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14話 トルート村(3)


「ご主人様!」


 エレナは慌ててユウマの側に行き、ぼろぼろの体を支える。

 今にも泣きそうな顔をしている。


「大丈夫ですか? 無事でよかったです。ご主人様に何かあったら私………」


 目尻に涙を浮かべて、ユウマが無事だったことを安堵している。

 ユウマは心配かけすぎたな、と感じてエレナに感謝と謝罪を述べる。


「心配………かけて………ごめん。あと………ありがとう。エレナが………いなかったら………今頃死んでたよ」

 

 長い言葉を話せないユウマは、途切れ途切れになりながら、エレナに伝える。

 エレナは「そんなことありません」と言ってユウマに肩を貸して、2人とも立ちあがる。


「アインさんも近くにいるはずなので、すぐに合流しましょう」

「わかった」


 2人はゆっくりと歩き始めると、すぐにアインと出会う。

 

「ユウマ?………ユウマ!!!」


 アインは目尻に涙を浮かべながら、タックルのような激しさでユウマに抱きつく。

 うっ!、とユウマは苦痛の声を上げて、なんとか耐える。


「無事でよかったよ〜」

「アインも………ごめんな」


 ユウマは申し訳なさそうにアインの頭を撫でて、謝罪する。

 

「無事ならなんだっていいよ! 本当によかった」

「なんとか………生きて帰れたよ。これも………セナさんのおかげだけど」

「どういうこと?」


 ユウマはエレナとアインに、セナが近くで別の依頼をしていて、雷の波動を見て助けに来たことの旨を伝える。


「そうだったんですね。セナさんは命の恩人ですね」

「でも大丈夫なの? いくらセナさんでも、1人で雷帝を相手するのは結構大変じゃない?」


 アインは自分が持っている雷帝の情報を照らし合わせて、疑問を言う。

 だが、アインの言葉はもっともだ。

 

 本来Sランク冒険者が3人はいないといけないのに、今回はセナ1人だけだ。

 勝ち目はかなり薄い。


「確かに………勝ち目はないに等しい。最悪死ぬかも知れない。でも………俺達が行ったところで………死体が増えるだけだ」

「それはそうだけど」


 ユウマの言葉を聞いたアインだったが、未だ納得していないようだ。

 だが、いつまでもここに留まっている場合ではないので、すぐに馬車の元まで向かう。


「ユウマ、これ回復ポーション。飲んで回復して」

「いいのか、アイン?」

「うん。ユウマならいいよ」


 アインから回復ポーションを渡されたユウマは、遠慮しがちに飲み干す。

 すると、体の傷がみるみる治っていく。


「助かったよアイン。すげぇ回復したけど本当によかったのか?」

「だからいいって言ってるでしょ。それにそのポーション、上級ポーションだからほぼ全回復出来るわよ」


 アインは豊満な胸を張り、ユウマに自慢するように言う。

 上級という言葉を聞いて、さらに心配になるユウマ。


「上級の回復ポーションは、自分のために使った方がいいと思うぞ」

「私は自分よりもユウマが最優先だからいいの」

「あのな………」


 これ以上言っても無理だろうと察したユウマは、もうそれ以上アインには何も言わないことにした。

 その後は何事もなく馬車まで辿り着いたユウマ達は、再びトルート村まで向かう。


 出発して数分後に、ユウマは急激な眠気に襲われる。

 魔力枯渇をしたからだろうか、雷帝と激しい戦闘をしたせいだろうか。


「どうしたんですか、ご主人様?」

「ちょっと眠くてな」

「では私が膝枕をします。木の上で寝ても体力は回復しませんから」

「ああ、頼む」


 いつものユウマなら断っているところだが、今のユウマの眠気は限界に近く、今すぐに寝たい気分だったのだ。

 エレナに言われた通りに、ユウマはエレナの太ももに寝転がる。


「ゆっくり休んでくださいね、ご主人様。おやすみなさい」

「おや………すみ───」


 すぅ、すぅ、とユウマは静かな寝息をかいてすぐに眠りにつく。

 エレナはユウマの寝顔を見ながら、そっと頭を撫でる。


「私達を助けてくれて、ありがとうございました。今はまだ、ご主人様の役に立てませんが、きっともっと強くなって、ご主人様のお役に立ってみせますから」


 親が子供に語りかけるように、エレナは眠っているユウマに話す。

 これからもっと強くなれるように。


 ✼


 ユウマが眠ってから2日がたち、やっとユウマは目を覚ます。


「おはようございます、ご主人様」

「おはようエレナ。結構寝たような気がするんだけど」

「はい、もう2日たってます」

「2日⁉」


 ユウマはエレナが言ったことに驚き、思わずとび上がる。

 ユウマの感覚なら2日まではいかず、10時間くらいだと思っていたからだ。


「本当に言っているのかエレナ?」

「はい、本当ですよ。ご主人様はこの2日間ずっと眠っていましたよ」


 ユウマの寝顔を思い出しながら、エレナはユウマに伝える。

 

「ってことは、そろそろ馬車では通れない道が来るってことか」

「そうなりますね」

「ユウマ起きたの? 早速で悪いけどそろそろ馬車では通れなさそう」


 アインの言葉にユウマとエレナは前を見ると、木が行く手を塞いでいるようだった。


「確かにこれは通れないな」

「歩いて行きましょうか」

「そうね」


 ユウマ達は馬車から降りて、歩き始める。

 先頭にエレナが木を斬りながら進み、その次にアインが、そして殿をユウマが努めている。


「アインは周囲の警戒はしなくていいから、少しでも休んでくれ」

「わかった、ありがとう」

「ご主人様、右の方に何かがいます」


 エレナは耳をピクピクさせながら、右の方を凝視する。 

 ユウマとアインも右の方を凝視すると、木の後から1人の女性が恐る恐る姿を表す。


 その女性の髪は薄いピンク色をしており、おっとりしたような目をしている。

 服装はワンピースを着ていて、胸は、はち切れんばかりにワンピースを押し返している。


 おっとりした母性的なお母さんといったところだろうか。


「止まってください! そうじゃないと斬りますよ」

「まっ、待ってください〜。私は敵ではありません〜。トルート村の者です〜」

「トルート村の?」


 その女性は、語尾を伸ばすような話し方をしており、おっとりした感じだが、剣を突きつけられてあたふたしている。

 そして敵ではないと証明するために、自分の正体を明かす。


「どういうことですか?」

「依頼を受けてくださった冒険者のために、私はここで待って冒険者の方を村まで案内する仕事を任されているんです〜」

「そういうことね。わかった、じゃあ案内よろしくね」

「はい〜。任せてください〜」


 女性は相変わらず語尾を伸ばして、おっとりした喋り方をして答える。

 

「私はシーナです〜。よろしくお願いします〜」

「俺はユウマだ」

「私はエレナです」

「私はアインよ。よろしくね」


 ユウマ達はお互いの自己紹介を済ました後、シーナの後ろをついて行ってトルート村に向かう。



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