01話 出会い
北門に着いたユウマは、ギルドカードを門番に見せて、外に出る。
「さて、ゴブリンを探すか」
広大な草原を見渡し、ユウマは気合を入れてゴブリンを探し始める。
ここアルヴァノ王国は、辺り一体草原になっていて、歩いて10分くらいすると、森が見え始める場所にある。
森に入ると強力な魔物がいると言われているが、森によって脅威度は変わっいて、脅威度が一番高いのが北門を真っ直ぐ進んだ森、その次は南門から真っ直ぐ進んだ森、その次は西門から真っ直ぐ進んだ森、そして一番脅威度が少ないのが東門を真っ直ぐ進んだ森になっている。
つまり、北門から出てきた何も知らないユウマが、森の中に入るとかなり危険だということだ。
「おっ、ゴブリン発見!」
歩いてちょっとすると、ユウマは背が小さく、2足歩行で歩き、肌が緑色で醜悪な顔をしたゴブリンを見つける。
距離は50mくらいだろうか、どうやらまだユウマに気付いてないらしい。
「よし、じゃあさっそく殺るか」
ユウマはショットガンを握り、ゴブリンめがけて走り出す。
ゴブリンとの距離が25mくらいになった時、ようやくゴブリンがユウマに気付いたが、時すでに遅し………ドパンッ!、という発泡音が鳴り、ゴブリンの頭を撃ち抜く。
どうやらショットガンの弾は1発1MPで撃てるようだ。
「おっ、もう一体発見!」
ユウマは右斜め前のゴブリンを見つけ、再び走り出す。
距離は先程と同じく25mくらいで、ゴブリンはこちらに気付き走り出すが、ドパンッ!、という発泡音とともに、ゴブリンは頭を撃ち抜かれて倒れる。
「よし、これで2体目だな。でも、倒したってどう判断するんだ?」
疑問に思いつつ、ギルドカードに何か説明が書いてないかと思い、ギルドカードを見ると、名前と種族の下にゴブリン2体と書かれている。
「これで自分が何を何体倒したかわかるってことか」
ユウマは関心してギルドカードを直し、ゴブリンの捜索を再開した。
✼
「ゴブリン3体………おめでとうございます。これでユウマさんは正式な冒険者です。これは新しいギルドカードです」
そう言ってユウマに渡したギルドカードは、先程とは違い銀で作られていて、左上に名前と種族、右側に大きくDと書かれている。
ちなみにユウマはあの後、アルヴァノ王国に帰る途中にゴブリンを見つけ銃殺し、無事ゴブリン3体を倒すことが出来たのだ。
「あの、このDってどういう意味ですか?」
ユウマはギルドカードの右側に書かれているDの文字を指さして、リーンに問う。
「説明がまだでしたね。これはランクになっています。上からSランク、Aランク、Bランク、Cランク、Dランク、の5つのランクに分けられています。
ちなみにSランクはこの国だと5人しかいません」
「そんなに少ないんですか?」
「はい。もともとはAランクまでしかなかったんですけど、明らかにAランクオーバーの力を持っている人達がいたので、それでSランクも加えたんです」
「なんか凄いですね………」
リーンの話を聞いて、「どんな怪物がこの国にいるんだ」と、内心冷や汗をかきながらユウマはリーンの話を聞く。
「次に依頼についてです。依頼は1つ上のランクまで受けることが出来ます。つまりユウマさんの場合だとCランクまでの依頼を受けることが出来ます。最後に魔物の部位の買い取りです」
「買い取りまでやってるんですか?」
「はい。入って右側が、買い取りをしている魔物が書いてある掲示板です。左側は依頼が貼ってある掲示板になっています。受付でも依頼を見ることが出来るのでどちらでも大丈夫です」
「わかりました。とりあえず割の良い依頼ってないですか?」
今のユウマはお金を持っていないので、少しでも割の良い依頼をやらないと、宿に泊まることが出来ない。
「割の良い依頼ですか………シャドウウルフはどうですか? 1体で銅貨3枚です。まだ初日ですのでDランクの依頼になっています」
「わかりました。それでお願いします」
「はい。シャドウウルフは何体でも倒していいので、頑張って来てください」
「頑張ります。では」
そう言ってユウマは冒険者ギルドを出て、北門へと歩いて行く。
その途中でユウマはある店を見つける。
「………奴隷商」
そう、この世界では奴隷制度というものが存在する。
借金や犯罪、亜人などさまざまな理由で奴隷になり、売られている。
「日本ではあまりなかった光景だな」
そう呟いてゆっくり北門へと歩いていく。
10分くらいで北門につき、ギルドカードを提示して外に出る。
「平原には居なそうだから森の中を探すか」
