25話 シーナの危機
「それで、お願いのことだけど」
ユウマが腰掛けてるベットの前で、セレアはユウマを見下ろしながら、先程の話を始める。
「私と一緒に魔王を倒して欲しいの」
「本当に存在するのか? 魔王って」
「うん、存在する。私は魔王を倒すために、神様から力を授かっの」
セレアは自分の銃を掲げて、ユウマに言うと、ユウマは少し考える素振りを見せる。
「う〜ん、魔王か………。みんな、どう思う?」
そう言って、ユウマの隣に座っている、エレナ達に意見を求める。
「魔王が現れるなら、もっと騒ぎになっているはずですが」
「だって魔王が現れるのって、1年後だもん。神官だって流石にまだわからないよ」
エレナの質問に、セレアが簡潔に答える。
「本当に魔王が現れるなら、協力せざるを得ないんじゃない?」
「確かにそうじゃな」
アインの言葉に、ディアは首を縦に振る。
すると、ユウマは何かを気づき、辺りをキョロキョロと見渡す。
「あれ、シーナは?」
「シーナは確か、トイレに行ってから来ると言ってたけど………確かに遅いわね」
ユウマはアイテムボックスから、相手の場所がわかる指輪を取り出し、シーナの居場所を特定するが、その方向にはトイレなど存在しなかった。
「トイレにいないけど、どういうことだ?」
「もしかして誘拐?」
嫌な予感を感じたユウマは、そのまま医務室を飛び出す。
「ちょっと、ユウマ君⁉ まだ話は終わってないんだけど!」
「待って下さい、ご主人様!」
セレア達はユウマの後を追うように、医務室を飛び出す。
コロシアムを出たユウマ達は、シーナがいるであろう場所に向けて、走り始める。
「これが終わったら、ちゃんと話を聞いてもらうからね!」
「ああ、いくらでも聞いてやる! 今はシーナだ!」
走り始めて10分たった頃、ようやくユウマ達はシーナがいるであろう場所に到着する。
そこは長年使われていない工場だった。
「ここにシーナが………」
「行ってみるのじゃ」
ユウマ達は壊れた扉を蹴り破り、中へと入っていく。
中は体育館並の広さで、色々な物が散漫している。
その一番奥に、椅子に括り付けられたシーナがいた。
「シーナ!」
ユウマは大きな声でシーナを呼ぶと、シーナは顔を上げてユウマ達の存在に気づく。
「ユウマさん〜、助けて下さい〜」
「今、助ける!」
シーナの呼びかけに答えたユウマは、シーナを助けようと歩き出そうとすると、シーナがいる場所の奥の部屋から、1人の男が現れる。
「こいつを助けられるのは困るな」
「お前がシーナを攫った犯人か」
ユウマは男を睨みながら言うと、男は不敵に笑う。
「ああ、そうだ。こいつにはお前をおびき寄せるための、餌になってもらった」
「何?」
意味がわからない、というような顔でユウマは男を見ると、男は説明を始める。
「お前は創造魔法のスキルを持っているな?」
「なんでそのことを」
一瞬驚いた顔を見せたユウマだったが、すぐに警戒するように男を睨む。
「お前が創造魔法を使っているのを、俺の仲間が見てたんだよ。それからお前を監視し、絶好の機会を伺ってたんだよ」
「それが今ってことか」
「ああ、その通りだ」
男は笑いながら、持っている剣をシーナの首筋に当てる。
「俺の言うとおりにしろ。こいつを殺されたくなかったらな」
「シーナさん!」
「シーナ!」
エレナとアインは悲痛の声を上げるが、男の視線はユウマを見たままだ。
「何が目的だ」
「話が早くて助かる。創造魔法は使用者が考えたものを作り出すことができるスキルだ。それで、聞いたものを殺す笛を作れ」
想像よりも危険な物を要求されたユウマは、驚いて目を丸くするが、すぐに抗議する。
「そんな物、作れるわけないだろう!」
「そうか、それは残念だ」
