28話 新たな依頼
「───ふっ!」
ユウマは闇の針を回避し、新夜叉でシャドウベアーの首を斬り落とす。
今、ユウマ達はシャドウベアー討伐の依頼を受け、北の森でシャドウベアーを倒している。
「ちょっと前まではシャドウベアーを倒せなかったのに、今となっては簡単に倒せるな」
「それはユウマが強くなったってことよ」
セレアがシャドウベアーの眉間に銃を撃ち込んで、ユウマの元に歩いて行く。
「それじゃあ冒険者ギルドに、依頼達成の報告に行きましょう」
「そうだな」
ユウマとセレアは、近くでシャドウベアーを狩っていたエレナ達と合流して、冒険者ギルドに向かった。
✼
「おかえりなさい、ユウマさん、皆さん」
ユウマ達が冒険者ギルドに帰ると、リーンが少し慌てたように出迎えて来る。
ユウマは不審に思い、リーンに話を聞いてみる。
「何かあったんですか?」
「実は、さっき冒険者から報告がありまして。アルヴァノ王国から少し離れた町が、魔人族の襲撃にあったとの報告が来たんです」
「魔人族⁉」
ユウマが驚くのも無理はないだろう。
魔人族は魔王の部下みたいな地位なので、滅多にその姿を見せない。
それに、ユウマ達はつい最近、魔人族と遭遇したばかりだ。
あの強さを思い出し、ユウマは苦虫を潰したような顔になる。
「それで調査依頼を出そうと思っていたんです」
「魔人族の調査依頼ってことは、セナさんみたいなSランク冒険者に出すんですか?」
「そうなりますね」
リーンが頷くと、セレアが何か考える素振りを見せて、顔を上げる。
「その依頼、私達に任せてくれない?」
「え?、ユウマさん達にですか?」
「そう、お願い!」
セレアは両手を胸の前で合わせて、リーンにお願いする。
リーンは少し考える素振りを見せる。
「流石にユウマさん達だけじゃあ、許可は出来ないですね」
「そんな………」
「じゃあ、私がいれば大丈夫ですか?」
そう言って現れたのは、腰に二本の剣を下げたセナだった。
「セナさん!」
「こんにちは、ユウマ。それで、どうなんですか、リーンさん?」
「セナさんがいれば、まあ大丈夫ですかね」
リーンは安心したように頷くと、依頼の内容を話し始めた。
襲撃された町は、ここから馬車で片道2日かかる場所で、アルヴァノ王国の半分程の面積の場所だ。
半分と聞くと小さく見えるが、アルヴァノ王国の半分となると、そこそこ大きい町だ。
その町に魔人族が襲撃してきたという。
「出来るだけすぐに出発してほしいのですが」
「俺達は大丈夫ですよ。セナさんは?」
「私も大丈夫」
みんなの準備が出来ているとわかり、ユウマ達はすぐに出発することにする。
馬車は冒険者ギルドの方で用意してくれるとのことで、ユウマ達は馬車のある北門に向かう。
「それじゃあ行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい。ちゃんと地図を見て進んで下さいね」
「わかりました」
リーンにお別れを言ってから、ユウマ達は馬車を走らせる。
「なあセレア、何であの時俺達に依頼を回してもらったんだ?」
「え? わからないの?」
セレアは驚き半分、怒り半分の顔をして、ユウマに聞き返すが、ユウマは全くわかっていないようで、呆然としている。
「ユウマ、私の今後の方針ちゃんと聞いてた?」
「ああ、聞いたけど。魔王を倒すために強くなるって」
セレアが言ったことを思い出すと、ユウマはやっと理解したのか、納得の表情を見せる。
「そういうことか。でも魔人族はやばくないか? セナさんがついてきてくれたからいいものの」
「それくらいのことをしないと、強くなれないでしょ」
セレアはそう言っているが、ユウマはかなり心配していた。
シーナを助ける時に魔人族と戦ったユウマは、魔人族の強さを嫌というほど実感していた。
「セナさんは魔人族を倒せるんですか?」
「倒したことはある。3体程度」
「3体⁉」
ユウマが驚くのも無理はないだろう。
あの時のユウマは魔人族に防戦一方だったのに、セナはその魔人族を倒したと言うのだ。
それも3体。
「本当ですか、セナさん?」
