機械仕掛けのチシャ猫シロ
街の様子は至って普通だと思った。
確かにあちこちどこか変だったり、そこに行ったら戻れなくなるよとユキに言われて青ざめたりしたけれど雰囲気はそこまでおどろおどろしている訳でもないし、話しかけない限り街の人たちも普通に見えていた。
広場という所に着くと中心に大きな噴水があって、そこにお目当ての人がいたらしい。
「シロ!」
ユキが嬉しそうに声をかけた。
噴水に座っているのは、なんと機械仕掛けの猫耳がはえたユキと同じくらいの子だ!
尻尾も機械仕掛けのようだが、ユキを見つけた途端ゆらゆらと嬉しそうに動き始めた。
私はびっくりして固まってしまう。
「おー!ユキ!もしかしてこの子がアリス!?」
「うん、シャルカスちゃんだよ。」
興味津々そうに金色の瞳でこちらをじっと見てくる。前のめりになってるシロに少し後ずさり、こんなに見られるなんてと恥ずかしくなる。
そのときシロは私をぎゅうっと抱きしめてきたのだ。
「!?!?!?」
「うわぁあ!めちゃくちゃ可愛い!!なぁにこの子、ねえ、おれと一緒にお茶でも」
「馬鹿。」
「いでっ!?」
ユキがすかさずシロの頭を殴って私を助けてくれた。ユキは苦笑する。
「ごめんね、この子可愛い子が大好きで…。変態だと思ってくれればいいから。」
「変態!?ちっ違うよ!?」
「違くないからね?」
びっくりした。
しかも、可愛い子だなんて。
私は真っ赤になる。そんなことあるはずないじゃない。
「ね、ねぇ。ほら、…その、このバグモンスターを何とかするんでしょ?」
「あ、うん!」
話を戻すかのようにシロは笑った。
「ユキには言ったつもりだけど、バグモンスターを生み出しているのはジャヴァウォックと帽子屋と三月うさぎだろうね。すっかり洗脳されちゃってるもん。」
ジャヴァウォック……帽子屋に、三月うさぎ。
まさにアリスの登場人物だ。
それらが、バグモンスターを生み出している?
「洗脳……されてるの?」
「そう、女王がね…。本当はこの主人公のアリスだったんだけど、なぜかバグクイーンになっちゃって。……こんなことに。」
「ぇえっ、それを操ってるのがそいつらって事?」
「そう。まずはそいつらを倒さなくちゃいけないね。そしてアリスを……ううん、女王を倒す為にはきっとローサット12号を味方につけるの。ロボットなんだけど、内蔵チップが女王を倒す重大な鍵になるからね。」
「……。なんだか、死んでしまいそう。」
私の言葉に、ユキは笑った。
「大丈夫だよ!」
「?」
「だってここはゲームだよ?」
死んだって残機があれば生き返れるもん。
ニコッと笑った2人の笑顔に、なるほど、残機が必要なくらいこれから死にまくるのか……と私は鬱になりそうだと苦笑しながら「そうだね。」と返した。