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姿なきもの  作者: しらたま
ハル篇
7/9

七、報告

  「なんで急に祭りなんて行くんだ?それもこんな混む時間に。人混み嫌いだろ?」

「それになんでオレ指定なんだよ。ヒナでもよくないか?」


随分不思議そうな顔をして聞いてくるものだな。


「祭りに行くわけじゃないよ。ランに話あるから渋々行くだけ。」


「え、なんでランに?」


「今日森で死体見つけた。」


「あぁ…それはオレだな…。」


「でしょ?」


「「…。」」


…しくった。死体見つけたって言っただけなのに会話が消えてしまった。

なんだろうこの気まずい空気。



結局、広場に着くまで一言も話さなかった。


「シュウってランどこ居そうかわかる?」


「え、あー、夜〜丑の担当だよな。今ならテントの奥かなぁ。そこに居ないなら騒ぎのところ回ってみれば会えんじゃねぇの?」

「ランのことだからテントの外だと誰も正確な位置は知らないと思うぞ。」


「えぇー…、めんど。とりあえず先にテントかぁ。」


まだ夜の部は始まっていないが、昼の部があと数十分ということもあり、売り切れの店や品変えをする店が増えてほとんど何も買えない状態だ。中にはすでに夜の商品を売っているところもあるが、大体は売れ残りを格安で売っている。


この時間帯になってくると大人が多くなってくるな。


夜の部の商品と言えば薬品や武器など、丑の刻は注文しなければ手に入らないような珍しいものや特殊なものが主だ。

自分は去年から軽く訓練は受けているが、まだ戦闘に参加する程でもないし最近武器だって決まったばかりでこんなところ来てまで買うものは無い。

あと数年もすれば御用達になるのだろうか。


そうこうしているとテントに着いた。


シュウが店の横で見張りをしてる人に駆け寄っていく。

自分はその後を追いかける。


「まりもさん、今テントにラン居ます?」


「居ると思うけど寝てんじゃねぇの?」


「えーうわぁ。まじかぁ…。」

「あぁ、この人マリモさんって言うんだけど、一応夜だし危ないからこの人の近くで待ってれ。まぁ、万が一何かあっても大丈夫だろ。」


「うい。」


「じゃあ頼みます。」


「あぁ、了解。」





遅いな。何してんだ。そろそろ疲れてきた…。


隣からガタガタと音がする。何してるのかと振り向くと折りたたみのベンチを広げていた。


「座りな。」


「あっ、ありがとうございます。」


1人分間を開けて横に座る。そこまでしっかり安定はしていないからあんまり前後に揺れると傾いてしまいそうだ。


「今いくつ?」


「えっ、あ、13…です。」


「あぁ、シュウの3つ下か。聞いてたわ。」




「森の管理職してんだっけ。しっかりしてんね。」

「俺そんくらいの時ずっと遊び歩いてたよ。」


「そうなんですか…。」




「…。」


困ったな。何も話す事ない…。

いや、多分この人も話すの好きなタイプじゃないと思うけど…なんか…。

てか知らない人のとこに1人だけ残して行くなよ。遅いし。全然帰ってこないし。

相手から話しかけてくれれば適当な返事できるのに。全く無言気まずいとか思ってなさそうだしなぁ。この人。

あ、そうか。相手が自分のこと空気と思ってるなら自分も空気と思えばいい…


「い゛だだだだだだ!!!」

「ちょッ無理無理無理無理!!い゛ったいってぇ!!!」


ようやくこの空気に慣れれると思ったら突然シュウの叫び声が。なんなんだ。何が無理なんだ。


「ぐッ…まって…息が…。」


(えっ?なんか死にかけてない…?)


「あーまたか。」


そう言うとマリモと呼ばれる男は深いため息をついた。


「!?」

(またってよくある事なのか!?)


「ハルカゼさんやめてくださーい。」


(ランかよ!)