さっきゴブリンを探している時に、それらしき魔物が見つからなかったことから、ユウマは森の中を探すことにする。
その森が危険だとは知らずに。
「魔力も回復したし、ショットガンもう1本作っておくか。何があるかわからないし。───“創造”」
ユウマは森に入る前に、先程と同じくショットガンを創造魔法で作り出し、2丁のショットガンが出来上がる。
「よし、準備完了。行くか!」
気合いを入れてユウマは森の中に入ると、そこは、木々が生い茂り、日の光が葉の隙間から照らし、空気がおいしい場所だった。
「綺麗な場所だな」
ユウマは頬を緩ませ森の中を歩いていくと………
「「「「グルルルゥゥゥゥゥ」」」」
「───っ!」
ユウマを中心に十字の形で4体の黒い狼、シャドウウルフがこちらを見てうねり声を上げて睨んでいる。
「いつの間に………」
ジリジリとシャドウウルフがユウマに近づいて来て、右の1体がユウマに飛びかかってくるのを、ユウマは右手のショットガンでドパンッ!、という発泡音を鳴らしシャドウウルフの頭を撃ち抜く。
そして、ユウマは右の隙間から全力で走り出し、後ろを振り返ると………
「って、何か増えてるし⁉」
初めは4体だったのが、今ユウマが後ろを見た時には10体に増えている。
そして、当然人間と狼では走る速度が違う訳で、右と左に3体ずつユウマと並走し、後ろに4体がユウマを追いかけている。
「はぁ………はぁ………はぁ………クソっ、どんだけいるんだよ」
悪態をつきながら左右から飛びかかってくるシャドウウルフを、ドパンッ!、ドパンッ!、と両手のショットガンで撃ち殺す。
そして後から迫って来たシャドウウルフを、目の前の木を蹴って跳躍し、バク宙の要領で逆さまになった世界でシャドウウルフを両手のショットガンを発泡し、殺す。
着地と同時に後から来ていたシャドウウルフが、牙を剥き出しにして噛み付こうとするのを、ドパンッ!、と左右のショットガンを、同時にゼロ距離で発泡し、撃ち殺す。
血溜まりの地面から立ち上がり、ユウマは残りの左右2体ずつ、計4体のシャドウウルフを見つめる。
「はぁ………はぁ………残り4体」
ユウマは呼吸を落ち着かせようと深呼吸すると、グルァァァ!と牙を剥き出しにして左右から襲いかかって来る。
「ちょっとは休ませろよ!」
ドパンッ!、ドパンッ!、と両手のショットガンを発泡しながら悪態をつくが、右側のシャドウウルフが紙一重で弾を躱し、噛み付いてくるのを右手のショットガンでなんとか防ぐ。
「今の躱すのかよ!」
ガチガチと右手に握られているショットガンをシャドウウルフに噛みつかせながら、横目で左にいたシャドウウルフが後ろに周り込んで噛み付いてくるのを、ショットガンを後ろに向けて発泡して防ぐが、目の前から右にいたシャドウウルフが襲いかかってくる。
左手のショットガンは後ろに向いたままなので、到底間に合うはずもなく、ユウマは体を少し右に反らし右肩に噛みつかせる。
「ぐっ! この野郎が!!」
ドパンッ!、と左手のショットガンで撃ち殺すと、先程まで右手のショットガンに噛みついていたシャドウウルフが、噛みつくのをやめてユウマから距離を取る。
ドパンッ!、ドパンッ!、と両手のショットガンを連発するが2発とも紙一重で躱し、森の奥へと逃げて行く。
「ふぅ〜、やっと終わったか」
ユウマは木を背もたれにして地面に座り込み、休息を取る。
来た道を見るとそこには、計10体のシャドウウルフの死体が転がっている。
「ハハッ、我ながらよくやったもんだよ」
その死体を見て、乾いた笑みを浮かべていると………
「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
いきなり森の奥から男と女の悲鳴が、ユウマのいる場所まで聞こえる。
「な、なんだ⁉」
その悲鳴に驚いて立ち上がり辺りを見渡す。
「周りに敵はいなそうってことはやっぱり森の奥か」
ユウマは森の奥を見つめて思考する。
行くか、行かないか、ここで初めてユウマはこの森は危ないと悟った。
「ここで行かないと絶対に後悔するよな」
決意した眼でユウマは森の奥に走り出す。
ユウマは嫌な予感を感じながら、それでも全速力で走り続けて1分くらいした頃だろうか、悲鳴がした場所にたどり着くとそこには、体長3mくらいで身体の色はブラックホールのように黒く、血管のように赤い線が身体を巡っているクマが立っている。
その側には男が4人、腹を切り裂かれて力なく地面に横たわっている。
そしてクマの前に、震えながら剣をクマに向けて立っている、獣人の少女がそこにはいた。