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08話 やる事が山積み

この町には旅人も来ない。冒険者も寄らない。たまに行商人が来るだけ。

それも、一息ついたらそのまま他に大きな町へ向かう。


うーむ。なら野望の為には人を呼び込むしかないね。


「この辺で一番大きな町は?」


傍にいた美少女、ミラに問いかける。


「〝ロートシュタッド(赤光の都)〟だよ。とっても大きいらしいよ!」


「らしい? 行った事ないのか?」


「うん。遠いし、お金ない……」


あー!


せっかく俯いてた顔をあげるようになったのに、また俯かせてしまった。


「大人でも歩き続けて三日は掛かるんだ、遠いぞ。それに金さえあればいい所だが、金がなければ何もする事がない。だからこの町にはあんな遠くまで観光だけしに行く物好きはいないな」


露店のおっちゃん事、アーロンさんがそう言う。

乗り物とかないのかって、あってもこの町にはないか。


「でも色々な職業、こことは違って身分が高い連中もそれなりにいる。旅人も冒険者もいろんな奴が集まる町だ、いや都だな」


そこから人を呼ぶ、それとそこで宣伝活動が現実的な方法か。

とりあえず、この世界の栄えているって基準も見たいし、行くしかないかな?


「一度見に行くか……」


「いや、まてまて。町の外はモンスターもいる。その中で野宿しながら三日以上歩くってのは……傷を抉るようで悪いんだが、お前さんの強さじゃ……」


そうね。町人にボコられたもんね。あー痛かったなぁ。


これは護衛とか雇う流れなんだね? で、護衛をやってくれる冒険者様とやらは? 冒険者ギルドにクエスト貼り付けたりできない? え? ギルドない?


村長クエストおおおお!!!!


「おいルーノ起きろ」


夢を見たら、すぐに地獄に落とされ、絶賛現実逃避中だった神様を小突いて起こす。


「んなっ! 起きてるわいっ!」


お前はチャンネル変えると起きるおっさんかよ。


「〝ロートシュタッド(赤光の都)〟に行くぞ」


「嫌じゃ」


「行くぞ」


「嫌じゃ」


「金が舞い込む」


「……えぇー……いやだぁ……」


少し悩んだけど、結果は変わらず。


「なんで嫌なんだ? まずそこに行かないと色々進まないんだよ」


「あそこはわらわの土地じゃない。あいつの土地じゃ。会いたくないんじゃぁ」


「あいつ?」


「〝闘神とうしん〟ナルシェ=エデルロートじゃ……」


「敵なのか? もしそうならさすがに他の手を考えないといけないけど」


「と……とも……」


「友達? だったらいいだろ。仲悪いのか? 出会って五秒で殺し合いになるのか?」


「あいつウザいんじゃぁ……」


いつもの威厳がある風な口調が跡形も無く消え去ってるぞ。

駄々っ子かよ。


「んじゃ俺をそこまで連れて行くだけでいい。お前がいないと俺が死ぬ!」


「えっ」


いやそういう意味じゃない。


「護衛をしてくれ、中には入らなくていい」


「う~ん」


もう少しだな。


「そうなると、俺一人じゃ寂しいな……ミラも行くか?」


「っ!? ……え? ……いいの?」


気づいていないとでも思ったか少女。

接客のプロのこの俺がそんなわかりやすい態度に気づかない訳ないだろ。


「行っても、遊ぶお金はないし、食べ放題もできない、でもたぶん楽しいぞ」


「うん! うんっ! 行く行きたいっ! ルーノちゃん連れてって!」


そして甘く見るなよ神よ! この屈託のない笑顔を曇らせるような事は誰にもできん。

お前は承諾するしかないんだよ。この町人全員の前でなっ!!


って全員!? 多いっ!!


美少女(神一柱)達の集客力すげーな……。


おお?


ピコーンと頭の上で電球が光ったが、まだだ。極意化するにはまだ早い。


「ふ……ふふっ! よかろうなのじゃ! わらわがそなた達の道しるべをして参じよう」


無茶苦茶な言葉使うなよ。いつから俺は神の上の存在になったんだ。


「よし。言質とったぞ。んじゃ出発までに準備だ。忙しくなるぞ。ちょうど町人も集まってる事だし、みんな俺の話を聞いてくれー」


俺の愛用の椅子をお立ち台にして観客を見下ろす。

中々いい景色だ。町人全員を目の前にして俺はこれからの野望を語り始める。


「まず、みんなこれを見てくれ」


昨晩作った〝夜薔薇の涙(ローゼンナハト)〟をストレージから出現させる。


「これは香水と言って肌や衣服に着けて楽しむ、装飾品だ。服装や貴金属は目に見える美しさだが、これは目には見えない。でもそこに奥ゆかしさ、さりげなさがある。この香りは心を包み込み、心を豊かにする効果もある。これをこの町の名産品として服、宝石の次のステップとして金持ちに売り込むぞ」


「「「――お、おお?」」」


見事に全員キョトンとしている。


「次に呼び込んだ客を持て成す方法を説明する。この町の天の川(ミルヒシュトラーセ)、あれは夜になるととんでもなく美しい。絶景と言っていい。だからあの川の畔で酒が飲めたり、飯を食べられるようにする」


アーロンさんを初め、露店を開いてる店主達の目を見て


「俺の故郷に祭り、そうだな……何かに感謝したり、何かに祈りを捧げるという事を建前にうまい物を食べて、うまい物を飲みながらどんちゃん騒ぎをするという風習がある。それをもっと日常的な物にして、町に来てくれた人に感謝、町全体で持て成そうと思う」


「「「――お、おお」」」


「それを目的に町に来てもらう。金をがっぽがっぽ稼ぐぞ? 今の暮らしを変えるぞ!」


「「「――お、おお!!!!」」」


穢れの無い心が不純な動機で埋め尽くされたな。

とりあえず動かないと始まらないし、原動力はなんでもいいか。


まずは料理人と大工、アーロンさん達露店の店主を集めて作戦会議といこうじゃないか。

やる事リスト


1:商売を始める


2:屋台とメニューの製作


3:夜薔薇の涙(ローゼンナハト)の生産


4:仕立て屋を捕まえる

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