09話 エルフの村(3)
村の方から次々とエルフが出てきて、ユウマ達の元へやってくる。
「村長!」
「アイン、よく帰った。この方達は?」
「皆、冒険者だよ。この人はユウマ、そしてこっちがエレナで、こっちはマリン」
アインはユウマ達を順番に説明していき、ユウマ達は村長にどうも、と言って頭を下げる。
村長と呼ばれた人は、とても村長と呼ばれるような容姿をしておらず、20代と言われてもわからないくらいの若い顔をしている。
「私共を助けていただき、本当にありがとうございます。どうか私共にお礼をさせて下さい」
「お礼なんて別に大丈夫ですよ。冒険者って困った人達を助ける仕事ですから、気にしないで下さい」
「そういう訳にはいきません、どうか、どうか、お願いします!」
お礼を断ったユウマだったが、尚も村長が食い下がってくる。
そのあまりの気迫に、ユウマ達は少しひき気味だ。
「私からもお願い。何かお礼をさせて」
「いらないって言ってるのにな。まあ、そこまで言うなら」
「本当に!やったぁ!」
アインは子供のように飛んで喜んでいて、ユウマ達の頬も緩む。
ユウマは光線銃を、この前作ったアイテムボックスに収納する。
昨日の寝る前にユウマは“創造魔法”で、使用者が指輪を付けている時、収納したい物に触ると異空間に転送される、言わばアイテムボックスを作ったのだ。
取り出す時は、取り出したい物を思い浮かべると、異空間からその思い浮かべた物が、出てくるようになっている。
エレナとマリンに肩を借りながら、ユウマは村長達に続いてエルフの村に歩いて行く。
「村長、何人死んだの?」
「………15人だ」
村長は躊躇いがちにアインに伝えると、アインは目を伏せて暗い顔をする。
ユウマ達は何か声をかけるべきか迷うが、いい言葉が見つからず、結局何も話せない。
そうしている間に、ユウマ達はエルフの村に到着する。
「ようこそ、私達の村へ」
ユウマ達は今見えている景色に圧倒され、言葉も出なくなる。
アルヴァノ王国とは違い、家が木の上に建てられている。
地上から10mくらい上に建てられているので、普通の人なら登ることも出来ない。
だが、エルフのほとんどは風魔法を使えるので、10mくらいなんてことないようだ。
現に今も風魔法を使い空に浮き、家が建てられている10m地点まで飛んでいる。
「それでは私達が上まで送り届けます」
「私がユウマを運んで上げるわ!」
元気よくアインが言って、ユウマを後から抱きしめると、風魔法を使い空を飛ぶ。
ユウマは空を飛んでいるのに驚いているが、それ以上に背中に当たる大きくて柔らかいものに気を取られて、集中出来ない。
「どう?凄いでしょ!」
「あ、ああ。めちゃくちゃすげぇよ」
極力背中に当たるアインの胸を意識しないようにしようとするユウマだが、やはり意識してしまう。
そんな葛藤も数秒で終わり、木の上の家に到着する。
そして、ユウマの背中から離れる前に、アインは耳元でユウマに囁く。
「村の皆を守ってくれてありがとう。ユウマのこと、ちょっと好きになっちゃったかも」
「え?」
そう言うとアインはユウマの背中から離れ、イタズラっぽく笑うと、家の中に入っていく。
ユウマはその場で立ち尽くし、さっきの言葉を思い出して、放心状態になる。
「どうしたんですか、ご主人様?」
「………アインは?」
そのすぐ後に、エレナとマリンがそれぞれエルフに運ばれて、ユウマのすぐ側に着地するが、アインがいないことに気づいたマリンは、ユウマに疑問を投げかける。
「え、え〜と、アインは自分の家に入っていったぞ」
アインという言葉に過剰に反応してしまい、しどろもどろになって返事をすると、エレナはジーっとユウマを見つめる。
「ど、どうしたんだ、エレナ?」
