20話 セナの実力
「知り合いか、ユウマ?」
「ああ、命の恩人だ」
ユウマがセナを見ながら言うと、ディアは少し考える素振りを見せるが、すぐに答えが決まったようで、ユウマに真剣な顔を向ける。
「すまんが、手加減は出来ないのじゃ」
「ああ、全力でやってくれ。それでも勝てるかどうかわからないけど」
「ほう〜、戦闘種である妾より強いなど、面白いのじゃ」
ディアは口の端を歪めて微笑み、セナのところに歩いていく。
その後ろ姿を見送りながら、ユウマはほっと胸をなでおろす。
あの時セナが助けに来なければ、ユウマは死んでいたかもしれない。
だが、ユウマを助けることで、セナは勝ち目のない戦いをして死ぬ恐れがあったが、どうやら右目を失っただけで済んだらしい。
「よかったですね、セナさんが生きていて」
「ああ、本当によかった」
エレナとユウマは嬉しそうにセナを見つめていると、後からアインが面白そうにしながら声をかけてくる。
「セナとディア、どっちが勝つと思う?」
「う〜ん、やっぱりセナさんかな」
「私はディアさんだと思いますよ」
ユウマとエレナは少し考えた後に答える。
そうやって話している内に、準備が出来たようでバトルが始まろうとしていた。
「ユウマの恩人らしいのぉ」
「手加減はしなくていい。私も全力で行く」
セナは殺気を込めてディアと向かい合う。
ディアはセナの殺気を浴びながらも、涼しい顔で立っている。
普通の人間なら気絶しているレベルの殺気だが、流石竜人族といった所だ。
『それでは、バトルスタート!!!』
開始の合図と共に、ディアはブレスをセナに向けて吹き出す。
セナは即座に氷の剣を鞘から抜き、横に一閃すると、ブレスの先端が凍りつく。
ディアは一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに切り替えてセナに肉迫する。
セナは氷の剣の切っ先を地面に刺すと、ディアが踏んでいる地面から、氷の針がディアを突き刺すように出てくる。
「───っ!」
ディアは氷の針を紙一重で躱しながらセナに肉迫するが、何かを感じ取り、後ろに跳躍すると、さっきまでディアがいた場所から、巨大な針が地面から突き出てきた。
「流石、竜人族」
「お主も中々やるのじゃ。今度はこっちの番なのじゃ!」
ディアは地面にクレーターを作って、一気にセナの懐に入り込み、その腹部に強烈な右ストレートを打ち込むが、寸前のところでセナは剣で防ぐ。
だが、ディアの攻撃の方が強く、セナは後方に吹き飛ばされる。
「がはっ!」
壁に直撃したセナは、肺から空気が押し出されて視界がぼやけるが、すぐに頭を振ってなんとか視界をクリアにする。
「まだじゃ!!!」
再びディアはセナに肉迫して殴りかかるが、寸前のところでセナは体を捻って回避し、2本の剣でディアを攻撃する。
ディアはセナの剣撃を全て回避し、上空へと跳躍する。
ある程度の高さまで飛んだディアは、上空で静止して魔力を貯め始める。
「さっきのブレスは手を抜いていて、こっちが本命ってわけか」
「凄い魔力です」
「この建物壊れないわよね」
ユウマ達は上空にいるディアを見ながら、三者三様の意見を溢す。
対するセナも、その魔力量から冷や汗を掻きながら魔法を発動する。
「我を守り、我が敵の攻撃を防げ───“氷結界”」
バトルフィールド全体を囲む氷の結界が出現した瞬間、ディアのブレスがセナめがけて放たれる。
ディアのブレスとセナの氷結界がぶつかり合い、火花が辺に飛び散る。
だが、流石戦闘種といったところだろうか、セナの氷結界に小さいヒビが現れ始める。