男が薄っすら笑った瞬間、物陰から次々と武装した男が姿を現し、ユウマ達を取り囲む。
ユウマ達も戦闘体制を取りながら、シーナを助ける方法を考える。
「そこから動くな。この女の命が惜しいならな」
「動くなって言われて、動かない奴はいないぜ。俺の仲間に手を出したことを後悔させてやる。セレア!」
ユウマがセレアの名を呼んだ瞬間、セレアは銃でシーナの首筋に剣を当てている男を撃ち抜く。
「行くぞ!」
「「「おう!」」」
ユウマがエレナ達に合図すると、エレナ達はそれに答えるように声を上げて、武装した男に向かって走り出す。
「お前ら、殺れ!!!」
『おう!!!』
武装した男達も、ユウマ達めがけて走り出し、殺し合いが始まる。
血飛沫が上がる中、ユウマはシーナがいる場所めがけて走り出す。
「ユウマさん〜、この人達用心棒を雇ってます〜」
「用心棒?」
ユウマが首をひねった瞬間、ユウマの頭上から何が降ってくる。
危険を感じたユウマは、横に転がるように回避すると、ユウマがいた場所に、全身が黒く、赤い血管のようなものがドクンドクン、と流れていて、頭の上には角が生えた魔人族がいた。
「魔人族⁉」
ユウマは狼狽し、後ろに跳躍して距離を取る。
「やはり人間は脆い。あいつも魔人族にするべきだったな」
そう言って魔人族は、先程セレアが撃ち抜いた男をチラッと見る。
まともにやって戦って勝てるかわからないので、ユウマはシーナを助けることを最優先にし、シーナの元に駆けつける。
「行かせないよ?」
いつの間にかユウマの真横に来ていた魔人族は、そのままユウマに蹴りを入れる。
「ぐっ!」
ユウマは吹き飛ばされ、木箱に直撃する。
何事かとエレナはユウマを見ると、ユウマの近くに魔人族がいることに気づく。
「魔人族? ご主人様! 大丈夫ですか!」
「ああ………大丈夫だ」
手をひらひらと振って、無事であるとこをエレナに伝えて、ユウマは、立ち上がる。
「やってくれたな」
「一応金を貰って雇われたのでな。仕事は最後までやりきる」
一瞬でユウマの目の前まで来た魔人族は、ユウマの腹部を殴ろうとするが、ユウマは体を捻ってなんとか回避する。
アイテムボックスから“新夜叉”を取り出したユウマは、魔人族の首を刎ねようと横に一閃する。
「───ふっ!」
魔人族は体を反らして回避し、地面から闇の針でユウマに攻撃するが、ユウマはステップを踏んで回避する。
ドパンッ!、ドパンッ!、とショットガンを撃ちながら魔人族との距離を取る。
軽機関銃を取り出し、魔人族に連射すると、魔人族は闇の壁を作り、攻撃を凌ぐ。
その隙にユウマはシーナの元へ駆けつける。
「大丈夫か、シーナ」
「はい〜、大丈夫です〜」
“新夜叉”でシーナが括られている紐を斬り、逃げようと振り返ると、目の前に魔人族が来ていた。
「死ね」
「ご主人様!」
魔人族が闇を纏った右手で、ユウマの心臓を貫こうとしたのを、エレナが間に入って剣で受け止める。
「エレナ!」
「ご主人様! 逃げて下さい」
エレナに感謝しつつ、シーナをお姫様抱っこで抱えながら、ユウマは出口に向かって走り出す。
途中で武装した男が襲って来ようとしたが、アインやディアがそれを食い止め、ユウマを出口に行かせようとしてくれる。
「行って、ユウマ!」
「行くのじゃ、ユウマよ!」
アイン達の言葉を背に、ユウマはシーナと共に脱出する。
脱出したユウマは、シーナを物陰に隠して、再び工場に入る。
「みんな早く出口に向かへ!」
ユウマの合図と共に、エレナ達が出口へと向かって行く。
ユウマは創造魔法で煙玉を作り、工場の中央に投げ込むと、工場を煙が包み込む。
無事にエレナ達も脱出して、物陰に隠れていたシーナも連れ、冒険者ギルドへと目指すのだった。