「ご主人様、何か隠してませんか?」
「え⁉べ、別に何も隠してないよ」
「本当ですか」
エレナに隠していることがすぐにバレて、驚くユウマだったが、ここでさっきアインに言われたことを言う訳にもいかず、なんとか隠し通す。
「それでは村を案内しますので、ついてきて下さい」
「わかりました!」
ユウマは勢いよく手を上げ、村長についてく。
女って怖え〜、とユウマは心の中で思うのだった。
✼
一通り村の案内を終えて、今は村長の家の居間に集まってお茶をしている。
エルフの村は、アルヴァノ王国と同じように武器屋や防具屋、それに服屋や食事を食べる場所まである。
「どうですかな、この村は?」
「ええ、とてもいい村ですね。感動しました」
「私もです。木の上に建物があるだけで、他は私達が住んでいる国と、ほとんど一緒で驚きました」
「………気に入った」
三者三様の感想を村長に述べると、村長は嬉しそうに笑う。
すると、ドアをノックする音が聞こえて、そちらを向くとアインが部屋に入ってくる。
「案内はもう済んだの?」
「ああ。今はここでユウマさん達とお茶をしている」
「私もいい?」
「構わん」
村長に許可をもらうと、アインはユウマの横の席に座る。
今の席順は、2人掛けの席が真ん中のテーブルを囲むように4つあり、北に村長が座り、その正面の南にユウマとエレナが座り、西にマリンが座っている。
そしてアインは、ユウマの横の東の席につく。
村長がアインにもお茶を出し、アインも話に加わる。
「それでね───」
アインが次々と話の話題を変えて、永遠と喋り続けている。
かれこれ2時間以上たっていた。
「じゃあ俺達はこの辺で失礼します」
「え、泊まっていかないの?」
「ああ、宿代も今日の分払ってるしな」
「そう………なんだ」
アインは残念そうに顔を暗くすると、次の瞬間には何かいいことを思いついたように、満面の笑みを浮かべる。
「私もユウマ達の宿に泊まる!」
「は⁉一緒の宿に?」
「それはいいですね」
ユウマは驚いてすぐに却下しようとしたが、その前にエレナが賛成したので、ここで却下したらエレナに何を言われるかわからないので、渋々ユウマも賛成する。
「村長、いいよね?」
「アインが決めたのなら好きにしなさい。ユウマさん、この子をお願いします」
村長はユウマに向かって頭を下げるので、慌ててユウマも「こちらこそよろしくお願いします」と頭を下げる。
なんでこうなった、とユウマは考えるが、考えても答えが出る訳もなく、考えるのを止める。
「じゃあ私準備してくるね!」
元気よく言って居間から出て、自分の家にアインは向かった。
はぁ〜、とユウマは深いため息をつくが、その理由がわからずエレナは首を傾ける。
それから10分くらいしたころ、アインは重そうなカバンを持って居間にやって来る。
「お待たせ〜」
「結構な荷物だな」
「仕方ないじゃん、全部必要な物なんだから。早く行こ」
「ああ、そうだな。村長さん、お世話になりました」
「お世話になりました」
「………世話になった」
ユウマ達は村長にお礼を言うと、家を出てエルフ達に地上に下ろしてもらう。
「皆さん、またいつでも来てください」
「はい、機会がありましたらぜひ」
「ありがとうございました」
「………ありがと」
ユウマ達は村長に別れを告げて、馬のある場所に向かう。
「本当に俺達に付いてきてよかったのか?アイン」
「うん、大丈夫だよ。そろそろ故郷から離れて、生活しようと思ってたから」
「ならいいんだけど」
そうやって話していると、すぐに馬の場所まで辿り着く。
「それじゃあ、アルヴァノ王国に帰るか!」
「はい!」
「ええ」
「………うん」
ユウマ達は荷馬車に乗り込み、アインは馬の手づなを引き、アルヴァノ王国に帰るのだった。




