22話 エレナの激闘
エレナは2丁の銃を腰に下げたセレアを、ジッと見つめる。
セレアは少し笑っていて、余裕の表情だ。
「勝たせてもらいます、セレアさん」
「ん〜、それは無理じゃないかな。どうやっても私には勝てないよ」
そう言ってセレアは、2丁の銃を抜き、構える。
エレナも腰を落とし、剣を鞘から抜かずに手を添える。
「開始と同時に“雷走”で一気に距離を詰めて、仕留める気だな」
「倒せると思うの?」
ユウマの考察を聞いたアインは、ユウマに問いかける。
すると、ユウマは自信満々の顔で頷く。
「エレナなら、勝てる。大丈夫だ」
「そうね、エレナなら」
2人で笑いあっていると、ディアが静かなことに気づき、ディアを見ると、静かな寝息を立てて眠っている。
「セナさんとの戦いに疲れたんだな」
「そうみたいね」
ディアを見ながら2人は微笑んでいると、司会者からの開始の合図が送られる。
『それでは準々決勝2回戦、セレア対エレナの勝負を開始します!!! バトルスタート!!!』
「───“雷走”」
開始の合図と共に、エレナは“雷走”で一気にセレアに肉迫するが、不意に右足に激痛が走り、体制が崩れて地面を転がる。
「ぐっ!」
エレナは右足を見ると、そこには弾丸がエレナの右足に埋まっており、そこから血が流れている。
「………いつの間に」
エレナはセレアを睨むように見ると、ドパンッ!、とセレアはエレナに銃を発泡する。
「───っ!」
エレナは“雷走”で横に一瞬で移動して、弾丸を回避する。
「速いね〜。でも………」
セレアは目を細めると、エレナに向かって銃を撃つ。
エレナは“雷走”で弾のスレスレを回避するが、エレナが弾の横を通った瞬間、不意に弾が爆発する。
「きゃぁぁぁ!!!」
エレナは悲鳴を上げて、吹き飛ばされる。
セレアの攻撃の手は休むことはなく、次々と銃を発泡する。
エレナはすぐに体制を立て直して、弾丸を剣で弾き、時には回避して、なんとかやり過ごす。
「───“雷纏”」
エレナは体に雷の鎧を纏わせて、セレアに肉迫する。
「丈夫そうな鎧だね。でも、私の前では何の意味もないよ」
そう言ってセレアは、エレナに連続して弾丸を放つ。
エレナは弾丸を剣で弾くが、弾丸の速さについていけず、雷の鎧に被弾する。
だが、エレナは雷の鎧に絶対の自信があった。
闇の竜の攻撃も防いだこの鎧は、絶対の防御だと思っていた。
弾丸くらいなら防げると思ったエレナだったが、被弾した瞬間、雷の鎧が破壊された。
いや、魔法そのものが破壊された。
「なっ!」
エレナは雷の鎧が破壊されたことに驚いたが、次の瞬間には、セレアが撃った弾丸が次々と被弾する。
エレナはよろめいて、倒れそうになると、エレナの真下に入ったセレアは、ゼロ距離でエレナの心臓を撃ち抜く。
「がはっ!」
エレナは口から血を吐き、地面に倒れる。
そしてその姿が、医務室に転送される………ことはなかった。
「なんで消えないの? 確かに心臓を撃ち抜いたはずなのに」
セレアが困惑していると、エレナの姿が雷に代わり、セレアの顔の横を通り過ぎる。
セレアはその後を追って後ろを向くと、雷の槍を左手に持ち、右手には剣を持ったエレナがいた。
「───っ!」
セレアは声にならない悲鳴を上げると、すぐに銃をクロスさせ、攻撃を防ごうとしたが、遅かった。
エレナは雷の槍をセレアの右肩に突き刺し、右手に持っている剣で、セレアの右脇腹から左肩にかけて、斬り上げる。
「ぐっ!」
苦痛の声を上げたセレアは銃を発泡しながら、後ろに跳躍して距離を取る。
エレナも深追いはせず、セレアと距離を取る。
「雷で作った分身ってとこ?」
「はい、そういうことです」
セレアの見解に、エレナは首を縦にして頷く。
そして、エレナは剣を地面に突き刺し、魔法を発動する。