それからどんどんヒビが入り始め、氷結界が壊れる寸前までやってくる。
「───っ! 凍りつけ───“氷世界”」
セナが剣を横に振った瞬間、ディアのブレスが一瞬にして凍りつく。
「なっ⁉ 妾のブレスを凍らせるじゃと!」
ディアが狼狽していると、セナは氷の竜を作り、その背中に乗って、凍ったブレスを破壊しながら上空に上っていく。
最後の氷を砕き、ディアの横をすり抜けて、さらに上空へと上って静止する。
「次はこっちの番───“氷柱針”」
その瞬間、雲を突き破って巨大な氷柱が、何十本もディアめがけて飛んでくる。
それを見たディアは、不敵に微笑みながら、氷柱めがけて飛んでいく。
「氷柱程度で妾は墜ちないのじゃ!」
ディアは自身の体に“身体強化”をかけて、頑丈な体をさらに強化する。
そして氷柱がディアの目前まで飛んでくると、ディアは氷柱を拳で砕き、時には蹴りで砕きながら、セナがいるところを目指して飛んでいく。
だが、セナに近づくにつれて、氷柱の数がどんどん増えていき、ディアは氷柱を捌ききれなくなる。
手足にかすり傷が増えていき、ディアは右手で氷柱を破壊した瞬間、後ろに隠れていた氷柱がディアの腹部に直撃する。
「ぐっ!」
ディアは苦痛の声を上げて、そのまま急降下し、地面に直撃する。
土煙がディアを覆い、その姿が見えなくなるが、セナの攻撃は止むことはない。
巨大な氷柱が、土煙に覆われて見えなくなっているディアめがけて次々と降ってくる。
「ディアさん!」
「流石Sランク冒険者ね」
エレナは悲痛の声を上げて、アインは関心したように頷いている。
10本くらいの氷柱がディアめがけて降ってきたころ、ようやく攻撃が止む。
土煙が辺りを覆い、会場に静寂が訪れる。
皆が土煙に注目していると、土煙に覆われて一気に上空へ上るものがいる。
ディアだ。
「はぁぁぁ!!!」
ディアは傷だらけにながらも、セナに向かって行く。
だが、その途中でディアの動きが止まる。
理由は、先程の氷柱から氷の鎖が表れて、ディアを拘束したのだ。
「ぐっ、………こんなもの!!!」
ディアは馬鹿力で氷の鎖を潰し、セナに肉迫する。
「───っ!」
氷の鎖が壊れると思わなかったのか、セナは一瞬驚いたが、すぐに冷静になり次の攻撃を仕掛ける。
「───“氷竜”」
セナは氷の竜を4体作り、ディアに向けて攻撃する。
ディアは魔力を貯めて、4体の竜にブレスを放つ。
4体の竜は跡形もなく消え去り、後ろにいたセナまで攻撃が及ぶ。
セナは竜に乗ったままでは回避出来ないと悟り、竜から飛び降りて、地面に向けて自由落下する。
だが、それをディアが見逃すわけもなく、ブレスを止めてセナに肉迫する。
「───“氷針”」
セナは地面から巨大な氷の針を出現させて、ディアめがけて攻撃する。
ディアは氷の針を避けるが、氷の針からさらに針が生えてきて、ディアの脇腹を串刺しにする。
「ぐっ!」
ディアは苦痛の声を上げるが、すぐに拳に力を入れて氷を砕く。
パリンッ! と氷が砕けると、氷の後ろにいたセナが、剣を構えながらディアの懐に入り、そのお腹を貫く。
「がはっ!」
「これで終わり」
セナは剣を引き抜くと、ディアは力なく地面に落下し、医務室に転送される。
『試合終了!!! 激しい激闘の末、勝ったのはセナだ!!!』
『うぉぉぉ!!!』
激しい戦闘に観客達も歓喜し、割れんばかりの声援が会場を包み込む。
エレナとアインは席を立ち、ディアが転送された医務室へ向かう。
ユウマはセナを一瞥した後、エレナとアインの後を追って医務室へと走り出した。