「本当。一ヶ月くらい前だけど」
セナは一ヶ月前に、冒険者ギルドの依頼で魔人族を3体倒したという。
ユウマは驚きを隠せないでいると、後方からシャドウウルフが馬車を追いかけて来るのが見える。
「シャドウウルフか」
アイテムボックスからショットガンを取り出すと、ユウマはシャドウウルフめがけて発泡する。
的確にシャドウウルフの眉間を撃ち抜くと、ユウマ達を乗せた馬車は、木々が生い茂る森の中を、颯爽と走り抜ける。
「今日は廃墟の辺りで野宿するか」
「地図を見た感じだとそうなるわね」
地図を見て今日野宿する場所を決めたユウマ達は、目的の廃墟に向かって進み出す。
✼
「着いたな」
太陽が完全に落ち、辺りが闇に包まれた頃、ようやくユウマ達は廃墟の辺りにたどり着く。
周りは廃墟以外に何もなく、不気味な森があるだけだった。
「当番制で見張ろう。2人3組のペアで2時間交代だ」
ペアは強さを均等にするため、エレナとセレア、アインとセナ、ユウマとシーナ、そしてディアのペアだ。
ユウマ達は7人なので、戦力外のシーナがいるところにディアが入った形だ。
「私とエレナが最初に見張りたいんだけど」
「俺達は別にいいぞ。アインとセナさんは?」
「私達も別に大丈夫」
最初の見張りが決まり、次の見張りをどちらがするかという話し合いが始まる。
「アインとセナさんの好きな方を選んでくれ。俺達はどっちでもいいから」
ユウマがそう言うと、二人は何やら話し合い、結論が出たのかユウマの方を向く。
「じゃあ私達は2番目で」
「わかった。じゃあ、俺達は最後だな」
ユウマはそう言うと、早速寝床の準備を始める。
エレナとセレア以外も、ユウマに習って寝床の準備を始める。
「それじゃあ俺達は寝るから、何かあったら起こしてくれ」
「はい、わかりました」
「了解」
エレナとセレアはそれぞれ北と南の方向に陣取り、見張りを始める。
見張りを始めてから一時間くらいが経過した頃、エレナが何かを見つけ、“雷動”で森の中に入っていく。
廃墟から少し歩いた所にいたシャドウウルフは、一瞬で移動して来たエレナに反応出来ず、その首を斬り落とされる。
「ふぅ〜、この辺りで歩いていたのは、このシャドウウルフだけですかね」
エレナは周りを見て、他に魔物がいないことを確認すると、再び廃墟の方に戻っていく。
「お疲れ様」
「お疲れ様です、セレアさん。そろそろ交代の時間です」
エレナはアインとセナを起こし、見張りの引き継ぎを行う。
「わかった。それじゃあおやすみ」
「おやすみなさい、アインさん」
エレナとセレアが眠りにつき、アインとセナが見張りを始める。
その後、何事もなく2時間が経ち、ユウマとシーナ、ディアの番が回ってくる。
「シーナ、何かあったらすぐに言うんだぞ」
「わかりました〜」
ユウマは北を、ディアは南を、シーナは東をそれぞれ見張る。
異変が起きたのは、それから1時間後、日が昇り始めた頃だった。
「む? 何じゃあれは?」
「どうした、ディア?」
ユウマが聞くよりも早く、ディアは翼を生やして、森の上空を飛んで行く。
そして何かを発見したのか、すぐにこちらに引き返してくる。
「ユウマ! みんなを起こして早く逃げるのじゃ!」
「何かあったのか⁉」
「シャドウベアーの群れじゃ!」
ユウマ達の大きな声に、エレナ達が目を覚まし、何事かと辺りをキョロキョロする。
「みんな、馬車に乗れ! すぐに出発する!」
「何かあったんですか?」
ユウマに聞きながらも、馬車に乗る準備をするエレナに、ユウマはシャドウベアーの群れが来ることを伝える。
「シャドウベアーの群れ⁉」
「ああ、だから早く逃げるぞ!」
馬車に乗ったユウマ達は、急いで廃墟から離れる。
その一瞬後、シャドウベアーの群れが姿を現す。
「来た! セレア、銃である程度数を減らすぞ」
「わかった!」
ユウマとセレアは、銃を発泡してシャドウベアーの数を確実に減らしていく。
あと少しで全滅の所まできた瞬間、ドカァァァン!!!と馬車の前方に何かが落ちてくる。
「何だ?」
ユウマは怪訝に思い、前方を見るとそこには、頭に角を生やした魔人族が立っていた。




