ジャヴァウォックの愉悦
(のちにシャルカスとピットは結婚するオチになりますけどね。)
「ひゃははは!!!!」
自分の笑い声など聞こえない。
聞こえるものなんてない。
感じるものはある。
それは壊したものの瞬間の恍惚と気持ちよさ、壊したという獲得欲求が満たされる音。
俺はこんなにも自由だ。
俺の腕は自由。
俺の腕は自由。
脳内に真っ黒な長い髪を後ろに結い、うさぎの耳付きの大きなシルクハットを被った男が浮かんだ。それはうっとおしそうにこちらを見つめていて、緑色の目は軽蔑にまみれている。
俺のさっきまでの気持ちよさは消えて、今度は怒りがやってきた。
快感のために行われた破壊行動は怒りのための破壊行動に変化する。
うるさい。
やめろ。
あいつは俺は嫌いだ。
あいつが俺の事を嫌いなのは分かっているが、多分あいつが俺のことが好きだとしても俺は嫌いだ。
あの目が嫌だ。
なんでも見透かすみたいな、あの目が。
あの髪が嫌だ。
息を詰まらせるかのような漆黒の絹が。
あの人を思い出させる顔をしているから。
「……っくそ、」
目の前のおおきな木をバキ、と倒した。
それを合図に俺はうずくまる。
小さい頃から止まらない破壊衝動。
理由は何となくわかってる、それはただの本能。そして最近さらに酷くなったのはあのくそババアのプログラミングのせいだ。
バグモンスターを産んで、何かを壊す。
楽しかった。楽しい。
けれどやはり自分の手でやるのが好きだ。
バグモンスターを作りたがるのはあの帽子屋だが俺は自分でなるべく壊してやりたい。
多分その思考の違いも腹が立ったのかもしれない。いつしか殺してやりたい。
そう思いながら何故か体の震えが止まらなくて自分の両肩を抱きしめていると、ふ、となにか匂いを感じた。
なんだろう。
俺はその匂いを辿る。
近づく度にそれは俺らの敵、あのウサギとネコであることを何となく理解してぶっ壊してやりたいとニヤけが生まれたが俺は首を傾げた。
知らねぇやつの匂いがする。
誰だ、と俺は自分のツノを翼で隠し、その匂いをさらに辿って陰に隠れる。
「……は。」
まじかよ。
ジャヴァウォックの体はとてつもなく便利だ。人狼と似たようなもので、嗅覚も視覚も人間に比べるとありえないくらいいいらしい。
人間からするとかなり離れた場所になるが俺には余裕で見えた。
金髪の女を。
まさか、本当にアリスを連れてきたのか?
随分前にクソ猫がそんなことを言ったのを盗み聞きしたが、あの女が?本当に?
「……。」
俺はもうたまらないってくらい口角を上にあげた。どう殺してやろうか。壊してやろうか。
それが頭の中をぐるぐるしてる。女はビビらせると面白い。殺すまでも楽しい生き物だからなぁと笑った。
これはあの帽子屋には言ってやらない。あれは俺の獲物だ。
「……」
だがあのロボットには言ってやろうか。
あの、魔女殺しのロボットにはな。