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06話 ヘアアレンジ

少しの間だったと思う。


意識が戻った俺の低い目線の先には俺をボコった町人達が正座していた。


「「すみませんでしたー!!」」


俺の目が開くと同時に全員が謝ってきた。

ジャパニーズ謝罪スタイル イズ DOGEZA


どうやら、ミラが勇気を出して助けに入ってくれたおかげで九死に一生を得たらしい。

神様だよ神様。もうミラが神様でいいんじゃないかな?


そして俺より先に起きた脳筋ルーノの拙い説明を聞き

殺気だった町人相手に説明してくれたそうだ。


神様だな神様。町の名前を改名しようぜ。


バカな事を考えてると、土下座集の間から脳筋が歩いてきて一言。


「そ、その……我が民が先走ってしまってすまなかった!!」


長い髪を地面に垂らしながら

本当に申し訳なさそうな声で、いつもの高圧的な態度もなりを潜める。


「いいぜ」


元の世界なら警察呼んで、弁護士用意して、慰謝料……賠償金……。

もうこの世界に馴染んでるのかね? すんなり許してしまった。


「で、返事を聞く前にお互い意識が飛んじゃったけど、さっきの返事……聞かせてくれるか?」


ルーノの顔を見て答えは解っていた。輝神ノ剣(ルミエール)もおとなしくしてるし。


「そうじゃったな。……んん……こほん。よく聞くのじゃぞ」


咳払いをして、喉の調子を整えている。声が少しだけ揺れる。緊張なんてするのか。


「神に信じろなんて言う馬鹿は初めてじゃ。面白い。とりあえずだが……信じるぞ!」


――ふっ。お前に言われたくねーよ。


「とりあえず……任せろ」


俺も負けじとドヤ顔で言ったが軽く失笑が起こる。


気持ちが良かったからそのままでいたが

これじゃやっぱり決まらないか。しょうがない。


少しのお別れだ。女神の御心(ミラの膝枕)


「さっそくだが、お前に一つ頼みがある」


「戦いに行くとかは断るぞ。俺は戦いたくない」


「あんな力持っているくせに変わった奴じゃ。まぁ今はそれでいい。頼みはそんな事じゃないしな」


町人にボコられたばかりだけどな。傷がもう癒えてるのにはビックリしたけど。


「頼みと言うのは……えーと……んー……とね」


おいおい脳筋! しおらしくなるな! ちょっと可愛いぞ。ちょっとな?


「ミラみたいに可愛くしてほしいってよー!!」


露店のおっちゃんがルーノがもじもじしている間に耐えられず叫んだ。


「~~~~~っ!!」


「おお……お? まじで? いいよ? 今からやろうぜっ!」


メインディッシュキターーー!!


久々に髪を切った高揚感が今になって上がってくる。

スキップで近づき

舌なめずりをしながらルーノの顔をじっくり見つめる。


「な! なんじゃ! ミラにはそんな事せんかったじゃろ!! 辱めを受けさそうというのか! 鬼畜なのか!?」


こいつは俺をなんだと思ってるんだ

善良な元日本人だぞ。


じゅるる。


確証はなかったけど、間違いない。俺の目に狂いがなければっ。


「おっちゃん椅子また借りるよ!!」


「おう」


「よし! ここに座れ」


「な! なんじゃっ!?」


「よし髪を洗うから少しの間、目を瞑れ」


「むー! んー! んー!」


素直に目は瞑るが口を真一文字にしながら貞操を守っている。


「うるせー。じっとしてろ!」


雰囲気とかやっぱり人間とは違うなって気はするけど

口を開くと本当に神なのかどうか疑問になる。


他の神という存在に会った事はないから比べようがないんだけど

俺の想像の神とは違いすぎてしっくりこない。


ミラの時と同じように

万能浄化シャンプーで髪の毛を洗う。


漆黒と呼べる程の深い黒、光を反射しないはずの色が黒光りという表現にピッタリな光沢を持つ。


優しく手のひらですくいながら

輝神ノ剣(ルミエール)ハサミverで切り始める。


何気に剣モードになってぶった斬りそうになったのは内緒。

どうやら神に対して攻撃的になるらしく

俺が強く意識しないとなかなか危なっかしい。


しかし、髪が短くなっていくと改めて思う。


やっぱりこいつは目元を隠さない方が可愛いな。

おでこを出した方が似合うかもしれない。


というか


髪を切って現れる素顔は


まさに神。


現れた目元にはすべての光、心まで吸い込んでしまいそうな黒き瞳。

人間離れした美しさに魅了される。


本当に口を開きさえしなければっ!


「もうちょっとで終わるからな」


ボッサボサで伸びに伸びていた髪をバッサリ切る。

肩まで切ってやったぜ。


目元は隠れ、腰まであった髪の毛がなくなると


別人、別神だろこれ。


褒めると異様なテンションになりそうだから

褒めないけど可愛い。


口には出さないけどね。

というか言葉が出ない。息を飲む。呼吸を忘れる。


「おお……おお……おほ……」


町人達は我慢できずに息のような声を漏らす。

解る解る。やっぱり人(神)が変わる瞬間はたまらないな。最高の瞬間だよな。


今まであった神としての存在力に加え

見た目から与えられる、可憐さ、気品、優美さが格段に増え

神々しさを感じる。


翠嵐支配ブローでまだ濡れた髪を乾かし、細かい髪を飛ばす。

しかし魔法? スキル? って便利だな……


細かく切り揃え、整え


最後にまた薔薇の雫(ローズディップ)を振り掛ける。


その時


ルーノの体に電気が走ったようにビクつく

一瞬光ったように見えたけど……


「おい! 大丈夫か!?」


「ん……んん……」


おお生きてる。


怖いからこういうのやめてほしい。

お前になんかあったら今度こそ俺のセカンドライフはここで終了だよ。


目を開けたルーノはそこからさらに目を見開いた。


「な? なんじゃこれは……?」


喜怒哀楽が激しいタイプだったが

この顔は始めて見る。驚愕の顔って奴だ。


ルーノはステイタスウィンドウの不可視化を解き俺に見せてきた。


「これを見ろ!!」


名前:ルーノ=グラムナハト


種族:煌神こうじん


称号:彩雲の洗礼(ワールドティアーズ)


んーと? ん? 何か変なのか?


「え?」


ついつい疑念が疑問として声に出てしまった。


「ありえん。ありえん事なんじゃが、わらわのステイタスが変化しておる」


ジョブチェンジとかランクアップみたいなものかな。


「スキルの変化、称号の変化は解らなくはない。人間ならよくあるしな。しかし神は唯一無二、不変の存在。それが変化するなんてありえん」


「いや、あったからありえん訳じゃないな」


「でも今までそんな事があったなんて聞いた事も見た事もないぞ」


勝手にバカ神様として見てたけど、めっちゃ賢そうに喋るじゃん。


「お前は一体何者じゃ?」


その言葉にもの凄く色々な感情と意味が込められてたんだろうけど

俺は全然違う事を考えてたんだ。


『そんな事よりまずは可愛くなった事を喜んで欲しいもんだな』


って。

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