おそらく中にいる人たちだろう。時々叫び声が聞こえる…。


「ギャー!!!ユウセイ!助けて!!」


「なんで俺が行かなきゃなんないんだよ。自分で何とかしろ。」


「はぁ!?ざっけんなよ!覚えてろ!!」


「ヘッ、ザーコ。てめぇなんぞに何が出来る。」


マリモさんの本名ミナトなのか…?全然マリモじゃない。

あと、なんか思ってたより子供っぽい…。

いや、いるな。こういうこと言って煽るやつ。クラスに。


少しして静かになったと思ったら何やらずりずりという音が近づいてくる。


シュウが息を切らしながら戻ってきた。


「なんだよこいつ無駄に背伸ばしやがって…!」


入口に着くとランを投げ捨てた。むぇっという奇怪な声を出しながら地面に転がる。

どうやらずりずり音の正体は引きずらたランだったようだ。息を切らしているのは筋肉皆無のシュウには身長の高いランが重かったのだろう。


「ランー。話あるから起きて。」


「ぅえ…?あれ、ハルじゃない。どうしたの?」


「いや、今話あるって言ったじゃん。」


「えぇー。ハル来てるなら言ってくれればよかったのにー。」


「だから、何回も何回も言ったべや!!ほんっとランは人の話聞かねぇな!!」


怒り方がヒナタそっくりだ。


「ごめんてー。そんな怒んないでよ。」

「もー短気は損気だよー。」


むくりと起き上がり服に付いた土を払っていく。


「で、話ってなに?」


目を血走らせ拳を握りしているシュウは無視することにしよう。


「ちょっと人の居ないとこで。」


「あ、じゃあテント入っていいよ。おいで。」


それなら起こしに行く時に一緒に入りたかったが、確か部外者は責任者の許可なしでは入れないんだったか。


「シュウも来て。」


「わかった。」


テントの中には何人か居り、商品の入れ替え作業をしている。ランと一緒にいるおかげか特に何も言われない。

ちらちら見られるがそれはおそらくさっきのちょっとした騒ぎのせいだろう。よく見ると何人か髪や服装が乱れている。叫び声も聞こえていたし、乱闘的なものだったのだろう。

入ろうとした時に交代なのか帰ろうとする人とすれ違った。


「あ…ハルカゼさん…。交代なんで帰ります…。」


「お疲れー。」


「お疲れ様です…。」


自分もシュウにつられて礼をする。


「はは…そっちもお疲れ様…。」


シュウが敬語ということはシュウより上ということだろうが、おそらく下なんてほぼ存在しないだろうからほとんどわからないと同じだな。

あと、なんかラン、周りに引かれてないか…?


「ミナトさんお疲れ様です。」


敬語2人目。夕方に帰ってるしそのまで上の人でもないのかもな。


「あぁ、お疲れ。」


ん?今のマリモさんの声だよな。えっ苗字すらカスってないとか。まじでマリモってどこからきたの?


「ハル。ランについてないと追い出されるぞ。」


「え?」


いつの間にかランもシュウも数メートル先を歩いていた。

自分は急いで駆け寄る。


今度は離れないようにランの服を掴んで歩くことにした。


外から見ても大きかったが、中から見てもかなり広い。さすがたった8つの出店で中央広場を埋め尽くすだけはある。


少し奥にもう1枚幕が垂れて、そこをくぐるとまた少し奥にもう1枚。その奥は突き当たりだ。


奥の2つの空間は2日目、3日目の売り物を置いているらしい。証拠に人が2、3人が通れる間を開けて両側に木箱が積まれている。

1番奥の所は2日目だからか手前ほどものは置かれていない。


中央が少し開けていて、敷物と掛け布団と2つ折りにされた座布団がある。おそらくここがランの巣だろう。


「シュウは外で人払いしてて。」

「これなら僕に用事ない限りほとんど人は来ないしここでいい?」


近くを通れば普通に聞こえてしまいそうだが、テントの裏にはそこまで整った道はない。道路は木を挟んでもう少し向こうだ。


(まぁ、適当な外の人通り少ないところで話すよりかはいいか。)


自分はこくりとうなずき、森に遺体があった事、4日前に行った時には無かったこと、順を追って話していった。

ミナト ユウセイ

シュウの教育係。


能力:

①[超回復]

②[不明]

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