「───“落雷”」
すると、さっきまで晴れていた空が、不意に曇りだし、雷がセレアに落ちる。
セレアは雷に向けて弾丸を放つと、被弾した瞬間、雷が蒸発したように消える。
「やっぱり、その弾はアンチ魔法が付与されたものですか」
「正解〜」
セレアはそう言って、銃をエレナに向けて、発泡する。
「───“雷竜”」
空から雷の竜がセレアの撃った弾丸に直撃するが、雷の竜は先程の“落雷”のように、蒸発したように消える。
それを確認したエレナは、弾丸を剣で弾く。
全ての弾にアンチ魔法が付与されてるのか、それとも一部の弾だけか、とエレナは考えて、次の作戦を決行する。
「───“雷矢”」
エレナは大量に雷の矢を作り出し、セレアに向けて攻撃する。
セレアはそれを、まるで踊りながら移動して、次々と撃ち落としていく。
だが、エレナもそれを黙って見ているわけもなく、セレアに肉迫して、斬りかかっていく。
エレナの存在に気づいたセレアは、右手の銃で“雷矢”を、左手の銃でエレナを攻撃しながら、縦横無尽に移動する。
「あいつ何者なんだ? エレナの魔法とエレナの剣戟を同時に捌くなんて」
「Sランク冒険者じゃないと思うけど、かなり強いわね」
セレアの強さを見たユウマ達は、セレアが何者かが気になっている。
Sランク冒険者で、セレアという名前を聞いたことがないアインは、Sランク冒険者ではないと否定するが、その実力はSランク冒険者と、大差はない。
「決勝まで取っておきたかったけど、このままじゃジリ貧だから、使ってあげる」
「何を───」
エレナが言葉を発した瞬間、エレナの体が一気に重たくなり、地面にひれ伏せる。
「なっ! これは⁉」
苦し紛れにセレアを見ると、周りの“雷矢”も、全てに地面に叩きつけられている。
セレアは微笑みながら、ゆっくりエレナに近づいて行く。
「重力魔法。私の隠し玉だったの」
「まだ………こんな手が残っていたなんて」
エレナは歯を食いしばり、立とうとするが、ピクリとも動かない。
そうしている内に、セレアがエレナに銃口を向ける。
「私の勝ち」
ドパンッ!、会場に銃声が響き渡る。
銃に撃たれたエレナは、致死量のダメージを受けて、医務室に転送される。
『勝者、セレア!!! 展開が速すぎて、正直ついていけなかったぞ!!!』
『うぉぉぉ!!!』
セレアに向けて歓声が送られ、セレアは手を振って答える。
「重力魔法が使えたなんて………」
「かなり強いな、あのセレアって奴は」
ユウマとアインはセレアの強さに驚きながらも、医務室に転送されたエレナの元へ向かう。
その際、ディアは寝ていたので、そのまま放ったらかしにして来た。
「エレナ」
ユウマは医務室の扉をゆっくり開けて中に入ると、エレナはベットの上で座っていて、その目には涙が溢れている。
「すいません………ご主人様………私………勝てませんでした」
エレナは泣きながら、ユウマに謝罪する。
ユウマはゆっくりエレナに近付き、その小さな体を抱きしめる。
「謝る必要なんてない。エレナは強くなった。初めてあった時はシャドウベアーに震えていたエレナが、ドラゴンに遭遇しても震えずちゃんと戦ってた。確実に強くなってる」
ユウマは優しくエレナの頭を撫でて、慰める。
それを見ていたアインは、気を遣って医務室を後にする。
「ご主人様、私、強くなりたいです。ご主人様を守れるくらい、強く」
「それは困るな」
「え?」
エレナは涙に濡れた顔で、顔を上げると、ユウマは優しい笑顔を浮かべていた。
「女の子を守るのが男の役目だろ。俺にエレナを守らせてくれ」
「ご主人様………」
エレナは再びユウマの胸に顔を埋めて、泣き始める。
ユウマはそれを見ながら、エレナの頭を撫で続けた。




