれベッドにつく。


 別れ方として、ユウマとエレナ、アインとセレア、ディアとシーナだ。

 ちなみにこれは、じゃんけんで決めた組み合わせだ。


「おやすみ、エレナ」

「おやすみなさい、ご主人様」


 ユウマとエレナは1つのベッドで、眠りにつく。

 明日の期待と、不安を胸に………。


 ✼


「な、なんで、こんなに強いんだ! まだ中層だぞ!」

「知らねぇよ! とにかく逃げるぞ!」


 2人の冒険者は、急いで来た道を引き返していくが、それは叶わなかった。


 ブォァァァァァ!!!


 独特な叫び声を上げて、一瞬で冒険者達の前に移動したミノタウロスは、巨大な斧を振るう。

 その斧は、何の抵抗もなく2人の冒険者の首を跳ねる。


 ブォァァァァァ!!!


 迷宮に活性化したミノタウロスの叫び声が響く。

 それはまるで、死のお告げのような、不吉な叫び声だった。


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